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読書日記、ときどき食日記

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狼の王子 / クリスチャン・モルク 

cotage.jpgなにしろ寒暖の差が大きくて体調もすぐれない。
熱っぽくて、でも解熱剤で下がるので病院に行くのも面倒なのだ。声も出ないし、極力出かけないようにして、年明けからの積読本をうつらうつらと読んだり寝たり…。

本書も年末に読みそびれていたものだ。
デンマーク出身の作家によるアイルランドを舞台にした不思議な小説である。一応、ハヤカワのポケミスから出てはいるが、これもジャンル分けの難しい作品で、ファンタジーであると同時にミステリー的要素もありで。ややダークでスパイスのきいたベッドタイムストーリーだと思う。

印象としては『タイガーズ・ワイフ 』に少し似ているかな。こういう幻想文学は今流行なのかも?




アイルランド、ダブリンから北に少しいった田舎町の郵便配達員、デズモンドはある時、配達先で死体を発見する。
死んでいたのは3年前にこの町に越して来たモイラ・ヘガティ、45歳という年齢の割には美しい女性だった。彼女は何者かに頭部を殴られた後に、硬膜下血腫のために亡くなったと見られた。
強盗の線が疑われたが、モイラの死はまだ序の口に過ぎなかった。死体は一体だけではなかったのだ。モイラに続き、この家には彼女の姪のフィオナとその妹のロイシンの遺体があった。使い込まれた手枷足枷から推測するに、この姉妹はモイラに長きにわたり監禁されていたらしい。姉妹は抗凝固系の殺鼠剤によって内蔵を蝕まれてており、妹のロイシンの死因はそれによる内出血と見られた。そして法医学的分析によれば、姉のフィオナは衰弱した身体でモイラに襲撃を試みたものの、逆にモイラにメッタ刺しにされたらしい

wolf 1「モイラは気がふれていたんだ、姪たちの美しさを寝たんでの犯行に違いない」
人々の間には様々な憶測が飛びかい、真相はわからないまま終わるかに見えた。
だが、それはコミック作家を志す郵便配達員のナイルが、配達不能郵便のかごの中からフィオナの手紙を見つけるまでだった。
その手紙は、まさに死を迎えようとしているフィオナから見知らぬ誰かへの最後の願いだったのだ。
宛名は「誰でもかまわない」で、ページの最初には、自分たちはもうすぐ死ぬであろうことと、自分たちを忘れないために、この物語を読んで欲しいと綴られていたのだった。そして自分たちがこうなってしまったのは、ひとえにジムという名の男を、その本性も知らぬがままに愛してしまったがためなのだ、と。

ナイルは手紙に惹き込まれていく…。
その男、ジムが真っ赤なヴィンセントコメッティに跨がって、フィオナの故郷キャッスルタウンベアにやってきたのは3年前だった。彼はアイルランド中をバイクで巡る語り部(シャナヒー)だった。ハンサムでセクシー、アヘンのようなその魅力で、彼と彼の語る「狼の物語」は皆を虜にする。
弟を殺し、狼になってしまったユアン王子の物語だ。

だが、ジムとその相棒がキャッスルタウンベアに姿を現わしたのと前後し、近隣の町で女性の連続殺人事件が起こりはじめ…




christian moerkストーリーは、現実世界で起こる出来事と、アイルランドに今なお残るシャナヒー(語り部)であるジムが語る物語りが巧みに寄り合わさった幻惑的なものだ。

でも、実はこれはナイルの人生の物語でもあると思う。
ナイルは、フィオナの手紙に始まり、ロイジンの日記を読むことで解き明かされる姉妹の悲劇の謎、そればかりか、ジムがシャナヒーとして夜な夜な話していた物語の真相をも解き明かす。そして、漫画家になりたいという夢を持ちつつ、毎日同じことの繰り返しだけだった彼の人生も一変する。今度はナイルが「狼の王子」の語り部にならんとするのだ。

ま、そこだけ見ればさわやかだが、ただ入れ籠のストーリーはかなりスパイシーではある。
これを「愛か死か」という物語として読む人もいるのかもしれないが、私はそういう感じは受けなかったかな。ジムみたいにとにかく周囲の人に強い影響を及ぼす男も女も世の中にはいたりするものだ。

ところで、著者はある時4人の女性が遺体で見つかったという新聞記事を読み、それを元にこの物語を膨らませていったのだという。全くどんだけ!という想像力だが、それがもっとも大切な小説家の資質なのだろうと思う。



狼の王子 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

クリスチャン モルク (著), 堀川 志野舞 (翻訳)
早川書房 (2013/10/10)

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category: SF ファンタジー

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tag: 早川書房  アイルランド   
2014/03/30 Sun. 20:52 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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