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読書日記、ときどき食日記

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パインズ 美しい地獄 / ブレイク・クラウチ 

BLakeCrouch.jpgつい最近、横浜読書会のメンバーからも「今年は不作かもね」という言葉を聞いたばかりだった。

確かに一昨年はS.トゥローS.ハミルトン、昨年はS.キングD.ルヘインM.ウォルターズと大物作家の秀作がズラリ。いやしかし今年だって、S.ハンター『第三の銃弾 』は間違いなく「このミス」系のランキングの上位にくる出来栄えだし、P.カー『静かなる炎』 も圧巻だ。(『第三の銃弾は2013/11/30の刊行だから今年の「このミス」対象になるはず)
結局は実力派大物作家の独壇場になるのかと思っていたら、ここにきて新星登場!


とにかく、ブレイク・クラウチは凄い!
ジャンルの垣根を破壊し、斬新なコンセプトで独特な世界を構築するのを旨としているというが、その程度がちょうどいい。ぶっ飛びすぎると大衆には理解されにくくなってしまうから…
文学界の大きな流れは今こぞってスリップ・ストリームへと向かっているようだが、エンタメ界は、このクラウチの世代の作家が舵とりをしていくのかもしれない。


TwinPeaks.jpgタイトルにある「パインズ」 はアメリカはアイダホ州にある片田舎、ウェイワード・パインズという町のことだ。
パインズと名がついていることで連想されるように、高く成長した松からなる森と鋭く傾斜した山に囲まれている。
松の森、山林に囲まれ外界から隔てられた片田舎の町が舞台といえば、何か思い出しはしないだろうか。
そうなのだ。あの90年代を席巻したドラマ、『ツイン・ピークス』 である。デビッド・リンチが作り上げたあの不気味で異質ともいえる世界は、当時カルト的な人気を博し一大ブームを巻き起こした。当時著者は12歳で、このツインピークスにいたく惹かれたのだという。ただ、テレビドラマの哀しい性かな、所々の事情によりラストは皆が満足できるものとはならなかった。
それに不満を持ち、自分が満足できるツイン・ピークスを仕上げてやろうと思ったことが彼が作家になるきっかけになったのだという。本書は『ツインピークス』とはそのジャンルさえも異なるオリジナルの物語であるが、根底に敬意が感じられる。



さて、物語はそんなウェイワード・パインズの町で、一人の男が意識を取り戻すところから始まる。
交通事故にでもあったのか全身が痛み、特に頭痛はひどく雷が轟いているかのようだ。財布もマネークリップも身分証も鍵も携帯電話も持っていない。彼がいるのは閑静な住宅街で、家々はみな真新しくペンキは塗り立て。庭は狭いながら青々とした芝生に覆われ、濁りのない鮮やかさを誇っていた。自宅の電話番号はかろうじて指が覚えていたが、コレクトコールをかけようにも自分の名前すら思い出せない。だが、声でわかるのではないか。ゼロのボタンを押すが発信音はせず、電話は何の反応もしなかった。
再び意識を失って気がつくとそこは病院だった。目覚めてすぐに目に飛び込んできたのはパムという名の看護婦だった。やたら明るいが、どこか不気味な感じがする。だが、自分が遭遇した交通事故を思い出したことから記憶は繋がった。自分の名前はイーサン・バーク。シークレットサービスの特別捜査官で、行方がわからなくなった同僚を探すためにこの町にやってきたのだ。
シークレットサービスの仕事は大統領の警護だけではない。不正経理に関する捜査も担っている。イーサンの同僚はこの地に住む億万長者デイヴィッド・ピルチャーの捜査にやってきて失踪を遂げたのだった。
病院を抜け出したイーサンだったが、威丈高な保安官には彼の所持品はないといわれ、シークレットサービスの支局に電話をかけても、知らない女性が出て上司に繋いでもらえない。自宅にかけても留守番電話になるだけだった。もう5日外界と接触できていなかった。
彼は何かがおかしいと感じ始める。自分が正気を失いかけているのか、それともこの町が変なのか…。
そして、町をさまよっている最中、遭遇した住民のホームパーティでイーサンが目にしたのは、まさに探していた同僚のケイトだった。かつて深い仲になったこともあるかつての相棒だ。だが、36歳だったはずの彼女の顔には深いしわが刻まれ髪は真っ白だったのだ…
澄み切った青い空、鳥のさえずり、病院のそばの三本の松…完璧に美しい。が、町を壁のように取り囲む山々からこの時得体の知れない恐怖が伝わってくるのだった…



Wayward-Pines.jpgウェイワード・パインズの町とは何なのか?奇妙な出来事の謎は?彼はこの美しい地獄から抜け出すことができるのか?

設定は『LOST』 に似ている感じがするが、全く違う。『Lost』のラストにがっかりした人も、この結末は納得するだろうと思う。
想定外でありながら、これしかあり得ないという真相なのだ!

シャーロック・ホームズではこの謎を解くことはできないだろう。彼がいかに頭脳明晰で、神がかった名探偵であってもこの結末にたどり着くにはもう少し時代を経なければならないから。

この後イーサンはこの「美しい地獄」から抜けだそうと四苦八苦するのだが、その課程はS.キングを思い出させるかのような面白さでもある。
そもそもが『ツインピークス』にインスパイアされて描かれた物語だけあって非常に映像的だ。これを業界が放っておくはずもなくFoxがドラマとして鋭意製作中であるのだという。

そしてなんとこのウェイワード・パインズの物語はトリロジーなのだそうだ。もう、これに続編があること自体、想定外なのだ。
そして、昨年米国で刊行された第二弾の『Wayaard』は本書よりレビューの星が若干多い。まもなく第三弾目の『The Last Town』も発表される予定だというから、楽しみである。


パインズ -美しい地獄- (ハヤカワ文庫NV)

ブレイク クラウチ (著), 東野 さやか (翻訳)
早川書房 (2014/3/7)





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category: サイエンス系ジャンルミックス

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 早川書房  ドラマ化  アメリカ  SF 
2014/04/15 Tue. 23:37 [edit]   TB: 1 | CM: 0

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