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読書日記、ときどき食日記

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ゴーストマン 時限紙幣 / ロジャー・ホッブス 

「翻訳ミステリー大賞 コンベンション」のビブリオバトルで知って、今年一番に心待ちにしていた本である。今月の8日発売だったのでその日にゲット。先の読書会でも3人が購入していた!
帯には、「英米のミステリ賞を総なめにした25歳の天才作家、登場」というキャッチとともに、ミチコ・カクタニ、リー・チャイルドなどからの賛辞の言葉がずらり。
それに「あのカリスマ編集者ゲイリー・フィスケットジョンが、まだ仕上がっていないにもかかわらず契約した」「トム・ロブ・スミスに匹敵する早熟の天才」と聞いては、これはもう何を置いても読まなくちゃ!でしょう。

roger hobbs1「トム・ロブ・スミスに匹敵する」とはまた、ハードルを高くしたものだが、はっきり言ってトム・ロブ・スミスとは路線は全く違う。
こちらはよりアメリカ的であり、純然たるエンタメだ。
好みも割れるかもしれない。


著者は作品のイメージと異なり、ご覧の通りなのだが、

でも、このぽっちゃり君は、
かなりのやり手なのだ。





もうね、何と言っても主人公の「私」がいい。タイトルから何となく想像がつくように、本書は銀行強盗のハナシであり、この「私」も銀行を襲撃するのを生業としている悪人である。そのダークヒーローぶりがいいのだ。
一体どれくらいの人がピンとくるかわからないが、楡周平のデビュー作『Cの福音』朝倉恭介に感じたカッコ良さを思い出す。この手のダークヒーローというのは、なぜだか周期的に恋しくなるものだ。


さて、物語は二人の男がアトランティックシティのカジノを襲うところから始まる。2人組はモレノとリボンズの黒人コンビで、犯罪常習者にして薬物常習者である。襲う対象は、正しくはカジノに現金を輸送してくる輸送車だ。今どきの現金輸送車は金の詰まった戦車のようなものだが、それが積みおろされる時には隙が生じる。二人はそれを狙ったのだ。
少々手間取りはしたものの、現金強奪は守備よくいったかに見えた。しかし、謎の狙撃手が二人を襲い、モレノは死亡、リボンズも腹に弾を食らってしまう。そして、その後リボンズは行方をくらましたのだった。

実はこの強盗(タタキ)にはマーカスという立案者(ジャグマーカー)がいた。彼、マーカスがこの強盗を思いつき極めて厳密なシナリオを書いたのだ。そしてアトランティックシティから西に三千マイル離れたシアトルで、彼はリボンズからの電話を待っていた。

ここで、ようやく主人公「私」の登場と相成る。夜更けに突如として、そのマーカスから「私」に一通のメールが届くのだ。
Atlantic Cityところで、「私」は10代半ばからかれこれ20年近く武装強盗を生業にしている。仕事は強盗にかかわった全員を「消し去り」逃がすこと、すなわちゴーストだ。「私」自身も強盗をした二時間後には全くの別人になることができるのだ。

マーカスのメールを無視することもできたが、彼には大きな借りがあった。5年前の”アジアン・エクスチェンジ”の件だ。マーカスが立案した大掛かりなヤマで、成功すれば一人当たり250万ドルほど金持ちになれるはずだった。実行役は、ゴーストマンとしての「私」の師であるアンジェラと、逃走車のドライバー、金庫破り、語学に長けた詐欺師に脅し役二人という総勢7名だ。だが、「私」のせいで失敗してしまったのだった。

「私」はマーカスから、リボンズの居所を探し出し金を持ってくるよう命じられるが、その金はタダの金ではなかった。今時のカジノは金を連邦準備銀行から直接受け取っている。市中銀行より効率よく金を循環させることができるからだ。ゆえに、その金には連邦政府によるインク爆弾が仕掛けられていたのだった。

マーカスは、その爆弾付きの金を敵との取引に使おうと目論んでいた。それで敵を葬るつもりだったのだ。だが、予定は大きく変わってしまった。その金が爆発しようものならマーカスはお終いだった。

爆発までの猶予は48時間…
モレノとリボンズが襲われたのはなぜなのか?なぜそのタイミングだったのか?

過去のクアラルンプールでの一件を差し挟みながら、「私」の爆弾付きの金探しの物語は進んでいく。
  one dallar
スリリングでクール、ドライでスタイリッシュである。所々挟まれる蘊蓄や、アエネーイスなどの古典なども好み。ただ、今後ハンバーグやらホワイトソースをつくる際はナツメグは控えてしまうだろうけれど…。
ストーリー自体も昔の強盗事件の転機となった出来事が、今の事件に上手に使われていてイカしているが、何よりこの主人公の格好良さときたら!「ハードボイルド」特有の一人称も懐かしいようでもあるが、古くない。

「私」は"面白いこと"のためなら死すら厭わない。
家柄も育ちも学歴も申し分なく、他人の生涯賃金以上の年収を得ているような若者たちが、自分たちの「ツキ」を試すためだけに、スカイダイビングでパラシュートの紐をひくタイミングを遅らせるという危険な遊びをしている、というのを以前どこかで読んだことがある。この若者たちと「私」とは背景は全く違うのだろうが、どちらも生きることに飽きはじめているのだ。

確か、インタビューによると、レクター博士とマッカーシーの『血と暴力の国』のアントン・シガーを参考にしたとあったが、その点が彼らよりももっと現代的な感じ。
新たなダークヒーローの登場といっていいだろう。

しかし、クアラルンプールのヤマにはもう一段底があるの気がしてならないのだ。絶対続きはあるだろうと思っていたら、既に著者は続編にとりかかっており米国刊行は来年の春頃らしい。ゆえに、来年の今頃にはこの謎も解けるのではないかと期待している。
もう一つ気になったのが「私」に協力したFBI捜査官だった。もしやどこかに「パッションフルーツの香り」の描写があるのではないかと思ったが、こちらは深読みのしずぎだったかな?

それから余談だが、ホッブス自身のウェブサイトでは、あたかもゴーストマンのような様々なホッブスが見られる。BIOの写真などは上記とは同一人物にはとても見えないのだ!



ゴーストマン 時限紙幣

ロジャー ホッブズ (著), 田口 俊樹 (翻訳)
単行本: 405ページ
文藝春秋 (2014/8/8)






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category: クライム・警察・探偵・リーガル

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  読書会  映画化  ダークヒーロー 
2014/08/13 Wed. 17:41 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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