Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

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タックスヘイヴン TAX HAVEN / 橘玲 

ナダルは、クレーシーズンに入ったというのに、モンテカルロ、バルセロナと敗退続き…
でも、やっとエンジンがかかってきた!
まだ本調子とは言えないけど、ナダル、マドリード優勝おめー!

そして日本の錦織も、トップ10入りがついに現実のものになるらしい。
。レジェンドコーチの中で最も結果を出しているのは錦織くんについてるマイケル・チャンじゃないだろうか。




それはさておき、久々の国内ものだったのだが、これが良かった!
途中で本を置くことができず一晩で読んでしまった。

橘さんの小説を読むのは『永遠の旅行者』以来だろうか。
デビュー作の『マネーロンダリング 』では、こういう世界があるんだ!一瞬で魅了されたのを覚えている。
本書は『マネロン』や『永遠の旅行者』とも繋がっており、私のように冒頭の"堀山”の登場に懐かしさを感じる方もいるだろう。

ところで、年収5億ともいわれたスイス在住の投資ファンドマネージャー夫妻が行方不明になり、その後埼玉県で遺体で発見された事件を覚えておいでだろうか?
奥さんがセレブ生活を綴ったブログをやっていたことでも注目を集めた。その後、犯人は逮捕され事件は一応の解決をみた形になってはいるが、全く腑に落ちない不可解な結末だった。
亡くなったファンドマネージャーは、ヤバい筋のお金を扱い甚大な損失を出してしまったため、見せしめに殺害されたなど、様々な憶測が流れたが真実は薮の中だ。
本書は、飽くまでフィクションであると断ってはあるものの、この事件が下敷きになっているのは間違いない。そして、これほど読ませる小説に仕上げることのできるのは橘玲をおいて他にはないと思う。



    Singapore2

さて今回の舞台は金融都市シンガポール。
「1000億円を運用する」といわれた日本人ファンドマネージャー北川が、高層ホテルから転落死するところから物語は始まる。
北川の妻、紫帆は、同級生だった翻訳者の牧島慧(さとる)に、シンガポールに同行してくれないかと相談する。
かつて彼女に恋心を抱いていた牧島は、通訳としてシンガポールに同行することにするが、そんな二人の前にスイスSGバンクシンガポール法人の幹部の英国人エドワードが現れる。
彼によれば、紫帆の夫の北川は銀行に10億の負債があるというのだ。だが、今この場で用意された契約書にサインし、取引一切を口外しないなら、その債券を放棄してもよいと申し出てきたのだった。そのオファーは、契約書を持ち帰って吟味することは許されないという不可解なものだった。
もはや牧島の手におえる範疇を超えていた。そんな時、彼は長年疎遠になっていた古波蔵祐(こばくら たすく)の存在を思い出す…

古波蔵は、外資系プライベートバンクに勤務していたが、今はフリーで胡散臭い仕事を請け負っている。
きっかけは、2008年にスイスの大手プライベートバンクUBSの幹部が米国の司法当局に脱税幇助の容疑で拘束されたことだ。スイスのプライベートバンクの秘匿性はつとに有名だ。スイス銀行法47条(銀行秘密法)では、「職務上知りえた秘密を漏らした者」に対し、懲役刑を含む刑事罰を科すと定めており、この条文には例外規定がないためスイスの金融機関はどのような場合でも第三者に顧客情報を開示することはないと考えられていた。が、UBSは米国司法当局の圧力の前に守秘性よりも自らの生き残りを優先させた。

その影響とリーマンショックの煽りで、古波蔵は宮仕えに見切りをつけたのだった。そんな古波蔵に接触してきたのが、在日の大物フィクサーの元で情報屋をしている柳だった。以来、付き合いは続き、海外のまともな金融機関が相手にしないような現金商売の連中の便宜をはかっている。

スイスSG銀行の幹部が紫帆と牧島の前に姿を現してから数日後、スイスSG銀行の顧客の金が行方不明になったということが明らかになる。それは大居酒屋チェーン「民平」のオーナー村井の金だった。名門プライベートバンクの顧客の金がなくなるなど前代未聞の不祥事だった。紫帆の夫の北見の急死と前後し、スイスSG銀行の日本人プライベートバンカー山之辺も行方をくらましていたが、二人がそれに関係していたのは明らかだった。北川と山之辺は、別の顧客の口座に穴をあけそれを誤摩化すために「民平」の村井の金に手をつけたのではないか。そしてそれは氷山の一角に過ぎないのではないか…。
背後には、日本最大のヤクザの直系団体や大物政治家の姿が見え隠れしていた。
そして三人は国際金融の謀略に巻き込まれていき…



    money2.jpg
件の殺害されたスイス在住のファンドマネージャーのファンドにも、「資産運用というよりも何らかの意図を持ったものに見えた」という声が聞かれた。
が、本書のそれはもっと圧倒的に規模が大きいものに置き換えられている。そのからくりが、上記のあらすじから想定されることよりも遥かに大掛かりなことに驚くことだろう。

金のためなら人間は人殺しも厭わないが、もしそのファンドマネージャーが運用していた膨大な資金を奪った人間や組織がいたとするなら、彼らはどんな手段を使ってでも不都合な秘密を隠し通そうとするに違いない。
傍からみているだけの者にはこういう小説は書けない。実際にこの世界に身をおいているからこその小説だと思う。
ドラマ「CSI」に「鑑識の手続き」的面白さがあるのと同様、国際金融、殊にマネーロンダリングのからくりを知るという面白さもある。
しかし同時に、ミステリとしての醍醐味も存分にあるのだ。読み直してみれば、実は全てに繋がる手がかりのヒントはちゃんと提示されていたりもする。

古波蔵や紫帆、情報屋の柳といった登場人物の造形も秀でているためかエンタメ性も高い。
「生き残るためにはルールを習得し、コマの配置をすべて把握して、先回りしてゲームを支配しなければならない」そんな哲学を持っている古波蔵はかっこいい。
酒はスコッチしか好まず、BMWのカブリオレに乗り、ロロ・ピアーナなんかを身につけているなど、ディテールもうまく、古波蔵の姿が目に浮かぶ。
『マネロン』の秋生にも似てるが、彼よりも少し尖ったところもいい。また是非、次の小説ででも再会したいものだと思う。

日本、シンガポール、タイとその舞台もスケールが大きい。橘玲のサイトにはそのPhto Tourもあるので、そちらも併せてみればより楽しめると思う。



タックスヘイヴン TAX HAVEN

橘玲(著)
単行本: 427ページ
出版社: 幻冬舎 (2014/4/10)

Kindle版はこちらからタックスヘイヴン Tax Haven



マネーロンダリング (幻冬舎文庫)

橘玲(著)
文庫: 556ページ
出版社: 幻冬舎 (2003/04)

Kindle版はこちらからマネーロンダリング (幻冬舎文庫)






Kindle版
永遠の旅行者(上)
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category: ミステリ/エンタメ(国内)

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 国内  金融ミステリ  橘玲  スイス在住資産家失踪 
2014/05/12 Mon. 10:41 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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