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読書日記、ときどき食日記

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悪意の波紋 / エルヴェ コメール  

遅ればせながら噂の"大塚家具大感謝祭"に行ってきた。母が"久美子セット"が欲しい(自分の分だけ!)というので一緒に見にいったのだが、そんなのもうあるわけもない。
しかし、久美子効果は抜群だ。数年前行ったときは、ひっそり静まり返っていたショールームにも活気がある。それもこれも、会長の私物扱いが過ぎたのと、株主総会でママンがシャシャリ出てとどめを刺したせいか。
冷やかしで入れるくらいのお店のほうが、絶対いいと思う。個人的にはインテリア雑貨も、イケアやニトリとは違うイイモノ路線で展開してくれたら嬉しいな。

ripple.jpgさて、大塚家具ではないが、些細なことがきっかけで、その後の運命が大きく変わってしまうこともある。本書はそういう「因果」というか「バタフライ効果」について考えさせられるお話。
そして、うわぁ〜!のどんでん返しのおまけ付き。
横浜読書会のダイスケさんにお借りした本なのだが、さすがのチョイス!
昨年の『その女アレックス 』に続き、フレンチ来てるよなぁ!
コレ、私の今年のベスト10に入ると思うわ。


物語は二人の男の群像劇のような形で始まる。
引退した元ギャングのジャックは40年前、高校時代の仲間5人でマイアミのギャング、コルターノから、まんまと100万ドル奪うことに成功した。妄想癖のある凶暴なロマのパコ、毛皮職人の息子で派手好みなオスカル、家業を継いだところで苦労するしかないアルベール、車を盗むことにかけては誰にも負けないジャックの弟ジャン。時は1971年、シナトラの引退コンサートの日のことだ。
大金を手にフランスに帰国した彼らだが、金を奪った相手がコルターノと知り、以降復讐に怯えることになってしまう。何がきっかけになるかわからない。彼らは互いに距離をおいて暮らすことになった。強奪劇で運命は変わったのだ。
時は流れ、郊外の家で静かに暮らしていたジャックだったが、ある日の朝、彼の玄関に不吉なものが届く。それは赤鉛筆で丸がつけられている5人の古い写真だった。
他方、イヴァン青年は、失恋で傷心状態。しかし、元カノのガエルはTVのリアリティ番組のチャレンジャーに。視聴者の人気投票で毎週生放送中に出場者が脱落していくというヤツだ。腰をふって歩く彼女を見るのさえ辛いのに、彼女は番組内で生き残るため、馬鹿な元カレからのラブレターを面白おかしく吹聴する。その馬鹿な元カレとは、当然イヴァンのことだ。ガエルはラブレターの束は実家にあるから、そのうち送ってもらって皆で楽しもうと言い出す始末。イヴァンは卒倒しそうになる。ラブレターを取り返そうと、ブルターニュの彼女の実家に向かうのだが…

hervé-commère二人の物語はそれぞれ一人称で交互に語られていく。
当初、その二つの物語には全く関連がなく、群像劇かのように見えるのだが、豈図らんや。
二つの物語はまさに”偶然によって"交差することになる。
そして、それを機にイヴァンの運命は大きく翻弄されていく。しかし、その"偶然”には黒幕がいたのだ…!

一件落着したと思われることの真相が明らかになることで、さらなる驚きがもたらされる様は圧巻。"偶然”というものを扱ったこれまでにないミステリである。解説者も指摘するように"偶然”とは神の領域だ。それを材料にミステリを組み立てるなど、もうこの作者ただ者じゃない。

「バタフライ効果」という言葉があるが、これは、気象学者のエドワード・ローレンツが1972年にアメリカ科学振興協会で行った講演のタイトル「予測可能性:ブラジルで1匹の蝶がはばたくとテキサスで竜巻が起こるか?」に由来しているという。その意味するところは力学系の状態にわずかな変化を与えると、そのわずかな変化が無かった場合とはその後の系の状態が大きく異なってしまうという現象である。

この言葉が示す通り、全ての"偶然”には原因という黒幕が存在する。イヴァンの不幸な出来事にも黒幕がおり、その謎を解くことが本書の見せ場にもなっているのだが、一方で、黒幕の一方的な”悪意”だけでイヴァンの"結果"はもたらされたわけでもないのがミソ。黒幕は必ずしも「犯人」ではないのだ。実はそれほどの影響力はなかったりもする。そこがこの本の不思議なところで、ちょっと意外なのだが仏教的なのだ。
釈迦は、直接的要因(因)と間接的要因(縁)の両方がそろった(因縁和合)ときに結果はもたらされると説き、現実はすべての事象が相依相関して成立していると言っているが、それを思い出させる。


naoさん、これ面白いですよ!



悪意の波紋 (集英社文庫)

エルヴェ コメール (著), 山口 羊子 (翻訳)
集英社 (2015/3/20)







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category: ミステリ/エンタメ(海外)

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  フレンチミステリ   
2015/04/23 Thu. 19:01 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

Re: タイトルなし

naoさん、おはようござます!

>しかしこの『悪意の波紋』のタイトルは大丈夫か・・ちと売れそうにない(失礼)
本当に!平凡ですよね。
内容はいいいと思うんですけど、ちょっとタイトルがもったいないパターン。
帯のキャッチもこれまたイマイチなんですよ。


そうそう、件の大塚家具の売り場で、上品そうな老夫婦が家具の相談をしており、
そのとき聞こえてきた会話が、「100万しかかわらないんだったらこっちのほうが…」
100万しかって…100万しかって…
フリーズしてしまいましたよ(笑)
庶民にも買えるものも一応置いてはあるけど、そういう客層を想定しているお店なんでしょうね。

日経が終値でも2万超えのなか、じっと冴えないポートフォリオを眺める私なのでした…。




Spenth@ #- | URL | 2015/04/24 Fri. 07:46 * edit *

大塚家具のお家騒動・・ありましたなぁ。
しかしそれをマクラに傑作ミステリ紹介へ・・お見事です。

こういう情報(ベスト10クラス!)待ってました!
ことしもフレンチミステリが最優秀獲るのかな!?
バタフライエフェクト・ミステリ
(あるいはドミノ・ミステリ、あるいは映画『マグノリア』的ミステリ)
・・ぜひ読みたい!
自分の好みの作品であると思われます。

しかしこの『悪意の波紋』のタイトルは大丈夫か・・ちと売れそうにない(失礼)・・インパクトに欠ける(重ねて失礼)と思うのは自分だけか?

あと来週(5.1)カズオ・イシグロ新作刊行だそうです(新作刊行=文学的事件)。
いつも良書情報に感謝・感謝・感謝!・・ではまた!

nao #6gL8X1vM | URL | 2015/04/23 Thu. 23:55 * edit *

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