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読書日記、ときどき食日記

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ウィンブルドン / ラッセル・ブラッドン 

wimbledon.jpgテニスの4大大会の中でも最も格式が高いとされるウィンブルドン・チャンピオンシップ。選手のウェアはい白と決められており、観客も他のグランドスラムのように騒ぐことなく、独特の荘厳さがある。

昨年までは優勝候補にあげられるのは、ジョコビッチ、ナダル、フェデラー、マレーの"4強”と呼ばれる選手だった。但しナダルは近年ウィンブルドンでは早期敗退しているけれども…
ATPは既にクレーシーズンに突入しているが、
ナダルは全仏さえとれればそれで充分だから
でもファンの欲目で見ても今年はかなり難しいだろうなぁ。ジョコビッチは全仏さえ穫ればキャリアグランドスラムが達成できる。相性のよい全豪を逃した悔しさも手伝い、昨年よりもさらに気合いがはいってるに違いない。
さらには男子テニス界の今は、"4強”時代の幕を閉じ、戦国時代に突入したと言われている。今年はどんなドラマが待っていることだろう。

本書はそんなウィンブルドンを舞台にした青春小説でありサスペンスである。横浜読書会のマリコさんからお借りている本なのだが、読もう読もうと思いつつもこんなに時間がたってしまった。マリコさん、ありがとう。


さて、時代はまだソヴィエトの時代。主人公はそのソヴィエト出身のヴィサリオン・ツァラプキン(ラスタス)という青年だ。ソヴィエトシステムによって二万人のなかから選ばれたテニスのエリートである。そんな彼がサウス・ウェールズの試合でオーストラリアの世界第二位の選手、ゲイリー・キングと出会うところから物語は始まる。
ゲイリーは23歳、ヴィサリオンは英語も含めてテニスの喜び以外は何も知らないに等しい18歳だった。
ヴィサリオン(ラスタス)のテニスに魅力を感じたゲイリーは、試合後海に泳ぎに誘ったことがきっかけで二人は親友になる。祖国とコーチの息苦しさから逃げ出したラプタスは、オーストラリアのゲイリーの家に居候し、二人は共にツアーを回るようになる。ただ、ゲイリーとラスタスの大きな違いは、"プロとして勝つ"ということに対するスタンスだった。ラプタスは類い稀な才能を持ちながらも、あまりにもテニスに対して初で潔癖すぎた。逆にゲイリーは情熱が過ぎて、追わなくても勝てるボールを追って負傷し、優勝を相手に譲るこもあるほどだった。それでも二人はどこに行くにも何をするにも一緒で、強い友情で結ばれていた。
しかし、二人が出会ってから二年目のウィンブルドンで、そんな彼らの関係性を大きく揺るがす事件が起こり…



tennis-federer-nadal-wimbledon-sportsespn.jpgこの小説の良いところは、サスペンスと青春物語がうまく融合していることに加えて、テニスというスポーツの厳しさと素晴らしさが存分に味わえることだ。

巻末の解説で訳者の池央耿氏が述べているように、テニスは一個のボールをネット越しに打ち合うという単純な競技ながら、非常な体力と技倆を要し、高い頭脳と精神力が求められる得意なスポーツでもある。
本書のなかでもラスタスとゲイリーは訳あって、敢えて4時間を超える長い試合を繰り広げるのだが、肉体的にもさることながら精神的にも強靭さが求められる。一旦コートに立つと選手はたった一人で闘わなくてはならない。サッカーのようにチームメイトもいなければ、コーチからアドバイスも貰えない。どんなに才能があっても、精神的に脆弱なところがあれば絶対に勝つことができない。それが非常によく描かれている。

そして、極限状態でテニスの試合をすることを通じて、ゲイリーとラスタスの二人がそれぞれに成長を遂げ、自分の道を踏み出そうとする様がまた良い。テニス好きにはたまらない一冊だろう。
ただ、現在のテニス界にこういう友情が存在し得るのだろうか。シャラポワは友人など必要ないと公言しているし、ナダルとジョコビッチは一時期目を合わせなかったこともあった。
実際、勝負の世界とはそういうものなのかもしれない。が、だからこそ小説の中くらいはこういう得難く美しいものが見たいし、より清々しさを感じるのかもしれない。

余談だが池央耿氏といえば、ピーター・メイルの『南仏プロヴァンス』のシリーズ。実は私はこのシリーズが好きで全て読んでいる。もう20年くらい昔のことになるのだろうか。メイルの愛犬、高貴な血筋の迷い犬だったボーイはさすがにもう旅立ってしまっただろうか。その邦訳にも懐かしさを感じて楽しませてもらった。



ウィンブルドン (新潮文庫)

ラッセル・ブラッドン(著)、 池 央耿 (訳)
新潮社 (1982/05)







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2014/04/17 Thu. 22:01 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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