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読書日記、ときどき食日記

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どちらがお好み?『ジェミニー・クリケット事件 』 

大型台風で沖縄地方は大変らしいが、週末には関東にもやってくるらしい。
週末は雨間違いなしだわ…。

そんな週末に迫った読書会の今回の課題本は、クリスチアナ・ブランドの『招かれざる客たちのビュッフェ』 。実は私は、これ読むのに苦労した…。まぁ、捗らなかったことといったら…。

梅雨時でそもそもが集中力がない上に、ウィンブルドンのせいで寝不足という最悪のコンディション。(しかも、ナダル負けるし…)
何より一つ一つの物語が濃く、ブランドらしい強烈な毒気にあてられてしまった。
この底意地の悪さは全くどうだろう?

読書会でアンソロジーを取り上げるのは初めて。さてどんな会になることやら…





招かれざる客たちのビュッフェ (創元推理文庫)

クリスチアナ・ブランド (著), 深町 真理子 (翻訳)
東京創元社 (1990/03)







私はやはりこの中ではダントツで『ジェミニー・クリケット事件』が良いと思った。
『招かざる客たちのビッフェ』に収録されているのは、ブランドが最終稿として選んだ英国版だが、実は、この物語には修正前の米国版が存在するのだ。
ミステリ通の間では、どちらが好みかについて侃々諤々論じられているともいう。いい機会なので私も読み比べてみた。

ちなみに、米国版は角川文庫の『北村薫の本格ミステリ・ライブラリー』 に収録されている。
北村氏は、米国版派で、これの掲載を条件にアンソロジーの編纂を承諾したのだという。新書では入手不可能なので、ご興味のあるかたは、中古か図書館でどうぞ。




※ここからネタバレあり



まず、双方のバージョンに共通するあらすじとしては、物語はある老人がジャイルズという青年に出会うところから始まる。
老人はジャイルズを歓迎しつつ、彼が「ここ」へ来る原因となった事件『ジェミニー事件』について謎解きゲームをしようと持ちかける。
ジェミニー事件とは、弁護士だったジェミニー老が完全な密室で殺害された不可解な事件だった。
ジェミニー老人は70歳の弁護士で、善良で情け深い人物だった。犯罪者の家族を冷酷な世間の目から護ることに心血をそそぎ、不幸な生い立ちの子供たちの後見人を買ってでたりもしていたのだ。かくいうジャイルズもジェミニー老人の被後見人の一人で、彼ら被後見人は「ジェミニー・クリケット」と呼ばれていた。
そのジェミニー老は、ドアと窓の間にあるデスクの椅子にブラインドからむしった紐で縛り付けられ、本人のものと思しき絹のハンカチで首を絞められ、かつナイフのようなもので肩甲骨のあたりを刺された状態で発見された。そして事務所は炎に包まれていたのだ。
事務所はさほど大きくない正方形の部屋で、頑丈なドアの正面に大きな一枚ガラスの窓、ドアは内側からかんぬきがかけられていた。窓ガラスは割られていたが、事務所は4階で地上からの高さは50フィートもある。
警官隊が階段から駆け上がってきた時には、ドアの下の隙間からは煙が流れでてきており、事務所のパートナーで被後見人のルーパートが必死でドアを叩いていた…

事件の概要を語るジャイルズに、老人は次々と質問を浴びせ、 様々な仮説を組み立てつつ真相に肉薄していく。 そして最後には事件の犯人にたどり着く…


この小説の良さは、事件の謎解き自体よりも、この老人とジャイルズの関係と、彼らが今いる場所の皮肉にあるだろう。 登場人物は老人とジャイルズのほぼ二人で、全編が二人の会話によって成り立つという構成の妙と、異様な雰囲気を漂わせる二人のやり取りは秀逸で、名作の誉れ高いのも納得である。

ところで、英国版(完成版)と米国版の違いは、

①老人とジャイルズとの関係をはっきりさせているか否か(老人がジャイルズが自分の孫だとわかっているか)

②老人が自分自身が過去犯した罪を覚えているのか

③園丁の役割


が挙げられると思う。
JC20140709

はっきりしたのがお好みならば米国版だろうが、私はブランド自身が最終稿とした英国版のほうが、よりブランドらしい毒気が感じられて完成度も高いと思った。

「秘すれば花」ではないが、全てを明らかにすることなく、それとなく推測させるほうがよりこの物語の恐ろしさが伝わってくるし、ブランドの手腕も味わうことができる気がするのだ。その分、コンパクトな米国版よりも長くなってもいる。

老人が自分の過去の事件を覚えており、ジャイルズの事件の謎解きゲームが終わった後に、「今度はいつか、わしの話をきかせてやろう。」というのも狂気めいており、且つ原題である『Murder Game』というタイトルもいきる気がするのだ。
また、ジャイルズがヘレン話に及ぶと決まって訪れる”暗黒よりも恐ろしい真っ白な光”の使われ方も効果的になっていると思う。

極めつけは、英国版は私に「ある疑惑」をもたらすことにある。ジャイルズは老人の巧妙な誘導によって自らの殺人を再自覚するはめになったが、本当に事件の一切を思い出したのだろうか?
もしかしてジャイルズは彼にとって最も恐ろしい犯罪をまだ思い出していないのではないのか?そうでないのならば、なぜ彼が周到に練り上げ冷静に行った殺人が明るみにでて、「ここ」に来るはめになっただろう?
なぜヘレンのことは全てが過去形で語られるのか?

このような余韻も含めて、私は断然英国版派なのだった。

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category: ミステリ/エンタメ(海外)

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  読書会  英国 
2014/07/09 Wed. 16:45 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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