Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

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気がつけば9月 

london3.jpg9月の読書会は、ウィンズロウの『ストリート・キッズ』 なのである。事前アンケートの締め切りも迫っており、早めに読もうと思っていたのに、案の定9月になってしまった。いや〜もう9月なんて…

まさに、日付は雨中のタクシーのように疾走するのだ。その雨中のタクシーから降りると、すっかり季節は秋になっているではないか。

この『ストリート・キッズ』は、私のオールタイムベストのベスト10に入っているお気に入りでもある。およそ20 年ぶり!に再読したのだが、やめられなくなり『砂漠で溺れるわけにはいかない』までを一気に読んでしまった。

さて、「断じて〜すべきではなかった。」というニールの後悔ではじまるこのシリーズだが、それはニールが電話にでることだったり、ドアを開けることだったりする。
そして、その先には必ず"父さん"ことジョー・グレアムがいるのだ。グレアムから朋友会の仕事を依頼されることで、ニールは事件に巻き込まれるのだが、大抵の場合、ロクな目にあわない。

グレアムは小柄な”片腕の探偵で、"朋友会"に雇われている。この朋友会というのは、プロヴィデンスに拠を置くプライベートバンクの顧客のための組織で、顧客の"厄介ごと"を解決することを目的としているのだ。
今はスイスのプライベートバンクだって、FBIの前にはさっさと顧客情報を差し出すようなご時勢だが、なにせ物語の舞台設定は1970年代半ばから80年代にかけてであり、WASPにとっては古き良き時代なのだ。

父親はどこの誰とも知れず母親はヤク中というニールは、グレアムに出会うまではストリート・キッズとして生きていた。が、ある日グレアムの財布を摺ってしまったことで運命が一変する。グレアムにプロの探偵の技術を教え込まれ、彼の下で働くようになるのだった。
探偵業の傍ら、”朋友会”の援助でコロンビア大学に進んだニールは、将来は英文学の教授になることを夢みているが、そうそう人生はうまくいかない。
久しぶりにグレアムに呼び出され、上院議員の家出娘アリーを連れ戻すよう命じられるのだが…


Gordon-Keeble ウィンズロウの作品中、最も女性ファンが多いのはニールのシリーズだと思う。
その生い立ちや、グレアム父さんとの関係もたまらないのだ。
グレアムとの関係も、描かれているのは二人の心温まるエピソードという形ではなく、単にニールを”仕込む”シーンのみという心憎さ。読者は自分で勝手にニールとグレアムの関係に思いを馳せるよう仕向けている。
全てニールの視点から過去形で描かれるというハードボイルドの手法を用いながらも、探偵小説というよりも青春小説のような瑞々しさを感じられるのも本書の特徴だと思う。

また、シリーズ中最もニールの少年っぽさと減らず口が光るのがこの『ストリート・キッズ』かもしれない。
いわずもがなだが、訳がいいのだ。
ウィンズロウがここまで日本で愛されたのは、翻訳者の東江さんによるところも大きいだろう。
翻訳ものにおいては、読みやすさ、馴染みやすさは人気と直結する。が、それだけではないのが東江訳なのである。
洒脱でユーモラス、時に感慨深い。ニール・ケアリーのシリーズもそうだし、それまでの過去形のスタイルを脱ぎ捨てた『ボビーZの気怠く優雅な人生 』以降のグルーヴィな作品群はもう東江訳以外考えられない。
『野蛮なやつら』 の、あのページをめくるそばからヒップホップが鳴り響くかのような文体はどうだろう。
一体全体誰がそれを引き継げるというの???

来週の読書会の宿題は、「翻訳で一番よかったと思うところ」なので、Kindleで英語版をDLして読み比べてみたりもした。
貧弱な語学力よりもテクノロジー頼ったのはいうまでもない。やれやれ…

その結果、特にいいなぁと思ったのは、ニールがエド・レヴァインに言い放った「たるんだおけつをぷるぷる振って待ってろ」P483という台詞である。
「おけつ」とか「ぷるぷる」とか、いかにもニールという感じで、小憎らしく可愛い。ここは「Oh,yeah, you bet your fat ass we do.」なので、東江さんのちょっとした演出なのだろう。

事件に関わった直後に同じくエドに向けて言い放った「ぼくの事件から、そのぶよぶよした手を引け」とも呼応させているのもなんとも小憎らしいと思う。

ニールの物語はシリーズ5作目で一応完結ということになっているが、そういえば、ウィンズロウは当時のロングインタビューで「そう遠くない将来、ニールは復活する」と言った気がする…。
うん、確かに言っていた!
スティーブン・ハンターのボブ・リー・スミスも復活したことだし、中年になったニールにも会ってみたい気がするな。


ということで、読書会の様子はまた来週!



ストリート・キッズ (創元推理文庫)
ドン ウィンズロウ (著), 東江 一紀 (翻訳)
東京創元社 (1993/11)

仏陀の鏡への道 (創元推理文庫)
ドン ウィンズロウ (著), 東江 一紀 (翻訳)
東京創元社 (1997/03)




高く孤独な道を行け (創元推理文庫)
ドン ウィンズロウ (著), 東江 一紀 (翻訳)
東京創元社 (1999/06)

ウォータースライドをのぼれ (創元推理文庫)
ドン ウィンズロウ (著), 東江 一紀 (翻訳)
東京創元社 (2005/7/28)





砂漠で溺れるわけにはいかない (創元推理文庫)

ドン ウィンズロウ (著), 東江 一紀 (翻訳)
東京創元社 (2006/08)







ボビーZの気怠く優雅な人生 (角川文庫)

ドン ウィンズロウ (著), 東江 一紀 (翻訳)
角川書店 (1999/05)






野蛮なやつら (角川文庫)
ドン ウィンズロウ (著), 東江 一紀 (翻訳)
角川書店(角川グループパブリッシング) (2012/2/25)

キング・オブ・クール (角川文庫)
ドン ウィンズロウ (著), 東江 一紀 (翻訳)
角川書店 (2013/8/24)


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category: ミステリ/エンタメ(海外)

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tag: 海外ミステリ  このミス  読書会 
2014/09/03 Wed. 21:25 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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