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読書日記、ときどき食日記

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ノア・P・シングルトンの告白 / エリザベス・L シルヴァー 

今日の横浜は雨。横浜駅地下街などを歩いていても湿度が高くて少しムシムシ。そんななか、袴姿の女の子も多く見かけた。そういえば浅田真央ちゃんも今日晴れて中京大学を卒業したのだとか。おめでとうございます!

Silver_Elizabeth.jpg
それはそうと、『ノア・P・シングルトンの告白 』。う〜む…悪くはないけども、私はAmaの人みたいに諸手を挙げて5つ星ってわけではないな。
物語のスタートは上々で面白そう!と思ったのだが、少々期待が過ぎてしまったのかも…。

主人公は”死刑囚”のノア・P・シングルトン。10年前に罪を犯し、現在はペンシルヴァニア女子刑務所の独房で刑の執行を待っている。彼女は「わたしがやったのはまちがいない」と罪を認めており、有罪判決を受けた後も一度も意義を唱えなかった。
今、彼女は35歳だ。そしてXデーはあと半年というほどに近づいている。全てが始まったのはそんな時だった。オリヴァー・スタンステッドという弁護士がノアの元に訪ねてきたのがきっかけだった。せいぜい25歳がいいとこで英国訛りのあるオリヴァーは、自分はフィラデルフィアの弁護士だと名乗る。彼は、ノアが殺したセアラの母親マーリーン・ディクソンが立ち上げた、”死なせない母親の会ーMAD"からやってきたと言い、彼らはノアを恩赦の受けるべき有力な候補者だと信じているという。
おかしな話だった。マーリーンはノアの処刑をあんなに見たがっていたのに。彼女はノアの量刑審問で「死刑にふさわしい人間がいたとしたら、それはノア・P・シングルトンをおいて他にはない」と言ってのけたのだから。
しかし、マーリーンは心境の変化があったといい、ノアのことを理解したいのだという。果たしてマーリーンにはどんな意図があるのか。そして、ノアは本当に罪を犯しているのか?
物語はノアの過去への追想と、マーリーンが亡き娘にしたためる手紙の形をとって語られていく。
現在と過去を行き来しながら、ゆっくりとノアの物語が浮かび上がる。

IMG_1383.jpgなぜ?なぜ?どんな秘密が隠されている?そう思いつつ読み進めていったのだが、私にとってノアは最後まで掴みどころのない人だった。全てが明らかになっても、どういう人物なのかがよくわからなかったのだ。感情移入して読むことができなかったせいか、実は途中でダレてしまった。
強いていうならば、ノアはいわゆる「気の毒な人」だ。とことんツイてないし、もしかして善人すぎるのかもしれない。
彼女には物心ついた時から父親がおらず、美人だが奔放に過ぎる母親に半ば放置に近い形で育てられた。幼い頃のノアの記憶にあるのは、赤ん坊の時に母親から階段の一番上から落されたということ。いうまでもなく母親の過失によるものだが、救急に電話をした際「強盗に押し入られ、それで娘が怪我をした」と嘘をつく。ノアの母親は女優志望だった。そしてその嘘の辻褄をあわせるために、ベビーベッドの柵を破壊し部屋中を滅茶苦茶にして被害状況を作り出した。この時のノアは生後まもなくのはずで、この話にどれだけ信憑性があるかは疑問ではあるものの、このことは後々大人になったノアに影響を残す。
決して芳しいとは言えない環境ながらも、彼女は優等卒業生(二番目に優秀な成績)として高校を卒業し、奨学金で名門ペンシルヴァニア大学に進んでもいる。だが、ある出来事がきっかけで、たったの数ヶ月で大学を去る。その後は高校の代理教師として働き、長年顔も知らなかった父親と再会を果たすのだが…

物語は、時系列で語られていくのではなく、謎を残しつつも静かにゆっくりと語られていく。それが少しまどろっこしい。はっきりとしているのは、ノア自身が死刑を免れたいとは全く思っていないということだけだ。
ノアも秘密を抱えているのだが、被害者の母親マーリーン自身も、また自らが決して認めたくないに違いない秘密を抱えていたりする。私は、この秘密にインパクトある意外性を期待したのだが、想定の範囲内だった。
『死刑囚 』のようにダイレクトに死刑の可否を問うているわけでもなければ、冤罪の悲劇を訴えているわけでも人々の良心に訴えているわけでもない。というのも、私自身はこの作品に社会的メッセージを嗅ぎ取ることはできなかった。著者もそれを意図していないのではないかという気がするな…。
思うに、言葉にできないような、人間の心に巣くっているもっと繊細でもっと複雑なものを描きたかったのではないだろうか。それは、色々なエッセンスを含んでいるため、受取り手によって感じ方が異なるだろう。幼少時の体験がいかに人間に影響を及ばすのかという恐ろしさ、そして殉教者を連想させるかのような彼女の生き方、彼女決着のつけ方を思い、マーリンの今後の予想してしまう。そして、それらは弱く緩慢に、しかし執拗にじわじわっと迫ってくる。
この曖昧さと心地の悪さは、駄目な人も多いだろうなぁとも思う。
しかし、このなんとも言えない湿り気を帯びた内向性は味わいがあるし、テニスブレスレットが継承されていくというエンディングは、なかなか巧いなと思った。




ノア・P・シングルトンの告白 (ハヤカワ・ミステリ文庫)


エリザベス・L.・シルヴァー (著), 宇佐川 晶子 (翻訳)
早川書房 (2015/2/5)

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category: 歴史・大河・ドラマ

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  早川書房  映画化 
2015/03/19 Thu. 17:55 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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