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読書日記、ときどき食日記

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特捜部Q 知りすぎたマルコ / ユッシ・エーズラ・オールスン 

あ〜〜〜つ〜〜〜い〜〜〜〜〜〜〜!!!

昨年は「酷暑」という言葉をよくニュースで聞いたが、既に「酷」を通り過ぎた暑さ。
ちょっとそこまで買い物にいくにも、汗だくだくだし、地球は完全に壊れたな…
暑さに弱いので、ツライ…

こうも暑いと、小説も重いものより口あたりのいいエンタメがいい。
ちょうどタイミングよく『特捜部Q』シリーズの最新刊が出ているではないの。このシリーズもはや第5弾になるが、『ミレニアム』を除けば、北欧ミステリのなかで最も面白いシリーズなのではないかと思う。
好みもあるだろうが、ヴァランダーよりも私は断然『特捜部Q』派!
北欧ミステリといえば「陰惨さ」が売りであるが、「陰惨」一辺倒だとこれがまた何かと疲れる。それが、このシリーズにはよいバランスでユーモアが加えられているのだ。

第5作ともなれば、そろそろ中ダレするかなと思いきや、これもなかなか。
これまでとは少々毛色が異なる仕上がりといえるかも。難を言えば、オールスンは”読者は連続して読んでいるもの”という前提にたって執筆しているので、この本だけ読んでももしかしてわからないところもあるかもしれない。これだけでも面白いとは思うが、できれば全部読んだほうがいいと思う。




christiania.jpgさて、カール・マーク警部補が率いる"特捜部Q"はコールドケースを扱う部署だ。政治家の発案により鳴り物入りで発足したものの、オフィスは地下室の一角で、メンバーは、自称シリア人の雑用係アサドと、変人のローセという女の子のみ。アサドについては住んでいるところからして謎だらけだし、ローセに至っては他の部署から押し付けられたも同然だった。だが、意外にもこの三人はいいチームワークを発揮し、これまで数々の難事件を解決に導いてきたのだ。

今回の物語は2008年のカメルーンから始まる。
デンマーク政府はカメルーンのバカ・ピグミー族が暮す地区で開発支援プロジェクトを進めていたが、そのプロジェクトには裏があった。その資金は先の金融危機で経営難に陥った銀行に横流しされていたのだ。忠実な現地スタッフが謎のメールを最後に消息をたったことを不審に思った外務省の上級参事官ヴィルヤム・スタークは、カメルーンに派遣されるが、身の危険を感じ急遽帰国した直後に行方不明になってしまうのだった。

それから二年後の2010年の秋、15歳の少年、マルコは自分たちの生き方に疑問を抱いていた。彼の一族 (クラン)はイタリアで"ロマ"のような暮らしをしていたが、5年前にここデンマークに流れてきた。クランを取り仕切っているのはマルコの父親の弟のゾーラだ。クランは犯罪集団で、子供たちは皆学校にもいかず街中でスリや物乞いをさせられている。
マルコには、なぜ皆が暴力で皆を服従させ、金品を取り上げるゾーラに我慢しているのかが理解できなかったし、そんな状況に甘んじている自分の父親を恥じていた。父親は二年前から急に腑抜けのようになり、ゾーラの言いなりになってしまっているのだ。ある夜、マルコはゾーラが反抗的なマルコを障害者にするばきだという話を耳にしてしまう。ゾーラがいうには、今のうちにマルコの反骨心は砕いておくべきだし、障害者になれば物乞いとしてより稼げるようになるというのだった。
cap.jpgマルコはパジャマのまま裸足で逃げ出すが、追っ手をかわすため身を潜めていた森で死体を発見してしまう。すぐそばで交わされたゾーラと父親の会話から、その遺体を埋めたのは彼ららしかった。このことを警察に言えば、ゾーラは破滅だ。それはマルコが自由を手にできるチャンスだった。だが、同時に父親も窮地に追い込んでしまう。頼りない父親ではあったが、それでもマルコは父親を愛してたのだ。
ひどい腐敗臭を放っているその遺体は、アフリカ風のネックレスをしていた。

そして、物語は2011年の春、現在に移る。
前回の事件で、頭部に大怪我をしたアサドは、まだ顔の表情に麻痺が残っているものの、カールに向かって"ラクダにひっかけた冗談”を言えるようになるまで回復しつつあった。
そんな特捜部Qにローセが一枚のビラを持込む。それは失踪した外務省の上級役員スタークの義理の娘がつくったビラだった。スタークの恋人とその娘は彼の行方を探し続けていたのだ。
一方、クランから逃れたマルコは、次第に過去と距離を置くことができるようになっていた。この国の皆と同じように教育を受け、仕事に就き、家庭を持ちたい。それには新しいパスポートが必要だった。そのためクランに警戒を払いつつも必死に働いていた。そんな時、マルコはビラ貼りの仕事で一枚のビラを目にする。その写真はまぎれもないあの時の遺体の男だったのだ。そしてあのアフリカ風のネックレスは今、マルコの首にかかっていた…



カールのとほほ感とアサドのとぼけ具合が織り成すユーモアも健在。
『Pからのメッセージ』以降、特捜部Qに難事件を持込む役割を担うようになったローセも、相変わらずいい味を出している。そして、また新メンバーが加わることに…。

だが、今回の主役はなんといってもマルコ少年だろう。このマルコが実に魅力的なのだ。"クラン"の生まれという足枷がありながらも、賢く、けなげで向上心に溢れているこの少年に魅せられない人がいるのだろうか?

『特捜部Q』といえば、社会問題を扱うのが定番となっている。今回の主たるテーマはODA問題だが、同時にマルコのような"ロマ”の問題ももう一つの柱になっており、読み応え充分。

読後感もいつになく爽やかで、やっぱり『特捜部Q』はいいなぁと思う。少々出来過ぎな気もしなくもないが、いいじゃないの、それでこそエンタメなのだ。


特捜部Q ―知りすぎたマルコ― ((ハヤカワ・ポケット・ミステリ))

ユッシ・エーズラ・オールスン (著), 吉田薫 (翻訳)
早川書房 (2014/7/10)








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category: クライム・警察・探偵・リーガル

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tag: 海外ミステリ  早川書房 
2014/07/26 Sat. 04:12 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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