Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

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黒い瞳のブロンド / ベンジャミン・ブラック 

スピンオフ読書会も迫っているが、”ハードボイルドミニ読書会”もその次の日なのである。
メールをくださった方、遠慮なさらず是非是非きてください〜〜〜〜!!!

なので、『長いお別れ』『黒い瞳のブロンド』を一気読みの怒濤の読書。『レイモンド・チャンドラー読本』も併せて読みたいと思って手元にもあるのだが、これは間に合わないかも。
明日は雪というのに一日出かけなきゃならないのよ…(汗)

なぜこの二冊を続けざまに読んだのかといえば、ご存知のように、ベンジャミン・ブラックによる『黒い瞳のブロンド』は『長いお別れ』の続編に当たる設定であるからだ。
ベンジャミン・ブラックはアイルランド系の作家ジョン・バンヴィルの別名である。『海に帰る日』でブッカー賞も受賞している大御所である。
John Banvilleさて、物語はマーロウの元に一人の美しい女が尋ねてくるところから始まる。ブロンドの髪に瞳は黒、上背があり記憶に残る口元をしていた。黒い瞳の金髪はそう頻繁にお目にかかれる組み合わせではない。その女、クレア・キャヴェンディッシュは、マーロウに、ある男を探してほしいと依頼する。ニコ・ピーターソンはクレアのかつての愛人で、二ヶ月前に彼女の前から突如として姿を消したというのだった。
クレアは著名な香水会社の一族で、当然もっとマシなコネを持っているはずだった。そんな彼女がなぜ消息をたった自分の愛人探しのためにマーロウのもとにやってきたのか。
腑に落ちなかったが、マーロウはニコ・ピーターソンの調査に乗り出す。他のことを心の外に押しやるのが簡単だが、あの黒い瞳の金髪だけは論外だったのだ。
マーロウは”パスカルの賭け”をしてみることにする。すなわち「得るときは全てを得、失うときは何も失わない」として信じる方に賭けたのだ…

Black-Eyed-Blonde1-185x121.pngまぁ、この『黒い瞳のブロンド』というタイトルがいいじゃない。聞けばなんでも、チャンドラーの「創作ノート」にあった題名らしい。チャンドラー自身があたためていた題名のリストにあったものだという。
The Black-eyed Blondeという英語は色々な捉え方ができる。本書『黒い瞳のブロンド』の訳者小鷹氏のあとがきによれば、「目に黒アザのある女」という仮題だったそうだ。それだとすごく違う内容になりそうな…。
それとは別に、私たちにはというか、私には「ブロンドには青い目」という固定概念があり、今度のマーロウの"夢の女”は、もしかして根元が黒いのだろうか?と思っていた。でも、クレアは本物の黒い瞳の金髪ということになっている。ジョン・バンヴィル自身もアイルランド系であるが、アイルランド系にはそういう色素構成の人が実際にいるのだろうか。

long good bye cat物語自体は、完全に「長いお別れ」と繋がっており、登場人物も重複があるので、未読ならばそちらを先に読んでからのほうが絶対よいと思う。
イギリスびいきだったチャンドラーを意識したシェイクスピアの引用や、比喩も楽しい。チャンドラーに特有のひねった言い回しも雰囲気が楽しめる。一歩間違うとキザで嫌みになる寸前のところでとどまり、それが持ち味になっているチャンドラーのスタイル。
それに、なんと本書にはネコが登場するのだ。ネコといえば映画の冒頭シーンである。マーロウがネコに催促され夜中にキャットフードを買いにいくあのシーン。『ロング・グッドバイ』の映画は特にあの結末に賛否あるだろうが、かのシーンは好きな人が多いのではないだろうか?ちなみに私は映画のラストシーンは嫌いじゃない。
映画に登場していたのはトラネコだったが、チャンドラー自身が飼っていたのは黒いシャムネコで、本書に登場するのもさすがバンヴィルだけあってシャムなのである。
訳者はさながら本書は「フィリップ・マーロウの災厄」であるといっているが、私は結末まで読んで、バンヴィルはこれがやりたかったのかもしれないなと思った。勿論、本書の主役はマーロウとクレアのことだ。しかし、「長いお別れ」でマーロウ自身に決着がついていたことは、実は私のような読者にとっては充分ではなかったのかもとラストシーンで思ったのだ。

春樹訳の『ロング・グッドバイ』も読もうと思ったのだが、実は冒頭の「ロールズ・ロイス」の段階でもう駄目だった…。春樹自体は好きな作家なのだが。
この『黒い瞳のブロンド』を訳した小鷹氏も、大ヒットした村上春樹訳の『ロング・グッドバイ』にあやかり、春樹訳を模したと聞く。それほど春樹臭は感じなかったが、あわせて読むなら春樹の『ロング・グッドバイ』のほうがよかったのもしれない。
だが、やっぱりチャンドラーといえば私にとっては清水訳なのだ。原文を読めば、実は清水訳とは趣が異なるという人もいるが、原文を読んだりしない私などにとってそんなことは関係ないのである。



黒い瞳のブロンド (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

ベンジャミン ブラック (著), 小鷹 信光 (翻訳)
早川書房 (2014/10/10)

Kindle版はこちら→ 黒い瞳のブロンド







長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1))

レイモンド・チャンドラー (著), 清水 俊二 (翻訳)
早川書房 (1976/04)

Kindle版はこちら→ 長いお別れ








ロング・グッドバイ (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-11)

レイモンド・チャンドラー (著), 村上 春樹 (翻訳)
早川書房 (2010/9/9)





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category: スパイ・冒険・ハードボイルド

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  早川書房  読書会   
2015/02/04 Wed. 20:17 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

Re: この原油安のさなかになぜこうなる

あ、naoさんスカイマークホルダーだったのですか?!
それは、それは…なんと申し上げてよいやら…

私も一番多く持っているのは実は商社株で、この原油安でもう!もう!もう!といったところですわ
樽に漬込んで地下深く埋めてみないようにしている状態。
これ、いつまで続くんでしょうかね…。


さて、小鷹氏は、チャンドラーの短編も訳されてましたよね。
私はやっぱり少々感傷的にすぎるくらいの清水訳が好きなのですが、「黒い瞳のブロンド」も読みやすかったです。
春樹さんは・・・なにかやっぱり違う気がしてしまうんですよね。

あと、やっぱりバンヴィルは冒頭から視覚的だと思いました。今の時代の作家らしく、意図するとせざるに関係なく映像的なんですかね。
例えば、チャンドラーならば女性がどういう洋服を着ていたとかいった描写はないだろうなと…。彼はどちらかというと、女がどんなふうに着飾っているかようりも、どんな造作でどんな体つきかのほうに主眼を置いている(笑)


映画版の「ロング・グッドバイ」naoさんもお好きでしたか。
エリオット・グルードのマーロウにも、あのラストにも賛否ありますが、私もあれはあれでいいのじゃないかと『思ってます。

『チャンドラー読本』は、たぶん土曜までには無理なので諦めましたわ・・・。

では、ではまた!

Spenth@ #- | URL | 2015/02/05 Thu. 21:30 * edit *

この原油安のさなかになぜこうなる

上場廃止株を掴んでもうほとんど社会(人生)から「ロング・グッドバイ」状態の私・・Spenthとは「さらば愛しき女よ」・・冗談。

小鷹氏の訳は自分は好きですな。ハメットの長篇はこのヒトのもので堪能しました。この渋面のおっちゃんの著作「黒い瞳のブロンド」(ポケミス)もおもしろそう。

映画『ロング』ご覧になられましたか。
自分は冒頭の主人公が夜キャットフードを買いに行く場面のけだるい雰囲気、
深夜営業をする明るい店の雰囲気の場面が好きでした(撮影も秀逸)。
今はコンビニとか様々夜間営業の店ありますが、
70代当時はそうした夜の街の光景はめずらしく、
新鮮かつ魅力的(印象的)でありました。
映画は時代が当時(現代)に置きかわり、エリオット・グールドがマーロウなワケで、
もう原作とは別物との認識。逆に重ね合わせる方が無茶(無理)なので映画のラストもあれはあれでよかったと自分も思います。

また原作についてもSpenthさん同様、自分も清水訳が基本で、村上訳はユニークな変奏と思っております。
『レイモンド・チャンドラー読本』・・持っているけれど部分的にしか読んでないなぁ。
ではまた!

(「スカイマーク」の馬鹿!)

nao #6gL8X1vM | URL | 2015/02/05 Thu. 20:34 * edit *

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