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読書日記、ときどき食日記

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出口のない農場 / サイモン・ベケット 

一般に、入ったものは、出したほうがよろしい。
お通じ然り、カロリー然り。
だが、入ってこないのにもかかわらず、ただ出費するというのはいかがなものだろうか。
最近少々買い物しすぎ…
来月のカード請求が怖いわ…
この収入と支出の関係が、カロリーのことならいいのになぁ…


と、私も追いつめられているが、本書『出口のない農場 』の主人公ショーンにも文字通り出口がない。
BeckettS-StoneBruises_thumb[8]




さて、舞台は太陽がギラギラと照りつけるフランスの田舎町である。イギリス人青年のショーンは、何かから逃げるようにこの地へたどり着く。イギリスから乗ってきたアウディのシートベルトには、血が染み付いており、バックパックの底には後ろ暗いものを隠し持っている。今いる場所も大雑把にしか把握していないが、彼には先の計画など何もなかった。
近くの農場で水を分けてもらった帰り、彼は狩猟用の罠に足を挟まれて大怪我を負ってしまう。
農場の娘マティルドに助けられ、傷が癒えるまで農場の納屋で療養することになるのだが、このアルノー農場の様子はどこか普通ではない。周囲はぐるりと有刺鉄線で囲んであるし、敷地内は侵入者を防ぐための狩猟用の罠があちこちに仕掛けてあるのだ。それにマティルドは、傷の手当を終え納屋を出て行くときには必ず閂を掛ける。
農場の主でマティルドの父、アルノーは独裁的で、この農場は彼のルールで成り立っていた。
次第にショーンは自分が怪我の療養しているのか、囚われているのかがわからなくなってくるのだった。
この農場は、彼らのほかに、まだ赤ちゃんのマティルドの息子ミシェルと、10代後半の妹、グレートヒェンが暮らしている。アルノー夫人はかなり前に亡くなったらしいが、マティルドの夫のことは話題には登らない。
何とか歩けるまで回復したショーンは農場を出て行こうとするが、マティルドからここで働かないかと持ちかけられる。考えてみれば、ここは身を隠すには最適の場所だし、足が完全に回復するまでじっくりと考える時間も必要だ。ショーンにとっても願ったりかなったりではないか。
かくして、ショーンはアルノー農場に留まることになるのだが、次第にこの農場が町の人に酷く嫌われていることを知る。それに、なぜマティルダはあんなに暗い目をしているのだろう。次第にマティルダに惹かれていくショーン。対称的に、妹のグレートヒェンは何かにつけてショーンを誘惑してくる…。
アルノー農場の秘密とは何なのか?
そもそもなぜにショーンはロンドンから逃げ出さなければならなかったのか?



wild-pig.jpg

現在進行形のアルノー農場での出来事と、ロンドンでのショーンの過去は交互に語られていき、特にショーンの過去はチビリチビリと明かされるので、読者はなぜショーンが逃げなければならないのかがわからない。
不穏な気配のなか、状況もわからないまま、読者はショーンとともに囚われの身となっていく。

アルノー家の秘密は、なんとなくわかる人もいるかも。私も、もしかしてそうじゃなかな、と最初から思いながら読んだのだが、これは予想通り。欧米はこういうの多いなぁ。ま、日本も表に出ないだけかもしれないが…
それでもこの独特な雰囲気は楽しめた。うだるような暑さと農場で飼育している猪豚(サングロション)の臭気、アルノー家とショーン自身の隠された秘密が相まって、なんとも言い難い不穏さを生んでいる。
一言でいえば、本書は、暑くて臭くてなんだか不安にさせる小説なのだ。

この農場の巨大な種豚の凶暴性は、『ハンニバル』のある場面を彷彿とさせるし、雌のサングロションを潰すシーンは血なまぐさい。豚は雑食で、何でも食べるから…
あまり書くと楽しみを削いでしまうのでこの辺にしておくが、この豚とアルノーのような人間との差は何なのだろうかと思ってしまった。
simon beckett

著者のサイモン・ベケットは、法人類学者デイヴィッド・ハンターシリーズで有名な人気作家。私はあいにくと未読なのだが、海外ドラマの『ボーンズ 〜骨は語る』みたいな感じなのかな?
このシリーズはヴィレッジブックスさんから出てるみたいだけど、まとめてKindle化してくれないかしら。




出口のない農場 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

サイモン・ベケット (著), 坂本あおい (翻訳)
早川書房 (2015/7/8)


Kindle版 出口のない農場




法人類学者デイヴィッド・ハンター (ヴィレッジブックス)

サイモン・ベケット (著), 坂本あおい (翻訳)
ヴィレッジブックス (2009/2/20)







骨の刻印 (ヴィレッジブックス F ヘ 5-2)

サイモン・ベケット (著), 坂本あおい (翻訳)
ヴィレッジブックス (2012/3/19)








骨と翅 (ヴィレッジブックス)


サイモン・ベケット (著), 坂本あおい (翻訳)
出版社: ヴィレッジブックス (2014/2/20)






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category: ミステリ/エンタメ(海外)

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  早川書房  ポケミス   
2015/07/21 Tue. 15:14 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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