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読書日記、ときどき食日記

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コカイン ゼロゼロゼロ 〜世界を支配する凶悪な欲望 / ロベルト サヴィアーノ 

今年の全仏は、優勝を予想できないほどランキングも調子も落しているナダル。
私も正直難しいだろうなぁと…

でも、でも、あのシャラポワがこんなことを言ってくれた。

「数試合に負けただけで疑問を投げかけるのは、(ラファに)失礼とも言えるんじゃないかしら。
彼は絶対的な王者で、再び達成するのは訳ないこと。
再び達成できるというモチベーションと、それを証明する力は目を見張るものがある。

うわ〜〜〜〜ん(泣)シャラポンありがとう!!!!感動した。
そうだそうだ。その通り!ネガティブにならず、応援するわ。
ナダルもシャラも連覇目指して頑張れ!


roberto_saviano.jpgと、全仏ネタはさておき、本書『コカイン ゼロゼロゼロ: 世界を支配する凶悪な欲望』本年度最もインパクトある本だった。

ノンフィクションではあるが、著者と対象物の間には距離がない。その視線は出来事を追いかける記者ではなく、自らの魂を追いかけているかのよう。
著者はノンフィクション・ノヴェルといって欲しいというが、なるほどノンフィクションというよりは、小説というほうがしっくりくるかもしれない。
ちょっと文学的ですらある。
だが、語られているのは全て実際に起こっていることなのである。

タイトルからも明らかなように、本書はコカインをめぐるマフィアのビジネス、暴力とその残酷性、マネーロンダリングを途轍もないスケールで描いたものだ。
コカインはわかった。
「じゃあ、ゼロゼロゼロって何なのさ」とお思いでしょう?
000とは最高品質の小麦のことである。イタリアでは、小麦粉の等級を0の数で表し、それが三つ連なる000は最高級品質を指すのだ。コカイン000は、ベビーパウダーのように細かく不純物のない最高品質のコカインを指している。
それだけではない。同時に、この「ゼロゼロゼロ」のゼロは、マネーの桁の直喩でもある。

ーーコカインほどの利益を生み出せる銘柄は、株式市場には存在しない。無謀な投資や先物取引、あるいは巨額の資本移動といったものですら、コカインにに匹敵するほどの価値の増加を生み出すことはできない。
コカインに投資すれば、巨大ホールディングスが数十年の投機と投資を経て達成する富を、数年で築くことができる。なんといってもゼロが1000になるのだから。コカイン以外のどんな経済の原動力であろうと、これほどの加速性はない。だからこそ、コカインの巨大市場では、残虐で暴力的な対立ばかりが顕在化する。ーー
cocain.jpg

そんなコカインをめぐる犯罪組織の暴力の凄まじさは、筆舌に尽くし難い。
冒頭語られるのは、メキシコのカルテルに潜入したDEA(アメリカ麻薬取締局)特別捜査官キキの物語だ。
コカインといえばコロンビアだが、当時コロンビアではライバル関係にあるカリ・カルテルとメデシン・カルテルが抗争を繰り広げており、そればかりか双方ともにFBIの買収に手こずったため、米国内への持ち込みにメキシコを経由させていた。メキシコのカルテルにとっては、国境越えのマリファナのルートをそのままコカインに流用すればよかった。
一斉摘発の後、キキの正体はカルテルにばれ誘拐されてしまう。この際の拷問の様子が凄まじい。鼻をへし折り、睾丸に導線を繋いで電気ショックを与える。頭にビスをねじ込み、焼けた鉄の棒を直腸に差し込む…etc。それらは全て幹部に報告するため録音され残されていた。後に裁判が行われたが、その際、この証拠テープを最後まで聞けた裁判官はいなかったという。
こうしたカルテルの残虐性は後にもたっぷりと語られているが、私にはこの部分だけでもう充分…。
だが、このキキの物語の要諦は暴力性ではないのだ。キキの誘拐はなんとメキシコ警察の関与によるものだった。そして、DEAとは協力関係にあるべきメキシコ政府すらも、何もせずただ事態を静観した。

コカインビジネスでは、他のどんなものを扱っても手に入らないほどの力を手中にできる。
麻薬捜査官は、よく金持ちには二つのタイプがいるという。金を数えるタイプと、金の目方を量るタイプ。コカインを牛耳る者たちにとって、金は数えるものではなく目方を量るものなのだ。

前述のような恐ろしいまでの暴力性とは無縁でいられても、我々とて知らずコカイン・ビジネスの影響を受け暮らしている。コカイン・マネーは世界の資本の奥深くにまで浸潤しているからだ。
今日、世界の金融権力の中枢、シティ・オブ・ロンドンやウォールストリートが沈没せずにいられるのは、ひとえにコカイン・マネーのおかげだとさえいう。
銀行が莫大な富を生み続けるためには、それに見合うだけの固形物、つまり現金が必要だ。誰かがその現金を供給しないかぎり、富を放出することはできない。現代の消費は、クレジットやリースによってその多くが貸し付けられているものだ。その分、システムはどこからか現金を調達してくる必要がある。
その巨万の富を現金で持っているのはいうまでもない、麻薬密売業者だ。もちろん、彼らだけではないが、金融システムが機能し続けるためには、彼らの金が重要であることは否定できない。
こうして、先進国に住まう我々はコカイン・マネーの上に築かれた楼閣に知らず暮らしているというわけだ。
他方、メキシコなどの途上国では、その途方もない金の力によって、政治家や官僚が買収され、買収された政治家や官僚の手によって、その金は銀行の保護下に置かれる。そして、銀行には汚れた金の流れを暴くための手立ても、関心すらも欠如している。

他にもカラブリアの犯罪組織「ンドンゲタ」やロシア・マフィア、ギニア人の運び屋、メキシコカルテルを仕切る女帝などなど、コカイン・ビジネスにかかる人々の物語が語られる。どの物語も、残虐性にあふれ悲劇的だ。
積み重ねられる幾つものストーリーは、読み手もそうであるが、著者自身をもがんじがらめにする。人間の欲望の深淵をあまりにも長く覗き込んだがために、自らも怪物と化してしまったと嘆くほどだ。
前著『死都ゴモラ---世界の裏側を支配する暗黒帝国 』で故郷ナポリの犯罪組織のことを書いたために、命を狙われるようになったという著者は、その痛みと憤りを吐露する。読み手は、あたかも私的な日記を覗き見しているかのような気分にさせられ、感情を揺さぶられる。

こうしたコカインをめぐる悲劇を終わらせるには、どうすべきなのか?
問題は、コカインの内在している破壊的なエネルギーだ。そして、それには代替がない。
逮捕しても逮捕しても所詮イタチごっこに過ぎない。唯一解決可能な方法は合法化することではないかとさえ、著者は考え思い悩む。しかし、文学に答えが明示されることがないのと同じく、その答えは見つからない。
だが一方で、こうした事実を多くの読者が知るという行為こそ、麻薬犯罪組織が最も恐れることだとも彼は考える。
読書はよく言われるように、「受け身」の行為などではない。読んで、感じ、学び、理解することは、「知る」ということは、現状を変える第一歩なのだと。自らが世の中でどうあるべきかを問うことは、決して受け身の行為などではないと。
本書を読みその内容を咀嚼して飲み込むのは、楽な作業ではないかもしれない。実際、読むに耐えないような場面もあるが、それでも、その価値は十二分にあると思う。

ま、本の力も、ナダルの力も信じようってことですわ(←無理くり)



コカイン ゼロゼロゼロ: 世界を支配する凶悪な欲望

ロベルト サヴィアーノ (著), 関口 英子 (翻訳), 中島 知子 (翻訳)
河出書房新社 (2015/1/24)









死都ゴモラ---世界の裏側を支配する暗黒帝国 (河出文庫)

ロベルト サヴィアーノ (著), 大久保 昭男 (翻訳)
河出書房新社 (2011/10/5)




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category: ノンフィクション・新書

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: ノンフィクション  犯罪    麻薬 
2015/05/27 Wed. 19:03 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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