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読書日記、ときどき食日記

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SF的な宇宙で安全に暮すっていうこと / チャールズ・ユウ 

夏くらいからの積読本。なんとしても今年のうちに読まなければ、と思っていた。
モタモタしているうちにとっくにKidleも出てるし・・・
薄いんですがね、だからこそ後回しになっていたというか、なんというか。
しかしどうでもいいけど、なぜポケミス仕様にしたのだぁ? 
お高くなっちゃうじゃないのよ。

image123.jpgと、それはさておき。
物語の主人公は「僕」こと”ユウ”。
この”SF的な宇宙”でタイムマシンの修理とカスタムサポートをしている。派遣元からの請負仕事だ。
ユウはたいてい、TM-31型娯楽型タイムマシンで時間のはざまをさまよっている。このタイムマシンの内部は電話ボックスくらいの広さだ。そこで、エドという犬とタミーという女の子と暮らしている。
エドは非実在犬だし、タミーはコンピューターのUIの人格スキンだが、二人は寂しがりやのユウにはかけがえのない存在となっている。
ユウは孤独だ。家族は両親だけ。母親はSF版の介護支援施設で、同じ1時間を何度も繰り返して過ごしている。何度でも繰り返し日曜の夕食どきを繰り返すのだ。一方、父親は失踪中でどの宇宙で何をしているのかも不明だ。ユウの父はガレージでタイムマシンを開発していた。もっといえば、不遇な在野研究者だった。
ある時、ユウは自分のマシンの時制オペレータが壊れていることに気づく。いつかの時にいることなく、人生を遅れるということを乱用しすぎたのだ。タイムマシンは一旦宇宙の中心に着陸し、ユウは"現在”に滑り込む。一晩街で過ごし寝過ごしてしまったユウは、とんでもない事態に陥ってしまう。
自分自身に遭遇してしまったのだ。SF的な宇宙ではそれは最悪のことだった。動転したユウは会社支給のパラドックス中和試作銃で"相手”を撃ってしまう。
全ては一瞬の出来事だったが、未来のユウは今のユウに向かってこう言い残す。
「全ては本のなかにある。本が鍵だ」と…。

Charles Yu1著者のチャールズ・ユウは、この日本語訳を担当した円城さん本人なんじゃなの?!とも思ってしまうのだが、一応、別の人のようだ。ユウは台湾系米国人で弁護士らしいし。
でもリチャード・パワーズは好きなところといい、やっぱりなんだか似ている。
そして難解だ。人によって理解の仕方も解釈のし方も楽しみ方も異なるのだろう。

また、果たして"SFなのか、文学なのか、はたまた哲学なのか"と考えてしまう。
以前、ブライアン・グリーンの多元宇宙の本を読んだ際、最先端物理は限りなく哲学に近いことを知った。(但し、私はグリーンが、噛み砕いて説明しようとしたことの半分も理解できていないと思うのだが…。超ヒモ理論がそんなに容易くわかるのなら、私はここにはいませんってば 笑)
本書は、この最先端物理と哲学の関係を連想させる。だって最初はやれタイムマシンがどうのといっておきながら、読みすすめていくうちに、知らず精神世界に潜っていくのだから。

本書の扉に捧げられているのは、偉大なる哲学者、物理学者、劇作家の言葉。彼らは皆一様に同じようなことを述べている。そうなのだ。これは、哲学であり、SFであり、エンタメである。

上記の言葉で特にお気に入りなのは、アーサー・ミラーの
「わたしたちであるあらゆるものは、いついかなる瞬間にも、わたしたちの裡に息づいている」
という言葉だ。
話は多元宇宙に戻るが、宇宙論には、そもそも多元宇宙はどこにあるのかという問題がある。我々の暮す地球のある宇宙から、我々は物理的に出ることはできない。その先に何がひろがっているかは、全て予測であり検証不可能なのだ。だから、様々な宇宙論が存在する。
中には、多元宇宙とは、自分の裡にあり、ひいては自分の脳が生み出すものであるというものもある。
自分自身のなかには、色々な物語がある。その物語ひとつひとつが別の宇宙だ。私たちは絶え間なく色々なことを考え、過去を何度も思い出すこともあるし、思い出しているうちに、その記憶は徐々に上書きされ実際に過去に起こった事実とは異なるものになっていることもある。その時間軸は、現実の世界との関わりを持っていない。また、まだ起こっていない未来を想像することもできる。
その意味において、私たちの頭の中は、「SF的な宇宙」であるといっていい。
自分の「本」の執筆者は自分であり、本書でいえば、本書の物語も本書自体もチャールズ・ユウその人である。

あ〜〜〜〜〜書いててなんだかわけがわからなくなってきたぞ…。
とどのつまりは、そういう本だってことである。

私もタイムマシンで過去に戻りたいわ。自分の脳のなかの過去じゃなく…。


SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

チャールズ・ユウ (著), 円城塔 (翻訳)
早川書房 (2014/6/6)


Kidle版はこちら→
『SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと』




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category: SF ファンタジー

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: SF  宇宙  宇宙論  円城塔  ハヤカワ 
2014/12/08 Mon. 19:29 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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