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読書日記、ときどき食日記

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冷たい晩餐 / ヘルマン・コッホ 

ちょっと用があって留守にしていた。
この間読んだのは『冷たい晩餐』『窓際のスパイ』 である。
   2014111601.jpg
『冷たい晩餐』は、読書会を通じて版元のイースト・プレスさんからいただいた本。イースト・プレスさん、ありがとうございます!
オランダ発、映画化が決定しているイヤミスだという。実はもう一冊頂いたのだが、横浜読書会の岡本氏からは、「是非、こちらから読んでください!」と言われていたのでこれを旅の友にした。

ところで、今回は母親と出かけたのだが、もう、これが、これが…(汗)
どうしてあんなにしゃべりっぱなしで平気なのか??私は本を読んでいても全くお構いなし。
「ねぇ、お願いだから、ちょっとだけ本読ませてよ」と何回頼んだことか。全く無駄だったけど(笑)
ただでさえこの本は支離滅裂だというのに、余計に混乱してしまうじゃないの…。

そう。本書『冷たい晩餐』は支離滅裂なのだ。
イヤミスというよりも個人的には不条理ものという感じだった。

語り手は主人公のパウルなのだが、このパウルがいわゆる"信頼できない語り手”というヤツなのである。
元教師の彼には自慢の妻クレアがおり、クレアとの間にはまもなく16歳になる息子ミシェルがいる。
そして物語は、このパウル夫妻が彼の兄セルジュとその妻バベットとアムステルダムの高級レストランに食事に出かけるところから始まる。
一見、何不自由ない幸福な二組のカップルの食事のようだが、最初から不穏な空気に包まれている。
セルジュはオランダでは有名な政治家で、次期首相候補と目されている。スノッブでおしゃれな予約のとりにくい人気レストランでも、セルジュなら前日の電話で席は確保できるのだ。それをパウルが快く思っている気配はない。それどころか、「そのレストランに行きたくなかった」とさえ言っており、それを「地獄の入り口」に喩えている。
それもそのはずで、4人は好ましいとは言えない状況を話し合うために集ったのだ。
もったいぶった支配人が、押し付けがましく食前酒をすすめ4人のディナーはスタートする。前菜を終え、ようやくメインに差し掛かるころ、ようやく懸念事項が明らかにされる。それはパウル夫妻の息子ミシェルと、セルジュ夫妻の息子リックの犯した罪についてのことだった…。

alinea_most_expensive_restaurant_chicago.jpgもったいぶった支配人、一皿の量の少なさ、スノッブな高級レストランの滑稽さへの嘲笑についニヤリとしてしまう。ただ、今の東京のレストランは、客の目も舌も肥えているし、店側もそれがわかっているのでこういうことはあまりないように思うが。
少年に見られる暴力性、我が子をかばう親の心理、的外れな正義etc,etc……本書には多くのテーマが詰め込まれているが、最も印象に残ったのは、病んだ語り手である。いや、これ、パウルやばいでしょ。。。

訳者も言っているように「本書は頭で理路整然と考えながら読む本ではない」。本書を一言でいいあらわすなら、この言葉に尽きる。そして、こういう本は読み手によって解釈も受け止め方も異なる。
現在進行形のディナーの様子と、過去の出来事の回想シーンが交互に語られていくのだが、現在と過去が全く相容れない。辻褄があわないのだ。どちらが真実なのだろうか?それとも全てがパウルの妄想なのか?
セルジュの鼻から顎にかけてのつるつるした傷跡は、本当にクレアが白ワイングラスでつけたものなのか?パウルが熱いフライパンで殴った時の傷ではないのか?
そもそも過去に何度も手術を受け重病だった(はず?)のクレアは、本当に回復して現在に至っているのか?


疑問は膨らんでいくが、絶対的な答えなどあり得ないということもまた分かっている。何が本当で何が妄想なのかの区別はない。そこにあるのはパウルの世界だけ。そこの価値観はすべてはパウル個人のもので、それが我々から見てどうであれ関係ない。
パウルは独善的で驕慢な本当に厭な奴なのだが、読んでいくうちにそのパウルの世界に取り込まれていく。
精神科医は患者の妄想を聞いているうちに、時にその妄想に影響・汚染されることがあるという。本書を読んでいるうちに、これはそういう感覚に近いのかもしれないなぁと思った。

果たしてこの不思議な感覚を映像化できるのだろうか。
この手のものは、特にわかりやすさを旨とするハリウッド映画には向かないのじゃないかなと思うのだが…



冷たい晩餐


ヘルマン・コッホ (著), 羽田詩津子 (翻訳)
イースト・プレス (2014/9/7)





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category: ノワール・ホラー・サスペンス

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  映画化  イヤミス   
2014/11/16 Sun. 21:24 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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