Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

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東江一紀さん追悼 名訳にひたる『ストリート・キッズ』読書会 

だいたいにおいて、私の楽しみなど、ナダルと読書とエアロビしかないのだ。我ながら、なんというささやかで眇たるものだろう。しかも、ナダルは最近一年のうち半分は怪我でお休みがデフォになってきてるし、その上、なんと、なんと、日曜の朝の一番お気に入りのエアロビのクラスが来月からなくなるという。
コ●ミのやつ…、一体どうしてくれよう?(怒)
日曜日の朝は何をすればいいのさ?と途方にくれていると、ジム友(75歳男性)が詩吟に誘ってくださった。えっ、しぎん???フェイギンでもペンギンでもなくて、しぎん?
まぁ、フェイギンでもペンギンでも大問題だが、しぎんはなぁ…。

思えば、翻訳家さんの役割もこのエアロビのインストによく似ている。エアロビはインストが命なのだ。本は言葉が命、翻訳ものは訳が命。物語それ自体の面白さももちろんあるが、それは多分に訳文にかかっているといってもいい。
それなのに、ああ、それなのに、それなのに。もうウィンズロウの新作を東江訳で読むことができない。もう三大趣味全てにおいてクライシスじゃないか。どうやって更年期を紛らわせればいいというのか?(困)
  20140913moz.jpg
と、私の危機のハナシはこれくらいにして、今回の読書会はウィンズロウ作品の大半を訳されていた東江一紀さんを追悼する会で、課題本は『ストリート・キッズ』である。
ゲストとして東江さんのお弟子さんだった遠藤さんと村上さんに来ていただいた。
ここでも一瞬、募集したのだが結局ほぼ常連さんで枠は埋まり、彼女たちを含めて参加者は17名。
過疎った前回の『ミレニアム』から比べると、ご覧のとおりの大賑わい。

まずは一人ずつ感想を述べてから、東江訳についてに入る。
多くの人が20年ぶりくらいの再読だったらしく、このニール・ケアリー・シリーズのファンも多かった。ニール、可愛いもんなぁ。グレアムとの疑似父子の関係もグっとくるものがある。
最後に上院議員の側近のロンバーディの首元にナイフをつきつけて脅すシーンに、溜飲が下りたという人も多いだろう。私は、ニールがいわゆる"いい学校”のペントハウスに住む女の子と付き合うようになり、自分の生い立ちを打ち明けたことで彼女と疎遠になってしまった時、グレアムがニールにいう台詞にホロリときた。「人を信じるものじゃないね、父さん」「信じられる人間もいるぞ。坊主、ここにな。」その言葉の通り、シリーズを通じて終始グレアムはニールにとって「父さん」であり続ける。
また、指摘されてはじめて気づいたのだが、実は"『ストリート・キッズ』においては、ハードボイルドでありながらも誰一人、人が死んでいない"。人が死にまくる『犬の力』よりも女性ファンが多いのは、これも理由のひとつなのかも。近親相姦、社会階層、薬物中毒と、悲惨且つ悲劇的要素の強いウェットな作品ながら、ウィンズロウ特有の洒脱さとナイーブな心を減らず口で隠すニールの魅力とがそれをほどよく中和しているのも人気の所以だろう。
舞台がロンドンということもあり、人によっては昔、暮らしていたことのある街へのノスタルジックな思いやなんかもあったようだ。70年代のロンドンを象徴するかのような”クラブ”シーンは印象に残った人が多かった。"死を呼ぶ精液”の演奏で、ニールが社会階層への反発心を発散させるあのシーンである。


あと、面白かったところでは、これを映像化すると仮定するとニール役は吉岡秀隆というご意見が。
ええっ?北の国ですか?
「父さん」しかあってないような気がするんですが…。

あとはトビー・マクガイアの若い頃とか、某イケメン俳優とかいう声もあった。
Haley Joel Osment
私はあの『シックス・センス』の子役の子なんてナイーブで可愛いかったし、ちょうどいい塩梅に成長しているかなと思ったのだが、彼はなんだかとんでもなことになっているじゃないの(驚)

なにがあったんだ?
これじゃエドじゃなくてニール本人が
「たるんだおけつがぷるぷる」
してしまうわ…。


東江さんの名訳部分については、意訳されている箇所が評価が高かったのだが、意外にもお弟子さんに教えるときは、原文にないものを自分で補ったりするのはやめるようにと指導していたのだそうだ。
でも、さすがにこういうところは、巧いですけどねぇ…。

P64
アリソンは親が溺愛すれば子が背を向け、親が見放せば子がすがりつく、という典型的な例だ。
Alison was the classic case of too much too soon and too little too late.

あと、状況に応じて言葉そのものを変えてしまっているところも。

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P146
「おじさんは、まるでフェイギンだね?」
「ペンギンだと?あいにく俺は寒いのは嫌いだ。」

“You’re faginesque, you know?”
“What do you mean? Ilike women.”


「いやらしい本か?」
「いやらしい描写が多いから、未成年には売ってくれないんだ。」

“ Is it Dirty? “
“Dirty enough, they won’t let me buy it.”


こういうところはストレートに訳してしまって、例えばフェイギンなどに注釈をつけるという人もいるかもしれない。でも、Kameさんによれば、注釈をつけなければ我々日本人によくわからないだろうという箇所は、どうせつけたってよくわからないのだから、この手のものは注釈で敢えて物語を中断しないほうがいいということだった。
よい翻訳者とはこのあたりの見極めがうまく、言葉のセンスが良い人のことをいうのだろうなぁ。

東江さんがお弟子さんに配っているという語彙集をチラリとみせていただいたのだが、これがすごいシロモノ。「人並みを目指しなさい部門」とか「じゃあ、割れてりゃいいっていうのか部門」とかww だめだわ。ニールじゃないけど、そんなはしたないこといえないわ(笑)
こういう中から『仏陀の鏡への道』"決まり金玉"などの名言はうまれたのだろうなぁと思ったのだった。

最後に。
東江さん、ありがとうございました。あなたの偉大なる業績とお弟子さんから慕われるお人柄とに深く敬意を表し、心より御冥福をお祈り申し上げます。



ストリート・キッズ (創元推理文庫)

ドン ウィンズロウ (著), 東江 一紀 (翻訳)
東京創元社 (1993/11)








ボビーZの気怠く優雅な人生 (角川文庫)

ドン ウィンズロウ (著), 東江 一紀 (翻訳)
角川書店 (1999/05)








犬の力 上 (角川文庫)
犬の力 下 (角川文庫)


ドン ウィンズロウ (著), 東江 一紀 (翻訳)
角川書店(角川グループパブリッシング) (2009/8/25)




フランキー・マシーンの冬 上 (角川文庫)
フランキー・マシーンの冬 下 (角川文庫)

ドン ウィンズロウ (著), 東江 一紀 (翻訳)
角川書店(角川グループパブリッシング) (2010/9/25)





野蛮なやつら (角川文庫)

ドン ウィンズロウ (著), 東江 一紀 (翻訳)
角川書店(角川グループパブリッシング) (2012/2/25)






キング・オブ・クール (角川文庫)

ドン ウィンズロウ (著), 東江 一紀 (翻訳)
角川書店 (2013/8/24)



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category: 読書会

thread: 推理小説・ミステリー - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  読書会  このミス  ウィンズロウ 
2014/09/14 Sun. 17:06 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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