Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

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ドクター・スリープ / スティーヴン・キング 

『シャイニング』のダニーには"REDRAM”という文字が追いかけてきたが、私には目下、"ギリシャ”が立ちはだかっている。
あの地中海の怠け者の国の破綻問題のせいで、先週はドーンとやられた。金融株は惨憺たる有様。しかし、週が明けたらこれが打って変わって超強気。逆に怖いんですけども…。
なんでもデフォルトは土壇場で回避するとの見方が強いが、でも、それって、またもやペンディングってことでしょー。それもどうなのよ?

ところで、本書『ドクター・スリープ』 『探偵は壊れた街で 』同様、先のコンベンションのビブリオで紹介されていた作品である。あの『シャイニング』の続編くれば、それはアナタ、読まなきゃでしょう!キングというだけで私は自動的に購入するので、敢えてビブリオで投票しなかったのだけど、やはり出来はこっちのほうが数段上だったな。
しかも今回、文藝春秋さんが親切にもKindle版で同時に出してくれているときた。なんと『シャイニング』も一緒に電子化してくれている。『シャイニング』自体、もうかれこれ36年前の本なので有り難い人は多いだろう。文春さんグッジョブ!
本書を読むにあたっては、なにせ『シャイニング』は大前提なのである。もう読んでなきゃ始まらない。ええっ〜〜〜面倒くさぁい〜〜〜映画じゃ駄目なのという人は、心を入れ替えるべし。映画じゃ駄目なのである。何しろ、キング本人も、映画ではなく"原作”こそが”トランス一家の正史”なのだと言っているのだから。
ちなみに、私は続編が出ると知った時に実家の本棚をひっくり返して文庫を探し当てておいた。Kindleも迷ったが、ほら、なにせ上述のような有様なので節約しとかなきゃ…。もちろん再読済みである。

doctor-sleep-trailer.jpg

stephenking_8col.jpg



さて、『シャイニング』ではわずか5歳だったダニー(ダン)・トランスは、長じて中年になっている。
ダニーは酒が父親に及ぼした影響を目の当たりにした自分なら、大人になっても決して酒は飲まないと信じ込んでいたが、現実は違った。酒浸りになり各地を転々とした挙げ句に、最悪の経験をしたダニーは悪夢に苦しんでいた。
そんな時、自分の内側から聞こえてきた「お前さえ望むなら、こんな暮らしをしなくてもいいのに」という声に導かれる。いい加減、酒を断ってやり直すのだ。
そして、ようやくニューハンプシャーの小さな田舎町フレイジャーに落ち着くことになる。そこで、ダンはアルコール依存症の会に入り、ホスピスで介護士として働きはじめるのだった。
子供の頃ほどではなかったが、ダンにはまだ"かがやき”の力があり、町にきて酒をやめて以来それは再び復活していた。ダンはそれを用い死に行く人々に安らぎを与えていた。

そんなダンに、ある女の子が接触してくる。彼女とダンの出会いは、直接にではなく彼女がダンの部屋の黒板にメッセージを書いたことから始まった。
彼女の名はアブラ。ダンの住む町から30キロほど離れたアニストンに生まれたアブラは、生まれた時から強烈な"かがやき”を持っていた。まだ5ヶ月の赤ん坊の頃、911の惨事を予知して両親にそれをテレパシーで知らせようとしたり、自分の子守唄代わりにピアノでビートルズの曲を演奏したりしていた。10歳の誕生日には、家中のスプーンを天井から吊るしてみせたりもした。
そして、何よりアブラにも"トニーという秘密の友人"がいたのだ。幼い頃のダン同様に。

一方、"真結族”(トゥルーノット)と呼ばれる謎の集団は、アメリカ各地をキャンピングカーを連ね旅していた。彼らは遥か太古から存在している人間ではない者たちだ。一族を束ねているのは、ローズ・ザ・ハット。シルクハットが目印の背の高い美しい女だ。
彼らは"かがやき”を持った子供たちの命気をすすることで、その命を長らえてきた。だが、昔は200人を誇った"真結族”も今は残り少なくない。圧倒期に命気が足りないのだ。このままだといざという時のために保存してあるものさえ、底をつきかねない。彼らにとっては死活問題だった。
だが、幸運にも、一族は道中で、ある少年にありつくことができる。一息つけたものの、一族を維持していくためには、もっと強烈な命気頭が必要だった。
そんな時ローズは、遥か遠くから自分を覗き見ている存在に気づく。それは女の子だった。しかも、これまで見たこともないほどの量の命気を持っている。なんとしてでもあの子を捕まえなくては、とローズは決心する。あれほどの命気なら、殺さずに家畜のように飼えばいい。
新聞で偶然その少年の写真を目にしたアブラは、その力で、彼がどんな力を持っていたのか、どこでどういう風に殺されたのかを知る。そして、自らに迫り来る危険に気づくのだった…



昨年『NOS4A2-ノスフェラトゥ-』を読んだ時、やっぱり親子なんだなぁ!と思ったが、今回もそれを強く感じた。今回、『NOS4A2-ノスフェラトゥ-』のキャラも少しだけ出てくるので、余計そう感じたのかもしれない。

あとがきでキングは、「人は変わる。『ドクター・スリープ』を書いた男は、『シャイニング』を書いた気のいいアルコール依存者とは別人だ」と言っているのだが、なるほど『シャイニング』と『ドクター・スリープ』では雰囲気がまるで違う。しかしそれでいて、ストーリーは完璧に繋がっている。全くストーリーは異なるのだが、『シャイニング』で重要な役割を果たした"忘れていたこと”もまた形を変えて甦ったりもしていて、まさに、ぐるりと回って元どおりなのである。
個人的には『シャイニング』と本書、二つ揃って初めてこの"トランス一家の正史"は完結したのだという気がした。
『シャイニング』を読み終わった時、訳者の深町さんのあとがきにあった「父子三代にわたるアンビヴァレンス」というこの言葉がずっとひっかかっていた。それを象徴するものとして、彼女はダニー本人(本書ではダン)の祖父、父のミドルネームを含むフルネームを挙げているのだが、その時は私にはそれほどピンとこなかったのだ。
ちなみに、それぞれの名は、ダニエル・アンソニー・トランス、マーク・アンソニー・トランス、ジャック・ダニエル・トランスである。(なんと、"本当に"それぞれ作中にはたった一度しか出てこない!)
本書『ドクター・スリープ』には、その「父子三代にわたるアンビヴァレンス」とは何なのかについての明確な解答があり、それが本書の最も重要なテーマにもなっている。

ダンは父親のジャックから、あまつさえ殺されそうになり、望ましくないものも受け継いだ。でもそれにもかかわらず、父親を憎むような大人になっていなくて本当に良かったと思う。
キングの作品でいいところは、その根底に愛情が感じられるところだ。作者本人の人となりが感じられるというか。そしてそれは、作を重ねるごとにそれは強くなっているような気がする。





ドクター・スリープ 上
ドクター・スリープ 下
スティーヴン キング (著), 白石 朗 (翻訳)
文藝春秋 (2015/6/11)

Kindle版はこちら
ドクター・スリープ(上) (文春e-book)
ドクター・スリープ(下) (文春e-book)




下記はいずれもKindle版のみ



シャイニング(上) (文春文庫)
シャイニング(下) (文春文庫)

スティーヴン・キング (著), 深町眞理子 (翻訳)







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category: ノワール・ホラー・サスペンス

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 映画化  キング  モダンホラー   
2015/06/22 Mon. 20:29 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

Re: タイトルなし

naoさん、こんばんは〜

もうギリシャは、ねぇ・・・・
先週、日経が大幅調整したのは、それに加えて海外勢の決算も絡んでいたようですね。
メガバンクについては、もうどこも結構上がりきっており、比較的まだ割安感があるのはメガバンクくらいかなぁと。
日経平均の上げからすれば、もう少し上値余地があってもいい気がするんですよね。
ただ今週返す刀で、今週火柱があがったので逆に怖くなりましたとさ。
本当に金曜が怖いわ…

キングはかなり好きな作家で、昔のものも好きだけど、どちらかといえば最近のもののほうが好きかな。
翻訳も深町さんよりは白石さんのほうが好みかも。
いやぁ、でも超〜久しぶりの「シャイニング」はやはり面白かったです。
映画に関しては、実はあまりよく覚えていないのですが、キューブリックにジャック・ニコルソンですからねぇ。キングの好みとは違ったようですが、それはそれで、悪い出来じゃなかったような…。
「ドクター・スリープ」は、あまりにも息子の「ノスフェラトゥ」に感じ似ていたので驚きました。
全く同じというわけでもないのですが、バケモノの種類とか、主人公がかかえている苦悩とかその手のカテゴリーのタイプが似てます
ま、あの一家は、家族内で批評や手直しし合いっこしているので、自ずと似てくるのでしょうねぇ。

マキューアンの「甘美なる作戦」はたぶんnaoさん好みかと。
楽しんでください!

Spenth@ #- | URL | 2015/06/23 Tue. 21:36 * edit *

ギリシャの銀行株が今回の救済(?)をあてこんで、エライ急騰したとか。
ドイツもしっかりのようだし、危機の峠は越えたのかな?
金融株(銀行株)はどの位置で買われたのかはわかりませんが、
結構高値位置・・強気なSpenthさん!・・さすが。
自分はもう銀行株・不動産株には手を出していないのでした。

キングは自作の映画化作品・・つまりあのキューブリックの映画、
まだ含むところあるようですなぁ。
自分はあの映画、キングの映画化作品ではベスト(別格)に推すけれど。
キング作品も『シャイニング』や『呪われた町』など、
初期作品の方が好きな作多いかも。
Spenthさんはキングのどの作品がお気に入り?
・・さてさて本書を読む前に『シャイニング』再読しなくちゃ。

Spenthさんからかなり周回遅れて鈍足ペースの自分でありますが、
近く『甘美なる作戦』マキューアンを読む予定です。
ではまた。

(資金が主要株だけに向かわず、こちらの弱小保有株にも回ってきますように・・)。

nao #6gL8X1vM | URL | 2015/06/23 Tue. 21:00 * edit *

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