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読書日記、ときどき食日記

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ハリー・クバート事件 / ジョエル・ディケール 

Joël Dicker1スイス人作家による欧州ベストセラー小説だという。
なんでもダン・ブラウンの『インフェルノ』をNo.1から引きずり下ろした作品なのだそうだ。正直期待していなかったのだが、これ大好き!!!

本書のジョエル・ディケールといい、『ゴーストマン 時限紙幣』ロジャー・ホッブスといい、今年は若手がすごい。9月10月にはまたどっさり新刊が出るのだろうが、今年はこの二作品の一騎打ちではないだろうか。

ぽっちゃりなホッブスと違ってこっちはイケメン
これだけでもう…(笑)

面白い本いい本というのは、個人個人によって異なる。私にとってその指標となるのは、「登場人物たちにもう会えないかと思うと少し寂しさを感じ、もっと読んでいたかったと思うような本」である。これは作中、作家の師であるハリーの言葉なのであるが、本書はまさにそういう本なのだ。



seagull.jpgさて、本書の主人公はマーカス・ゴールドマン。
彼はデビュー作が大ヒットしたことで一躍人気作家の仲間入りをした。だが、その後深刻なライターズ・ブロックに陥る。書けないのだ。
栄光は儚い。だがそれだけでなく栄光はツケをも伴う。一年半そんな状態が続くと、エージェントは愛想をつかしはじめ、出版社からは待ったなしの最後通牒がきてしまう。契約は5作品だったので、書けないともう破産しかなかった。絶対絶命のピンチに、マーカスは恩師ハリーに助けを求める。ハリー・クバートは『悪の起源』という名作で知られる現代アメリカを代表する大作家にして、マーカスの師だ。
マーカスはニューヨークを離れ、ニューイングランドはオーロラのハリーの家に身を寄せることにするが、書けないのは相変わらずだった。

追いつめられたマーカスは、ハリーがなぜ若くして『悪の起源』を書けたのかという疑問に取り憑かれてしまう。ついには手掛かりを求め書斎を探しまわる始末だった。
そしてハリーが34歳のとき、15歳の少女と付き合っていたという証拠を見つけてしまう。あの誰もが涙した傑作『悪の起源』は15歳の少女ノラのためにかかれたものだったのだ。しかしなぜ、ハリーはあんなに美しい小説に『悪の起源』などというタイトルをつけたのだろうか?

時をおかずして、ハリーの家の庭からノラの白骨遺体が見つかる。ノラは1975年に行方不明になっていたのだ。自宅から遺体が見つかったことや、当時彼がノラと交際していたことなどからハリーは逮捕されてしまう。「自分は断じてノラを殺していない」ハリーの言葉を信じるマーカスは、オーロラに留まりハリーの無実を証明しようと奮闘するのだが…

マーカスはハリーの窮地を救うことができるのか?ノラを殺害したのは誰なのか?



Remington.jpg師弟の物語、本と人生にかかる物語、本書は様々な読み方ができる。
ミステリとしても一級品だとは思うが、それ以外がまたいいのだ。
訳者や欧州の識者が指摘するような文章の稚拙さやもたつきは、私は感じなかった。著者はなんと一切の推敲をしなかったらしいのだが、その分、訳者が苦労だれたのだろう。
ただ、タイトルは個人的には原題(ハリー・クバート事件の真相)のままのほうが良かったと思うが。

もしあなたが学生時代、ちょっとだけ「できるやつ」だったならば、マーカスに深く共感するはずだ。いや、ある時点までは、誰だってが何かしらのジャンルで、「できるやつ」だったのではないだろうか。マーカスのいう通り、優秀であるということは相対的な問題なのだから。彼はそれを戦略的に利用したのだ。「できるやつ」であるために、自分よりレベルの低いところで勝負してきた。
昔「できるやつ」だったあなた…。思い当たることしきりではないだろうか。あなたや私が昔「できるやつ」と呼ばれていたのは、単に周囲が自分よりレベルが低かったからだ。マーカスとの違いは、それが戦略的だったか否かということだけ。
だが、あなたも私も、経験則から、そんな手はいつまでも通用しないということを知っている。そして「負ける」ことに慣れていく。次第に「普通」でもまぁいいかと思うようになったはず…。

だからこそ、負けから何かを学びとったマーカスをまぶしく、同時に誇らしく感じるはずだ。親近感ある等身大の主人公が何かを乗り越えるというのは、読み手にとっても気分がいいものではないか。
といっても、マーカスも、おそらくそのモデルであるディケールも「本当にできるやつ」なのだけど。
ただ、それでも自分もそうできそうな気にしてくれる。
その頃にはもうこの小説を「ずっと読んでいたい」と思ことだろう。

後半は二転三転する。ノラの少女像はその時々で変わるし、ノラ殺しの犯人が誰なのかもまた然り。

絶対に「あとがき」から先に読むなどという愚をおかしてはいけない。ラストには読み手が想像もしない意外な結末が待っているのだから。
一応のヒントはあれど、最初からこれを見切った人がいるならば、それは相当すごいと思う。まさに「本当にできるやつ」なのだろう。



ハリー・クバート事件 上
ハリー・クバート事件 下

Kindle版はこちら→
ハリー・クバート事件(上下合本版)

ジョエル・ディケール (著), 橘 明美 (翻訳)
東京創元社 (2014/7/30)


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category: ミステリ/エンタメ(海外)

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  東京創元社   
2014/08/21 Thu. 19:16 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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