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読書日記、ときどき食日記

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『招かれざる客たちのビッフェ』”毒”にやられた読書会 

台風はそれてくれたが、土曜日の横浜は、まさにうだるような暑さ。死にそう…
読書会の会場が駅から近くてよかった!!!


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横浜読書会も、なんだかんだで第8回目だそうである。(ちなみに毎月やっているのはスピンオフ)

今回の課題本はクリスチアナ・ブランドの『招かれざる客たちのビュッフェ 』だ。
これが告知とともに瞬く間に満席になったそうで、この暑いなか、参加者21人という盛況ぶりだった。

大人数なので、ちょうど7名づつで3つのグループに分けて読書会を行う。
ゲストは、本書の担当編集者で、現在は書評家の松浦正人氏と東京創元社の元社長の戸川安宣氏。
お二人には順次三つのグループを回っていただいた。

下記の写真は原書版と、『招かれざる客たちのブッフェ』の初版本。本書は現在第19刷を数えるロングセラー本である。装丁は原書よりも創元文庫のほうが内容にふさわしいように思う。
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戸川さんは、初版本を成蹊大学に寄贈しているのだそうだが、その寄贈の条件として帯や差し挟まれている新刊本の広告も全てセットにして保管してくれることなのだそうだ。


さて、前のエントリでも書いたが、私はこの本を読むのが、もうしんどくてしんどくて…
「もしかして、最も招かれざる客は私かも!」などと思っていたが、実は私に限った話ではなかったらしい。

それが証拠にもっともよく聞かれた感想は、
「悪意が凝縮されていて読書が捗らなかった」だった(笑)

そうだよね!ブランのおばはん、意地悪すぎだもの!!!
正直、これに比べれば『厭な物語』など厭でも何でもない。

主催のおてもと氏は、常々「ぼく、クリスティーを読んでると女性というものがコワくなるんですヨ」とか言っていたが、そういいつつも、本格的な女性恐怖に陥る前に、幸せを掴んだみたいである。

しかし、ブランドの毒気はクリスティーのそれの比ではない。ブランドはクリスティーよりも出自こそ上だが、17歳の時に父親が破産したことで人生は一転し苦労もしている。
解説の北村薫氏も、そのことで「星よりも高い自負の心を踏みにじられることで、磨き抜かれたのかもしれない」と言っている。善かれ悪しかれ、苦労が彼女に及ぼした影響は大きいのだろう。



また、この短編集の中でのベスト作品のアンケートをとったのだが、
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なんと『スコットランドの姪』がダントツだった!

『スコットランドの姪』が選ばれた理由としては、
・毒が少なめで良かった
・口直しの一品はこれだけだった
・他の作品に比べると爽やかでユーモアも感じられたので


この作品自体の良さもさることながら、他の作品に毒気がありすぎてゲンナリしてしまったのかも。
私は『ジェミニー・クリケット事件』に入れたのだが、意外にも『ジェミニー』や『婚姻飛翔』は票が伸びなかった。



そのほか個々の作品の感想としては
『婚姻飛翔』
・キャクストン氏は、牡蠣が嫌いといいつつなぜ食べたのか?日本人だと「牡蠣が嫌い」イコール「気持悪くて食べられない」もしくは、「あたったことがあるので食べられない」ということが多いので、丸呑みしてしまったことに違和感を感じてしまった。

『ジェミニー・クリケット事件』


・密室トリックがちょっとダサい。さすがにドアの背後に隠れていたら、突入時にわかってしまうのではないか?
・警官殺害の理由がまるでサイコパステスト。
(この作品に限ったことではないが)
・『ジェイコブを守るため』にでてくる殺人遺伝子を思い出させた。



他にもあったが、ほぼ全てに共通して言えるのは
・全登場人物に少しも共感できない。
・登場人物と同時に読者をいたぶっている。


といった感じだろうか。


この「いたぶる」で思い出したが、二次会の席でKameさんが
「ブランドっていうのは猫なんだよ」
とボソっと言ったのが印象に残った。
横浜読書会には猫好きが多いので反感を買う恐れもあるが、あえて言わせていただくと、猫という生き物は我々が思っている以上に残酷な生き物なのだ。鼠を一発でしとめたりはせず、少しずつ少しずついたぶって殺す。なるほど言い得て妙だと思う。

それから、『ジェミニー・クリケット事件』のアメリカ版を読まれている方も、少数ながらいらっしゃった。
なぜこの二つのヴァージョンが存在するのかについてを松浦氏に伺ったところ、残念ながらその種の逸話は残されていないそうである。
しかし推測するに、当初出版の運びとなったのがアメリカであったために、アメリカ人読者の傾向を踏まえ出版社の意向を踏まえ書き上げたのだが、「やっぱり…」というので書き直したのがイギリス版なのではないかということだった。
ちなみに、本書『招かれざる客たちのビュッフェ 』に収録されているのは最終稿であるイギリス版で、アメリカ版は、『北村薫の本格ミステリ・ライブラリー』 に収録されている。

どちらが好みかについてはほとんど差はなかったものの、読み手に余地を与えるという意味で、英国派が若干上回った。
ご興味があれば是非読み比べてみてください。



最後に松浦氏おすすめのブランド長編について。
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全部読んでいるわけではないので…と前置きをされた上で、世代的にメルクマールとなったのは、やはり『ジェゼベルの死』 なのだそうだ。
山口雅也氏が「パズラーの限界に挑んだ作品」と絶賛し煽った鳴り物入りの本で、大抵こういう本は読んでみるとそれほどでもないということが多いのだが、これは面白かったという。
後は、予測不能などんでん返しの「はなれわざ」と「猫とねずみ」を挙げられていた。

「ジュゼベルの死」も「はなれわざ」も「猫と鼠」ももはや中古でしか入手できないが、「猫とねずみ」はAmazonで3万円を超える値がついていたりもする…(汗)



新しいところでは年初に『領主館の花嫁たち』が刊行されている。
ブランドとは無関係だが、カーの作品中最も改訳を出す必要のあった『三つの棺』も新訳版がでた。コンベンションでさる翻訳者の方が言っていたが、今年はクラシックの年になるのかも。





招かれざる客たちのビュッフェ (創元推理文庫)

クリスチアナ・ブランド (著), 深町 真理子 (翻訳)
東京創元社 (1990/03)








領主館の花嫁たち

クリスチアナ・ブランド (著), 猪俣 美江子 (翻訳)
東京創元社 (2014/1/29)




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category: 読書会

thread: 推理小説・ミステリー - janre: 本・雑誌

tag: 読書会  英国 
2014/07/14 Mon. 19:12 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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