Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

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流 / 東山 彰良 

あっつい!!!
トシのせいかなんなのか、やたら暑さがこたえる。
ナダルも低調だし、もし今日負けたらちょっと洒落にならないんだけど…

あ〜ああああああああ…



とうことで、目先を変えて直木賞受賞作を読んでみた。
お笑い芸人が受賞した芥川賞のほうが話題になってるが、私にはここ最近の芥川賞受賞作が面白いとは思えない。
例のお笑い芸人の本は読んでないのでなんとも言えないが、芥川賞は、ここ数年ず〜〜っと、"話題性ありき”な感じが否めない。
ただでさえの出版不況に加えて、純文はさらに厳しいので話題作りに走るのも仕方ない。でもあの髪型は不潔そうでちょっとイヤだ!(笑)
とはいえ、詰まるところ、大衆文芸のための賞たる直木賞のほうが私向きなかも…




akira higasiyama

吉本の芸人の陰に隠れてしまったが、このたび直木賞を受賞したのは、東山彰良である。
ミステリー好きには『逃亡作法 TURD ON THE RUN 』
といえばピンとくるだろうか。彼はこれで、第1回『このミステリーがすごい!』大賞と読者賞をダブル受賞したのだ。ちなみに『路傍』 でも大藪春彦賞を受賞しているので、直木賞も穫るべくして穫ったという感じである。

『さすらい』では垣根涼介氏が解説を書くというので、『逃亡作法』をはじめとした数冊を読んでみたのだが、確かにオフビート!筆力があり、世界と自分との境界というものが際立っている。そして「はずれ」がない。

Amazonレビューには「文章が良くない」というのもあったのだが、これには「エエッ」とのげぞってしまった。
東山氏の筆力を否定するなら、殆どの日本人作家を否定しなければならないと思うけど…

この『さすらい』の帯で垣根さんは「ひきこもりの小説に泣いている暇はない。」と言っているのだが、まさにそれだ!世界は「流れ」続け、自分はその中心にいる。

台湾人である自分のルーツを描いた本書にも、それらは当てはまる。本書『流』はそんな東山氏の祖父のことを描いた自伝的作品であり、青春小説であり、歴史小説でもある。




さて、本書の舞台は1975年の台湾だ。
蒋介石が没したその年、主人公、秋生の祖父何者かに殺害される。祖父は、自らが営んでいた布地屋の浴槽の中で後ろ手に縛められ、身体をくの字に曲げて死んでおり、第一発見者は秋生だった。

秋生の祖父は山東省の出身で、戦時中は多くの共産党員を殺したそうだ。「有槍就是草頭王 (鉄砲があればならず者の王)さ」それが祖父の人生哲学で、国民党の遊撃軍時代からドイツ製のモーゼル拳銃を肌身離さず持っていた。
短気な反面、兄弟分の忘れ形見である宇文叔父さんを引き取って我が子同然に育てるほど義理堅くもあり、また孫の秋生のことは猫可愛がりに可愛がってもくれた。
警察の見立ては怨恨による殺人だった。だが、祖父には暴行を受けた痕跡はない。よしんば警察の見立て通りだとしても、その恨みが生まれた場所は中国大陸以外には考えられなかった。

当時、秋生は台湾で一番の進学校に通っていた。しかし悪友・小戦の手引きで引き受けた替え玉受験がばれ、退学させられてしまう。それもこれも祖父の死によって受けた経済的ピンチを救おうとした結果だった。秋生に残されていたのは、軍隊に入るか、名前さえ書けば馬鹿でも入れる高校に編入することのみ。迷わず後者を選んだ秋生だったが、それは同時に囚人服とどっこいの制服に身をつつみ、犯罪者予備校に通うこととかわりなかった。
そして、そこでの学生生活も一筋縄ではいかない。心の底では誰もが望まぬ状況でも、闘わなければならないことも多くあるのだ…。


old taipei

たぶん当時の台湾は日本より20年は遅れていただろう。あいにくと私は台湾に行ったことはないのだけれど、物語の端々からノスタルジーが漂う。
”こっくりさん”そっくりの子供の遊び然り、秋生の祖父が守られていたと信じていた”お狐さん”然り。台湾は、中国は、一見欧米よりも遠い国でありながらも、やはり日本の隣国なのだと妙に感心してしまった。
だからなのか、舞台はほぼ台湾で、日本人の登場人物はいないという設定であっても、自然とのめり込んでいけるのだ。

台湾で一番の高校に通っていた秋生の人生は、あれよあれよという間に転落していくが、悲壮感はなくどこか楽しげでユーモラスでさえもある。この怒濤感。このセンス。

物語を貫くのは「祖父の死の真相」なのだが、秋生と幼馴染みとの初恋の顛末や、ついにはヤクザになる悪友・小戦との悪さの日々などのエピソードが読ませる。かなり過激なのに、それでもキラキラ輝いていて、本当に垣根さんじゃないが「引きこもりの小説なんかで、メソメソ泣いてる場合じゃない」と思ってしまう。
体験をすることで、人は傷つき、学ぶ。ただ、全てを体験するのは無理なわけで、だから人は本を読むのではないだろうか。ならば、自分と同じよりも、自分ができない類いのことをしてくれる本のほうがいい。





東山 彰良(著)
講談社 (2015/5/13)

Kindle版はこちら → 流










新装版 逃亡作法 TURD ON THE RUN (上) (宝島社文庫)
新装版 逃亡作法 TURD ON THE RUN (下) (宝島社文庫)

東山 彰良(著)
宝島社; 新装版 (2009/9/5)








さすらい (光文社文庫)


東山 彰良(著)
光文社 (2009/5/12)








路傍 (集英社文庫)


東山 彰良(著)
集英社 (2010/5/20)







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category: ミステリ/エンタメ(国内)

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 直木賞    このミス  台湾 
2015/07/27 Mon. 19:57 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

Re: タイトルなし

naoさん、こんにちは!

暑いですね〜!!!
横浜はそれでも都内より1度くらい涼しいのですが、もうこのレベルだとそんなの関係ない。
暑くて何もやりたくない、本も読めない〜のは同じです。家から出るのにも勇気が必要だし。
こんな暑さのなか、東京オリンピックなんかやったら死者が出そうな気がするんですけど…
マラソンとか無理じゃない??
ハーカウェイの『エンジェルメイカー』も殆ど進まない(笑)
蛇足が醍醐味のハーカウェイはつくづく夏向きじゃないよなぁ…


東山彰良氏は、おっしゃるとおり実力者だと思います。
でも知名度はイマイチだったのかなぁ??
今回もお笑い芸人も陰に隠れてしまった感はありますね。


>しかし行きたい国、長く住んでみたいと思える国は中国かも。
え〜〜〜〜そうなの?
私はちょっとゴメンこうむりたいかな…
歴史とかは面白いのですけどね。


>例の怪物がこれほどすぐれた知性(知力)を持ち、思索もする人物(?)に描かれているとは知りませんでした。
怪物の語りの哀切に惹きこまれるとは・・だけど殺人者。

名作といういわれるものは、読み直してもなお、面白いんですよね。
私もB級ばかりじゃなく、たまにはそういうのも読まなくちゃなぁ…

Spenth@ #- | URL | 2015/08/02 Sun. 10:26 * edit *

東山彰良・・直木賞獲るまで知らなかったヒトであります・・実力者。
おもしろそうですが・・いまは暑いので読むのは無理か。
涼しいトコで音楽聴くか、ボォーとしていたい(ダメ「にんげんだもの」)。
でも、読みたい内容の作品であります。
というのも、内容を読むと自分の大好きなホウ・シャオシェン監督作品の世界・・『悲情城市』『童年往時』『恋恋風塵』(みんな傑作!)ほかを連想されたので。

自分はみてくれはは違っても、中国人(韓国人)より欧米の方にイメージとして親近感を覚えますが、
しかし行きたい国、長く住んでみたいと思える国は中国かも。

『吸血ドラキュラ』の次に『フランケンシュタイン』読んでおります。
例の怪物がこれほどすぐれた知性(知力)を持ち、思索もする人物(?)に描かれているとは知りませんでした。
怪物の語りの哀切に惹きこまれるとは・・だけど殺人者。

『声』インドリダソン気になっております・・美味そう。
ではまた!

nao #6gL8X1vM | URL | 2015/08/01 Sat. 23:22 * edit *

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