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読書日記、ときどき食日記

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駄作 / ジェシー・ケラーマン 

W杯のコートジボワール戦はなんと視聴率が50%近くあったんだとか。
私みたいにジムのカフェテリアのテレビで見ていた人も含めると、かなりの日本人が観ていたのだろう。
後半ドログバがでてきた時は、私もスクリーンの前で「おおぅぅう…」となってしまった。ドログバの登場は、一瞬にしてピッチの雰囲気とゲームの流れを変えてしまった。後がなくなった日本代表だが、次のギリシャ戦はどうなるだろうか。



jesse kellermanさて、手元にあったクルーガーがひとまず終わった。
ただ今は亡き児玉清さんが解説をしている『二度死んだ少女』 は読みたいなぁと思っている。
けれどもクルーガーが続いたので、しばし気分を変えて今度は”二世シリーズ”に突入。本書だけでなく、ジョー・ヒルニック・ハーカウェイも未だ積読になっている。

本書『駄作』 ジェシー・ケラーマンは、著名な推理小説家のジョナサン&フェイ・ケラーマン夫妻の長男であるという。
これがタイトルが示す通り、実に「食えない小説」なのだ。なにせ、壮大で出来の悪い冗談みたいな本なので、洒落が通じない人には向かない。


books 3主人公はプフェファコーンという中年男だ。
彼は、昔、本を一冊出版したもののぱっとせず、以来一冊も本は出していない。東海岸の小さな大学で創作クラスの非常勤教授をして糊口をしのいでいる。

そんな彼の元に親友の追悼式への招待状が届く。亡くなったビル・ド・ヴァレーは世界的売れっ子スリラー作家だった。
ビルは30年にわたって新作がでる度に謝辞をよせて送り続けてくれたが、ビルに幸運が続く一方、自分はますますぱっとしないままでいた。それは残酷なジョークにようだった。昔からビルよりも自分のほうがはるかに才能があると信じていたのだ。それで、ここのところビルとは疎遠になっていたのだった。

ビルの葬儀の後、プフェファコーンはビルの妻カーロッタに自宅に誘われる。カーロッタは古い友人だった。
そこで、プフェファコーンはビルの未完の原稿を目にする。ビルは今どきタイプライターで原稿を書いていた。コピーはそれ一部しかなく、カーロッタは目を通さずにそれを焼却するつもりだという。プフェファコーンは、その夜思い悩んだ挙げ句原稿を持ち帰ってしまう。そして、自分の小説として出版するのだった。
プフェファコーンは、一躍売れっ子作家の仲間入りをし名誉と金を手にするのだが…。


spy 1訳者もあとがきで述べているように、この小説のキーワードは、デウス・エクス・マキナ、演劇でいうところの「機械仕掛けの神」である。
劇の内容が錯綜し解決困難な局面に陥った時、絶対的な力を持つ存在(神)が現れ、混乱した状況に一石を投じて解決に導き、物語を収束させるという手法をいう。日本にとっては不幸なことに、先日のコートジボワール戦でのそれはまさにドログバの登場だった。

亡き親友の原稿を我がものにすることで、一躍売れっ子作家となったプフェファコーンだが、この後、物語は劇的に趣きを変化させる。あまりにも劇的すぎてついていけなくなる人も多いだろう。さすがに私も最後のアレには笑ってしまった。それらを受け入れることができるか否か、この小説の評価はそれ次第だろう。

ただ、エドガー賞の選考委員は、この洒落っ気がお気に召したらしく、2013年度の候補作にノミネートもされている。そうでなければ、コネありきのノミネートなのか…?

原題は「potboiler」金目当ての粗製濫造の小説、またはその手の小説家という意味である。
MWAのお歴々はあまりにも見事に自分たちのこと皮肉られたことに敬意を表したのかもしれない。
ちなみにこの年の受賞作はデニス・ルヘインの『夜に生きる』である。

strong>S.キングは本書をして「これはミステリではない。これはスリリングなスリラー作家によるスリラー読者のためのスリラーだ。」と言っているが、実はこの賛辞そのものが駄洒落だと言ってもいい。
しかし反面で、キングをはじめとするスリラー、サスペンス作家の巨匠たちは、ケラーマンによる昨今の「売れる小説」が抱えるジレンマの指摘と鋭い洞察に舌を巻いたのではないかとも思う。

中盤以降のオーウェル的な雰囲気もいいが、「一連の滑らかな動きで」というフレーズが本書に一体何回でてくるのかを数えてみるのも、また一興…



駄作 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ジェシー・ケラーマン (著), 林 香織 (翻訳)
早川書房 (2014/6/6)




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category: ミステリ/エンタメ(海外)

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tag: 海外ミステリ  早川書房 
2014/06/17 Tue. 20:41 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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