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読書日記、ときどき食日記

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亡者のゲーム / ダニエル・シルヴァ 

横浜駅地下街のY隣堂をうろついていたら、
ダニエル・シルヴァの本が平積みになっているではないか!
しかも文庫!!!
KIMG0209.jpg

ハーパー文庫とかいう聞き慣れないところから出ている。
どっから出ていても関係ないわと早速購入したら、これがやめられないとまらない。
私的にはこの夏一番のオススメ!


私のいうことなんて信用できないという方は、こちらを試してみてくださいまし。
亡者のゲーム◆ハーパーBOOKS創刊記念◆無料立読み版 (ハーパーBOOKS)

親会社は米国の大手出版社で、ダニエル・シルヴァの版権を全て持っているそうなので、今後も大いに期待できる。
どんどん出して〜〜〜
翻訳ミステリ好きにも嬉しい創刊である。

週末に『笑う警官』の読書会が迫っているので、そろそろ読まなければならないのだが、今、シルヴァの過去の作品を優先させたいという気持ちと必死に闘っている。
『マルベリー作戦』はもちろん、文藝春秋からでてたオズ・ボーンシリーズの『顔のないテロリスト』も再読したいし、何より本書の主人公ガブリエル・アロン・シリーズはまだ殆ど手つかずなのだ。



danielsilva-novelist.jpg

さて、本書の主人公ガブリエル・アロンは、二つの顔を持っている。ひとつは絵画修復師としての顔であり、いまひとつはイスラエルの諜報機関<オフォス>の伝説的スパイの顔だ。
そして<オフィス>の次期長官でもある。

ガブリエルは目下、ヴェネツィアの古い教会でヴェロネーゼの修復にとりかかっていた。
そんなとき、"美術班”ことイタリア美術遺産保護部隊のフェラーリ将軍からある取引を持ちかけられる。イタリア北西部のコモ湖の豪華なヴェラで惨殺されていた元英国外交官ブラッドショーの第一発見者が、スパイとしてのガブリエルに縁深い美術商ジュリアンだったのだ。
拷問された挙げ句殺害されたブラッドショーは、盗まれた美術品の売買に関わっていたとみられていた。おそらくは犯人が求める"何か”をブラッドショーが持っていたのだろうと考えられた。莫大な価値のある品だろう。将軍は、それをカラヴァッジョの祭壇画だと睨んだのだ。美術班は1969年に盗まれたカラヴァッジョの名画「キリスト降誕」を40年以上も渡って探し求めていた。129248fc99ebc6333fa92186fb53a2e714047.jpgこの事件でジュリアンの名が世にでれば、美術界での彼のキャリアは終わってしまう。
そこで、彼の名をださない見返りとして、その犯人とカラヴァッジョを突止めてほしいというのだった。
殺されたフォラドショーのヴェラで、ガブリエルは予想外の発見をする。
ヴェラにある平凡な模写の下から行方不明になっていた巨匠の名画の数々が出てきたのだ。
パルミジャニーノ、ルノワール、クリムト…。
ブラッドショーはわざわざ一段劣る作家の模写を施し盗難品を隠していたのだ。だが、ヴィラにはカラヴァッジョはなかった。
カラヴァッジョはすでに、盗難絵画を買い漁っている謎の"ミスター・ビッグ”の手に落ちたのかもしれない。
この"ミスター・ビッグ"の正体は謎に包まれており、おそらくブラドショー殺害も彼の配下によるものと考えられた。
となれば、盗品マーケットに餌を投げ込み、"ミスター・ビッグ”を釣り上げなければならない。その餌となる派手な絵画が必要だ。
かくして、ガブリエルとその仲間による" 作戦”はスタートするのだが…



前半は、 『FBI美術捜査官』『美術品はなぜ盗まれるのか: ターナーを取り戻した学芸員の静かな闘い』『偽りの来歴 ─ 20世紀最大の絵画詐欺事件』を彷彿とさせるような、煌びやかな美術品世界の物語だが、後半は一転して国際策謀ものとなる。

「本書はエンターテインメント小説である。あくまでそのつもりで読んでいただきたい」と著者は前置きをしているのだが、そこかしこに鏤められた真実やリアリティあふれる筆致についのめり込んでしまう。
本書で聖杯ともいえる重要な役割を果たしているカラヴァッジョの「キリストの降誕」は、1969年に盗まれ、今に至るまで見つかっていないのもまた事実である。そして、この祭壇画は同じく盗まれたレンブラントの「ガリラヤの海の嵐」、ゴッホ「スヘフェニンゲンの海の眺め」に次ぐ世界で最も高額で価値ある美術品だという。あとがきで著者が述べているように、時間が経つにつれ無傷で発見される可能性は低くなり、この手の損失はいくら強調してもしきれない。

Lago-di-Como.jpg本書ではゴッホの超有名絵画を餌に、"ミスター・ビッグ”を吊り上げようと策略を練るのだが、その"ミスター・ビッグ”は実は思いもよらぬ大物なのである。
それもガブリエルが使えるイスラエル諜報機関とも縁浅からぬ相手だった。
そこからシルヴァは、現在の中東情勢の内幕といったものに切り込んでいく

どの本だったかは忘れてしまったが、「西欧にとって、今しばらくはアラブは民主主義よりも、行き過ぎない独裁者のほうがよいのかもしれない」と書いてあったのを思いだした。
確かチュニスでテロがあった近辺のことだと思うが。
西欧諸国がアラブと和平を結べるのは、イスラム過激派ではない。独裁者だけなのだ。
しかし、その独裁者が"金”を求め過ぎる一方で、アラブ世界の人々の5分の1が一日2ドルでの生活を余儀なくされてもいる。中東情勢については普段はあまり関心がない私も、非常に興味深く読んだ。

そういえば、かのロシア大統領もチラリと登場したりもする。彼もまた恐ろしい額の不正蓄財をしているのだろう。
ネットに流出している馬鹿っぽい写真とか、私は結構好きなのだが、「ロシア中央部の部族みたいに目が吊り上がってるが、また整形したに違いない」というのには笑ってしまった。やっぱりあれ、リフトのしすぎだと思うな…。

舞台も、ヴェネツィア、コモ湖畔、コルシカ島、リンツ、ハンブルク、エルサレムと風光明媚なところばかりで、旅しているような気分にもさせてくれるのもいい。
この夏は()どこにも行かないもので…(:_;)


去年は「『ピルグリム』だったけど、今年は「亡者のゲーム」で決まり。
結構分厚いのに、1000円!Kindleだとなんと900円!
私は書店で買ったのだが、あとでKindle版がでてることを知った時のショックときたら…



亡者のゲーム (ハーパーBOOKS)

ダニエル シルヴァ (著), 山本 やよい (翻訳)
出版社: ハーパーコリンズ・ ジャパン (2015/7/18)

Kindle版→ 亡者のゲーム (ハーパーBOOKS)








マルベリー作戦〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)
マルベリー作戦〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

ダニエル・シルヴァ(著), 田中 昌太郎 (翻訳)
早川書房 (2000/06)








顔のないテロリスト

ダニエル・シルヴァ (著), 二宮 磬 (翻訳)
出版社: 文藝春秋 (2005/10/7)








FBI美術捜査官 (文芸社文庫)


ロバート・K・ウィットマン ジョン・シフマン(著)土屋 晃 匝瑳玲子 (訳)
出版社: 文芸社 (2014/2/4)








美術品はなぜ盗まれるのか: ターナーを取り戻した学芸員の静かな闘い


サンディ ネアン (著), 中山 ゆかり (翻訳)
出版社: 白水社 (2013/2/15)







偽りの来歴 ─ 20世紀最大の絵画詐欺事件

レニー ソールズベリー (著), アリー スジョ (著), 中山 ゆかり (翻訳)
出版社: 白水社 (2011/8/20)







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category: スパイ・冒険・ハードボイルド

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  ハーパーコリンズ  文庫  シリーズ  スパイ 
2015/08/09 Sun. 12:54 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

Re: タイトルなし

naoさん、おはようございます。

ハイ。ダニエル・シルヴァはドンピシャなエンタメですね。
ガブリエルシリーズ、全部読みたいなぁ
日本では4作しか刊行されていませんが…

マルティン・ベックは、悪くはないしむしろいい作品だと思うのですが、な〜んか食指が動かない。
今回の読書会は新訳限定なんですが、な〜んか合わなくて…
旧訳のほうが私は好きかな。

北欧ものの主人公が「もっさり」というのは納得です。
物語自体もやや「もっさり」でもあるんですよね。時代的に仕方ないのでしょうけども。

Spenth@ #- | URL | 2015/08/10 Mon. 08:14 * edit *

本シリーズの解説を読むと、
Spenthさん好みであることがよくわかるような。
歴史が絡んで、作品背景にノンフィクションレベルのリアリティもある。
主人公は絵画修復師でスパイ(裏の顔?)・・知性の質感に惹かれる?
なんか上手くぜんぶ揃っている感じ。
(絵画修復師と言えば『古書の来歴』という秀作も思い出されるし)。

カラヴァッジョの画・・どこから光がきているのか(光源はどこ?)よくわからないフシギな画・・好きですが。
自分も涼しくなったらこのシリーズ読みたいと思います。
創刊本はまずハズレなし(自信作)でしょうし。

そしてマルティンベック・シリーズもまた好きなのでした。
『ロゼアンナ』『笑う警官』『消えた消防車』の三つが特に好きであります。
現在の北欧ミステリの主人公警察官に見るロートル気味のもっさり感(?)は、
マルティンベックに由来(元凶?)するのかも(失礼)。

現在ハックと筏下りの旅の途中であります(『ハックルベリー・フィンの冒険』)。

ではまた!

PS繰り返し、水分補給はこまめに!

nao #6gL8X1vM | URL | 2015/08/09 Sun. 22:33 * edit *

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