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読書日記、ときどき食日記

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デビルズ・ピーク / デオン・マイヤー 

皆さま、どのような年の瀬をお過ごしでしょうか?
私は、大納会も、美容院も、大掃除も、買い物も珍しく全て済ませたので、読書スピードもアップ。
捗る。捗る。

  20141231015.jpg
今年最後の本は、横浜読書会を通じていただいた『デビルズ・ピーク』である。

うぉ〜〜〜〜デオン・マイヤーですよ!

集英社クリエイティブさま、有り難うございます!
600ページを超えるボリュームなので、さすがに一日で読むのは難しいかなと思ってたら、なんと読めてしまった。

deonmayer.jpgデオン・マイヤーは世界でも指折りのミステリ作家だと言われている。
見た目はちょっとワイルドなおっちゃん。

少し前までは、「南アフリカのコナリー」とも言われていたが、
はっきり言って最近冴えない御本家よりも断然上(だと思う)

本書もマルティン・ベック賞を受賞していたりと評価も高い。

ただ、日本ではいささかツイてなくて、日本初登場の『流血のサファリ』 は、
版元が倒産の憂き目に…。その続編ともいえるレマーシリーズの『追跡者たち』はハヤカワから刊行されたものの、なぜかデオン・メイヤーに変更されてしまう…。
しかも、前者はおそらくは倒産間際という版元の社内状況のために、後者はハヤカワであるがために、翻訳のクオリティがあまりよろしくない。
かねてから、もったいないなぁ!と思っていた。

なので、集英社文庫から出てくれてとても嬉しい!超ウレシイ!
しかもデオン・マイヤーに戻ってるぅ。
デオン・マイヤーは警察小説やハードボイルドにウルサイ人にこそ読んでもらいたい。
う〜〜〜ん、いつか機会があったら読書会もやりたいなぁ…。

SouthAfricaWesternCape.jpg舞台は灼熱の南アフリカ、西ケープ州。物語はマイヤーお得意の三人の人間の群像劇から始まる。
アルコール依存症の警部補ベニー・グリーセル。
愛した女の忘れ形見の息子を強盗に殺されたコーサ族の男トベラ・ムパイフェリ。
牧師に自分の罪を告白する娼婦クリスティーナ。
彼らは三人三様に苦しみを抱えている。

ベニーは腕の立つ刑事だが、南アの犯罪者と警察官がおかれた現状に打ちのめされ、酒に溺れている。南アにはたかが携帯や20ランドにも満たない指輪欲しさに老女を殴り殺すような輩が掃いて捨てるほどいる。正しいことを信じて日々、必死に働けば働くほど期待を裏切られるのだ。しかも黒人優遇策の影響もあって、白人のベニーは40歳だというのに警部補どまり。飲酒癖はエスカレートし、「6ヶ月かけてお酒か家族かを選んで」と、ついに妻から最終宣告を突きつけられる。家を追い出されてしまう。

トベラもグリーセル同様「物事は正せる」ということを信じていたが、裏切られ失望していた。もはや、南アの司法制度を信じることはできなかった。何の罪もない息子が無惨に殺されたというのに、その裁判ではこともあろうかトベラの経歴にばかり焦点が当てられた。トベラはロシアや旧東ドイツで専門訓練を受けた"民族の槍という組織の兵士だったからだ。その上愚かな警察は容疑者の逃亡を許してしまったのだ。こんな馬鹿げたことを受け入れるわけにはいかなかった。あまつさえ、死刑制度は廃止されたというのに、裁かれることもなくのうのうと暮らし、また犯罪に手を染める者もいる。犠牲者を見捨てる仕組みの国では、誰かが断固たる態度をとらなくてはいけないのではないか?誰かが「もうここまでだ」と言わなければならないのではないか?
息子を殺した容疑者を追うなかで、トベラは「赤ん坊をレイプした男」に出くわす。アフリカではエイズは清らかで汚れの亡い赤ん坊と交わることでエイズが治ると信じている者があるのだ。彼の中で「やるべきこと」が繋がっていった。それが"アルテミス"と呼ばれる殺人者誕生の瞬間だった…。

他方、娼婦のクリスティーナは、牧師に「自分がなぜ娼婦になったのか」を話はじめていた。そして、「どのような罪を犯したのか」を…。

 Rand 仕事に疲れきり、家庭が崩壊した刑事というのは、もはや警察小説定番の主人公といっていい。疲れた身体を引きずるように陰惨な事件と対峙し、どこかタガのはずれた犯人を追いつめるというのは、既にパターンにもなっている。これを踏襲すればそこそこの警察小説に仕上がるし、ちょっと気のきいた社会問題に絡めておけば傑作になることだってある。とても便利なパターンではある。

だが、デオン・マイヤーにはそんなものは必要はない。本書の主人公ベニー・グリーセルもよくいるタイプの刑事には違いないのだが、マイヤーの手にかかれば、やはりひと味もふた味も違うものに仕上がる。

訳者も言及しているが、三人の物語が一つに収斂していく様は悪魔がもっている三つ又の槍のようでもあり、タイトルの「Devil」にも通じている。そして、ベニー、グリーセル、クリスティーナの三人は、いずれもそれぞれの理由で神を信じられなくなっている。
刑事であるベニーとアルテミスたるトベラの繋がりは、大方の予想通り。犯人は最初から明かされているわけだが、これにクリスティーナがどう絡んでいくのかは読みどころの一つだろう。これは読んでのお楽しみ。
また、アルテミスの武器が槍(アセガイ)であるというのも象徴的だ。象徴的ではあるが、しかし演出の行き過ぎ感がないというのもいいと思う。
原題も同じく『Devil's Peak』だが、読み様によっては『Devil Speak』ともとることができると訳者は指摘する。彼らにとっての悪魔とは何か、神とは何かがテーマになっているともいえる。そしてただ単に悲惨で救いのない物語に終わらせないのが、デオン・マイヤーの素晴らしいところだと思う。




デビルズ・ピーク (集英社文庫)


デオン マイヤー (著), 大久保 寛 (翻訳)
集英社 (2014/11/20)





ということで、
今年も一年お付き合いいただき、有り難うございました。
来年もどうぞよろしくお願いします。
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category: クライム・警察・探偵・リーガル

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  警察小説  南アフリカ  社会派 
2014/12/31 Wed. 01:37 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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