Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

03« 2017 / 04 »05
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.

世界が終わってしまったあとの世界で / ニック・ハーカウェイ 

テレビをつければ橋下さんの政界引退の話題ばかり。
大阪都構想の住民投票は本当に僅差だった。二重行政の無駄をなくすという橋下さんの主張は、「大阪都なんてなんか違和感がある」などという反対派に比べれば、一考の余地があるものだと思うんだけどなぁ。
部外者が口を挟むことでもないが、結局のところ市民が負担し続けることになるのだろう。
ま、横浜市だって無駄は多そうではなるけれども…。

さて、ようやくのことでニック・ハーカウェイの『世界が終わってしまったあとの世界で』を読んだのである。
本当ならもっと早く読み終わるはずだったのだが、殊の外手間取ってしまった。
先のコンベンションで、杉江松恋さんが「アマゾンレビューは星一つ半と渋いけど、すばらしい作品!」とおっしゃっていたので、すごく期待していたのだ。が、私にとっては上巻が鬼門だった。
ハーカウェイさんは何やらキラキラしてるけども、疲れているときにはオススメしないわ。
Nick_harkaway.jpg

あらすじ自体は割とシンプル。
舞台は"逝ってよし戦争(go away war)”によって、破滅してしまった後の世界。
主人公の"ぼく”は、親友のゴンゾー・ルビッチらとともに、残された<可住ゾーン>で暮らしていた。その区域の外は、<非=現実>といわれる世界だ。<可住ゾーン>の周囲には、ジョーグマンド社によって<パイプ>がめぐらされ、それによって<可住ゾーン>は、人が住めるよう安全が保たれていた。
ところが、その<パイプ>が大火災に見舞われてしまう。事態は深刻だった。<パイプ>にFOXという謎の物質をの送り出す基地もが火事となっていたのだ。ジョーグマンド社からきた者の話では、FOXがガソリンのように燃えると、世界に焼けこげの穴が空いてしまうのだという。
この地域の運送を担い、危険物質に緊急に対応するための「エクスムア州運送&危険物質緊急民間自由会社」に勤める"ぼく”とゴンゾーは世界を救うべく出発するのだが…。

繰り返しになるが、筋自体はシンプルなのだ。問題は、語り手の"ぼく”にある。
"ぼく”が、無駄に思えるほどなんでもかんでも饒舌に語りまくるものだから収拾がつかないのだ。
訳者がいうように「いまの長〜い話、いらんやん!」と言いたくもなるのも無理はない(笑)

しかし、同士モウモウよ、
"ぼく”がこのように、いささか混乱をきたしており、何かにつけて無駄話をする饒舌キャラなのには、ちゃんとした理由があるのだ。それには、上巻でたっぷりと"ぼく”の無駄話を聞いた上で、下巻に入ってある"転機"を待たなければならない。

冒頭の、橋下さんがなんとかしようとした二重行政は全く無駄だと思うが、少なくとも、"ぼく”の無駄話は、割とそれなりには面白くはある。それにあながち無駄でもない重要なものもある。
あっちへ飛びこっちへ飛びのおばちゃんの無駄話のような"ぼく”の物語が放つ徒労感も、人間辛抱していれば、次第に慣れてくるものだ。
そんな頃にようやく物語上の大転機はやってきて、「おお〜〜!!!」となる。ここからグッと物語は面白くなるのだ。
なぜ、"ぼく”が語るのは、親友のゴンゾーのことばかりだったのか…etc,etc
それらの不思議の何もかもが、腑に落ちるはずなのである。
そして、ここからの展開は意外や意外、「人間らしさとは?」という哲学的な問いに発展していったりもする。

だから、上巻で挫折してしまった人と、通読した人とでは評価はガラっと割れるのではないかとも思うのだ。上巻冒頭で「ううぅ〜〜〜この馬鹿無駄話、もう駄目だ〜〜〜!」と思っても頑張って読むべし!ウー老子じゃないけど、何らかの秘技が得られたりするかも?
(ちなみにウー老子というのは"ぼく”の拳法のお師匠さんで、他にもこの小説にはニンジャやらパントマイミストやらわけのわからないものがジャンジャカ出てくる。)


また、著者のニック・ハーカウェイはいわずもがな、あのジョン・ル・カレの息子である。
だが、ジョー・ヒル作品からどことなくS.キングを連想するようには、ル・カレとハーカウェイは似ていない。というか、全然似てない。顔は似てるけど、ハーカウェイにル・カレの重厚さは全くない。いかにもお坊ちゃんらしく、ハッちゃけているし、もっと言えば爆発してもいる。
でも、文体こそ違うが、ワンセンテンスが持つ含みは二人とも殊の外多く、それがゆえに読者に頭を使わせる。
そしてあんなにサブカル的に軽いノリで描かれているのに、なぜかル・カレの世界同様にモノクロームだったりもするのだ。個人的な印象だけども「終わってしまった世界」だからなのか、私には鮮明な色のイメージはなかった。
6月刊行予定の『エンジェルメイカー』は、ミステリーだそうでこちらも楽しみ。
ただ、ポケミス史上もっとも厚いともいわれているから、あまり高くないといいなぁ…






世界が終わってしまったあとの世界で(上)
世界が終わってしまったあとの世界で(下)
ニック・ハーカウェイ (著), 黒原 敏行 (翻訳) 
早川書房 (2014/4/24)

Kindle版はこちらから
世界が終わってしまったあとの世界で(上)
世界が終わってしまったあとの世界で(下)














関連記事

category: SF ファンタジー

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 早川書房  英国  SF 
2015/05/19 Tue. 18:36 [edit]   TB: 0 | CM: 2

go page top

この記事に対するコメント

Re: タイトルなし

naoさん、こんにちは。

そうなんですよ。顔立ち、似てますよね〜!
作風は全く似てないんですが…。
ま、あの父親を越えるのは到底無理でしょうから、別フィールドで勝負せざるを得ないということもありますが。

>黒原敏行の翻訳には注目しておりますが・・今回は・・ぶつぶつ。
私も黒原氏の翻訳、大好きです。
でも、黒原氏もハーカウェイには!!!だったようで、苦労された痕跡があとがきに垣間見えたりもして(笑)
私自身は、ハーカウェイ、そんなに駄目でもなかったですよ。上巻を読むのには難儀しましたけれども。

大阪都構想問題は…
もう終わっちゃったことですが、無尽蔵にお金があるわけでもなし、ギリシア状態にならなければいいですけどねぇ。あ、それは日本も同じか。


『火星の人』、面白いですよね〜!

>愉しく読みやすく書かれてあるけど、この著者かなりな知識を持ったヒトである様子。

そうなんですよね。この方、非常によく調べていらっしゃる。
ただ、やっぱり映画は別物になりそうな感じが否めない…
あ、またこんなことを書くと、マット・デイモンのファンの人に怒られちゃうかな(笑)






Spenth@ #- | URL | 2015/05/20 Wed. 15:36 * edit *

《著者のニック・ハーカウェイはいわずもがな、あのジョン・ル・カレの息子である。》
し・・知りませんでした・・そうでしたか。
いつも難しそうな顔をしているあのヒトの息子さんね
(ニック・ハーカウェイ・・確かにオヤジに似てる)。
それは置いて本書上下巻は何やら読みにくいとのこと・・そうかぁ。
黒原敏行の翻訳には注目しておりますが・・今回は・・ぶつぶつ。

都構想・・大阪府民だけど実はあまり関心なし(必要だとは思う)。
ただ日本人は変わりませんなぁ・・情報に操られ戦争に突っ込んでいった国民。
今回は財政ほか諸々山積みの問題(困難)に目を向けず、デフォルトへの道を選んだ市民。
な~んも変わってないんだなぁ・・横浜市は賢明な選択を!
あと毎度思うことは、選挙にいく行かないという選択などなく、投票は強制はされなくとも義務であるという最低の認識さえ持ってないヒトばかり・・呆れる。
政治関連について頭めぐらせると気が滅入るなぁ・・ふう。

気分を変えて・・
いま遅く『火星の人』読んでおりますが、おもしろいですなぁ。
愉しく読みやすく書かれてあるけど、この著者かなりな知識を持ったヒトである様子。
読書会で高評価(賑わい)であったとのことにも納得・・みなさんの読書アンテナ感度はすばらしい・・感心(こちらが鈍いだけ?)。
ではまた!

nao #6gL8X1vM | URL | 2015/05/20 Wed. 13:24 * edit *

go page top

コメントの投稿

Secret

go page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://spenth.blog111.fc2.com/tb.php/472-e6069e10
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

go page top