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読書日記、ときどき食日記

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沈黙を破る者 / メヒティルト・ボルマン 

しかし、それにしてもあ〜つ〜い〜!
夏休みで、お出かけの方も多いだろうが、私もちょこっと近場にいってきた。

旅行中、読んだのは、月村 了衛『機龍警察』鳴海 章『フェイスブレイカー』と本書『沈黙を破る者』である。
『機龍警察』と『フェイスブレーカー』はともにKindleでDLできるので読んでみたのだが、前者は、有機物じゃないエヴァといった風で、後者はドラマ化とかされそう。両者ともに、続編からが本番なのかなぁ?という感じ。

mechitild borrmann一番趣味にあったのは、本書『沈黙を破る者』だった。なんでも"ドイツミステリ大賞第一位"という冠をいただいているそうである。
中編といっていいくらいの長さで、削ぎ落とされたミニマムさはシーラッハに似ているかもしれない。モチーフもお約束の”ナチもの”なのだが、少しアプローチが異なっている。
エンタメというよりはかなり文学寄りな作品で、独特の静謐さと情緒がある。





さて、物語はロベルト・ルビシュという医者が父親の遺品を整理しているところからはじまる。
ロベルトの父は一代でドイツ有数の建設会社を築いた男だった。彼にとっては立派すぎ、偉大すぎる父親だったのだ。
そんな父の引き出しから、他人の身分証明書と色あせた女性のポートレート写真が見つかる。身分証明はナチス親衛隊のもので、写真の顔は汚れで判別不能だが、ヴィルヘルム・ペータースという自署がされていた。写真の女性は美しく、誰か親しい人にむけて微笑んでいる。その裏にはクラーネンブルクの写真館のスタンプが押されていた。

Nazi.jpg
戦時中、父は一兵卒として参戦し、終戦直前に捕虜になったと聞かされていた。そんな彼がなぜ他人の名義の身分証明を持っているのだろう?そして、この写真の女性は誰なのだろうか?

学会を利用しクラーネンブルクに赴いたロベルトは、その女性がテレーゼという名で、身分証明の男ヴィルヘルム・ペータースの妻であることを知る。だが、ヴィルヘルムはテレーゼと結婚後行方不明となっており、テレーゼもまた姿をくらましていた。
二人と親交があったヘイファー牧場のハンナとパウルの姉弟は、まだ健在だという。牧場に赴くロベルトだったが、あいにく二人は留守にしており、その別棟に住むリタ・アルバースと出会う。この別棟こそ、テレーゼが住んでいた家であり、今はフリージャーナリストのリタが、この小屋をハンナとパウルから賃借りしていたのだった。
ロベルトの話を聞いたリタは、これは"仕事”になるとにらみ、独自に調査を始める。そして、テレーズを突き止めるのだが、彼女は何者かに殺害されてしまう。

一方、マヨルカ島のテレーズは過去を思い出していた。戦時下のあの時代、幼馴染みたちと過ごした青春を、秘密の恋を、その終焉の一時始終を…。

物語はナチス支配の戦時下と、その真相を追う現代の物語が交錯しながら進んでいき、やがて真相が明らかになるのだが…




summer house冒頭でも紹介した通り、本書は"ドイツ・ミステリ大賞第一位”に輝いた。この大賞は書評家と一般読者の評価によって採点されるものだという。身内で決められる「このミス」より、オープンでフェアな賞なのだ。そして、その大賞での本書の見出しは「愛は殺す」なのだそうだ。本書をズバリ言い表しているキャッチだと思う。

この物語は単なる戦時下に起こった悲劇だけではなく、様々な愛が描かれている。誰かを犠牲にしても自分の思いを遂げたい、それが愛だと信じる者もいれば、愛のためには、自分を犠牲することさえかまわないと考える者もいる。
何ならよくて、どこからが許されないことになるのだろうかと考えずにはいられない。

訳者の方も「グレーソーンの複雑な状況に立たされた人間の抜き差しならぬ心理を描かせたら、ボルマンの右に出る者はいないのではないか」と言っているが、本当にそうかもしれないと思う。


沈黙を破る者

メヒティルト ボルマン (著), 赤坂 桃子 (翻訳)
252ページ
河出書房新社 (2014/5/22)




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category: 歴史・大河・ドラマ

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tag: ドイツ  海外ミステリ 
2014/08/04 Mon. 21:25 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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