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読書日記、ときどき食日記

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密室の王 / カーラ・ノートン 

思わず、Kindleぽちった誘拐監禁ものを扱ったクライム・スリラー。やや重め。

従来の誘拐監禁ものは、その少女が犯人どんな酷い目にあわされ、その地獄からどう抜け出したのかがじっくりと描かれたもの、もしくはそういった性犯罪者と刑事の対決ものというのが定番だったが、本書はそういったものとは一線を画し、誘拐監禁被害者の"その後"にも焦点を当てている。


imprisonment.jpg主人公リーヴは誘拐監禁被害の一人だ。12歳で誘拐され、4年近くも男に監禁されていた。生きて救出されたのは犯人がヘマをしたからで、言い方は悪いがただラッキーだった。

名前も変え仕事にも就いているものの、22歳になった今もまだ精神科医の元に通っている。リーヴの主治医、ドクター・ラーナーは全米でも数少ない長期監禁による後遺症の権威だ。彼女の心の傷は深く8年を経た今でもその影響は大きい。
ある時、カリフォルニア州ジェファーソンシティの売り家の地下室から少女が発見される。その少女ティリーは1年以上前に誘拐され以来行方がわからなくなっていた。その地下室で男に監禁されていたのだ。

ドクター・ラーナーは検察側の鑑定人としてティリーのもとに赴くが、ティリーの両親のたっての願いで同様の誘拐監禁被害のサバイバーであるリーヴがティリーのケアにあたることに。リーヴ自身もかつて、同様のサバイバーにケアをしてもらったことがある。その役割の重要性は分かりすぎるほど分かっていた。
ティリー誘拐監禁の容疑で清掃員ヴァンダーホルトが逮捕されたのだが、実はジェファーソン郡では他にも少女があと二人行方不明になっていた。ティリーと同じような体型、同じような少女。全員が夕暮れ時に誘拐され、目撃者はいない。だが、他の二人の捜査は遅々として進まなかった。そしてティリーは、救出されたというのに何者かに怯えていた。

Brachypelma smithi一方、"公爵”と自称する男はまぬけなヴァンダーホルトの失態に毒づき、彼をどうするか考えていた。しかし、うすのろ男よりも"公爵”の心を占めていたのは、ティリーが何か自分に関することをしゃべりはしないかということだった…



後半はご想像通りリーヴと"公爵”の対決となる。割と最初から黒幕の正体は明かされており、ミステリというよりはスリラー色のほうが濃い。この" 公爵”が不気味なのだ。"公爵”と自称しているようにどこかスノッブな感じもなくはないが、こういうキャラはどこの会社にも一人はいるのではないか。この手の手合いがごく身近に潜んでいる可能性が高いという事実が、より緊張感をもたらす。

誘拐監禁被害者は、また同時に性犯罪被害者でもある。
リーヴはメディアに「短気なリジー」という渾名をつけられるくらい向こうっ気が強くタフな女性だ。こんな強い女性でも、加えて全米一の専門医の助力をもってしても、"後遺症”を克服するのは容易なことではない。

本書は著者カーラ・ノートンの初の小説だが、彼女はキャメロン・フッカー事件を元にしたノンフィクション『完璧な犠牲者』 の執筆者としても知られているという。
70年代後半に起こったこの事件は、当時20歳だったコリーン・スタンがヒッチハイクで乗り込んだ車の持ち主の男キャメロン・フッカーに、実に7年に渡って性奴隷として監禁虐待されていたというものだ。何年か前に某テレビ番組で取り上げられたのでご存知の方も多いかもしれない。ある意味、誘拐監禁というのはノートンにとってのライフワークみたいなものなのかもしれないなとも思う。

Carla Nortonだからこそリーヴが抱えている苦しみは通り一遍でないリアリティを持っており、読み手はそれに衝撃を受ける。
"普通”になることはリーヴにとって、彼女たち被害者にとってどんなに困難なことか。他人と親密な関係を築くことがどんなに困難なことか。恋愛となるとハードルはもっと上がる。全身は犯人によってつけられた消えない傷だらけだからだ。仮に誰かを好きになったとして、その一切をどう説明すればいいのか?そこを乗り越え、やがて性的親密さへと発展した時、"裸と閉じられたドア"というのは大きな問題として立ちふさがる。

それでもリーヴは、自分と同じような被害を受けた女の子を助けることにより少しずつ回復していく。希望に満ちた終わり方は、もっとリーヴの成長を見ていきたいと思わせる。

日本でも監禁というと新潟の少女監禁事件を思い出す。9年2ヶ月もの歳月にわたり少女が監禁されていたという事件である。しかも犯人の家には彼の母親も同居していた。
彼女が救出されたのは2000年のことだったから、あれからもう14年。リーヴは自分の人生を再び歩みはじめたが、あの被害女性はその後明るさを取り戻すことができたのだろうかと考えてしまった。



密室の王 (角川文庫)
カーラ・ノートン (著), 羽田 詩津子 (翻訳)
KADOKAWA/角川書店 (2014/5/24)



Kindle版はこちら→密室の王


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category: クライム・警察・探偵・リーガル

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tag: 角川  Kindle  スリラー  監禁 
2014/08/25 Mon. 15:01 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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