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読書日記、ときどき食日記

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風の丘 / カルミネ・アバーテ 

この大雨のなか、妹とランチいたしてきたのですがね、ここ最近寒の戻りなのか、さっむ〜い。
さりとて暦はもう4月も半ばなので冬ものを着るわけにはいかず…
四十路のくせにやせ我慢してみる。
ファッションは楽じゃないのだわ… (←決してお洒落なのではない。単に冬っぽい者を全て片付ただけ。)

carmine abateなんだか、モディアノの直後にミステリ読む気もしなく、おフランスの次はイタリアン。
それにしてもクレストブックは高くない?ソフトカバーなのに、これ…。

さて、本書はファッションじゃなくてファシズム政権が吹き荒らる時代の南部カラブリアの田舎が舞台の作品である。
歴史大河小説といったところだろうか。イタリアの権威ある文学賞カンピエッロ賞を受賞している。
「嵐が丘読んでるの?!」と聞いてきた妹よ。装丁からして雰囲気違うだろ…
米英フランスに比べてあまりメジャーとはいえないイタリア文学だけど、リアリスティックで素直、訳の良さも手伝って非常に読みやすい。内容的にも日本人好みなのじゃないかと思う。

物語は語り手である"僕"が父の暮すイタリア最南端のロッサルコの丘に戻ってくるところから始まる。80歳を前に父ミケランジェロは村から少し離れたところにあるロッサルコの丘に引っ越そうとしていた。村の者たちは気でもふれたのかと噂したが、父にとっての我が家はロッサルコの丘に他ならなかったのだ。この丘で生を受けたミケランジェロはここで自分の人生の幕引きをしようとしていた。そして、これを機に"僕"に家族の物語を語ろうとしていた。
sulla aspromonte良きにつけ悪しきにつけ、このロッサルコの丘と深く結びついた一族の物語を。それは必ずしも良い話ばかりではなさそうだった。父は話をはじめるにあたって、何らかの告白をほのめかしていたし、暗にその秘密の共有を求めてもいた。自分が亡くなりこの家族の物語が消えてしまう前に、僕に真実を伝え、僕がまた自分の息子へと語り継いで欲しいと願っていた。
心の準備がでいない僕を尻目に、父は嬉々として話始める。
語れば語るほどに、父の表情は晴れやかになっていく。曾祖父アルベルトのこと、息子たちを次々と奪い去った戦争のこと、アルクーリ家でもとりわけ頑固で、反骨精神旺盛だった父の父、祖父アルトゥーロのこと。横暴な大地主の嫌がらせにもファシズムの嵐にも屈しなかったこと。そして、突然始まった丘の発掘調査とそこに埋められている秘密のことを…。
まるで抱えきれなくなった重荷をおろしたかのようだった。

家族の絆ももちろんだけど、もうね、恵みをもたらしてくれる丘の美しさが良いのですよ。
そもそもロッサルコの丘は決して元来肥沃というわけではない。風が吹きすさぶオリーブの古木があるのみの岩だらけの荒れた土地だが、それをアルクーリ家の男だちが手を入れて根気強く飼いならし、小麦を育て、果物の木を植えてきた。
海から吹いてくる風が、エニシダや庭常の花、オレガノや甘草と入り交じって香る様子は、今にも漂ってきそうだった。春になると咲き乱れる赤いスッラの絨毯。その上で生を受け、ロッサルコの丘に再び還ろうとしている父ミケランジェロの語る清高な物語に魅せられる。
思うに、土地と深く結びついた生活というのは、我々農耕民族のDNAを刺激するのかもしれない。なんだかわからないが高尚に感じられるのだ。
土地と家族の結びつきは、世代を追うごとに希薄になっていき、本書の"僕”も今は都会に暮らしている。
だが、本当に土地から逃れることなどできないのだと著者アバーテは言う。「土地は嫉妬深い愛人さながらに絶対的な忠誠を求めてきて、見捨てようものなら、いつの日か必ず人を土地に縛り付ける秘めた物語を持ち出し脅す」というのだ。その言葉の通り、"僕”はまさに今丘に求められている。そして、その背後にはいわずもがな秘密を共有している曾祖父母や祖父母がいるのだ。

このアルクーリ一族の秘密に関しては…こういう小説の常として全くミステリ読み向けではない。読書会では例によって酷評されるんだろうなぁ。アルクーリ家の人々も、その強さもさることながらとにかく善良なので。まぁ、実際、秘密というものは得てしてそういうものかもしれないが。

人間らしく生きるということはどういうことなのかを教えてくれる一冊。

ああ、イタリア行きたい・・・!
しかし、それには日経2万が射程距離の中、絶賛低迷中で地球の裏まで達しそうなアレが持ち直さないとな(汗)





風の丘 (新潮クレスト・ブックス)

カルミネ アバーテ (著), 関口 英子 (翻訳)
新潮社 (2015/1/30)





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category: 文芸

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tag: イタリア  文学賞   
2015/04/13 Mon. 21:30 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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