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読書日記、ときどき食日記

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笑う警官 / M.シューヴァル&P.ヴァールー 

もう酷暑は過ぎたといってはいるが、暑い。
バテ気味だし、読書欲もあまりわかないが、週末の読書会が迫っており、そう悠長なこともいっていられない。
ということで(どういうことで?)、焼き肉してきた。
ようやく持ち株もプラテンしたし、ちょっと元気でたかも〜

KIMG0222.jpg


行ったのは、元町の焼き肉屋 しげ吉 横浜元町店さん
たまには叙々苑でもいくか〜と思ってたら予約がとれなくて、ここにしたんだけど満足満足。
A5ランクのメス牛しか使用しないそうで、メスのほうが肉質のキメが細やかで美味しいのだとか。そういえば、林真理子の短編に「5歳の雌牛」とかいうのがあったな…。ちがった、「四歳の牝牛」だったっけ?




さて、今回の読書会の課題本は、『笑う警官』の新訳ヴァージョンなのである。
最初に読んだのは高見訳だったので、こちらのほうが好きなのだが、ちゃんと新訳版でも読んだのだ!!!



wahloo_sjowall2.jpg
物語は、冷たい雨が降りしきる冬のある日、ストックホルムのはずれ、ソルムとの境にある荷役場の鉄柵に、市バスが突っ込んで止まるところから始まる。

巡回中の警官二人がその二階建てのバスの中をみてみると、そこは死体の山だった。空薬莢が散らばり、運転手と乗客は一人を残して城銃殺されている。まだ息のある乗客とて瀕死の状態だ。
知らせを聞いて、マルティン・ベックが現場に駆けつけると、殺害された乗客の中には彼の部下だった若手刑事のステンストルムの姿が…
彼はこの日は非番だったのにもかかわらず、同棲していた女性には仕事だといって出かけていた。なぜステンストラムはこのバスに乗っていたのか。なぜ、乗客たちは全員銃殺されなければならなかったのか?



Renault 4CV 本書は警察小説の金字塔でもあり、北欧ミステリの元祖といってもいいだろう。

警察小説の主人公といえば、もっさりした中年で家庭も崩壊しているというのが、もはやテンプレ化しているが、その大元になっているのがマルティン・ベックなのである。

ただ、この小説の面白さは、私はリアリズムとチームプレイだと思っている。
なぜ、市バス内で大量殺戮が行われたのかという謎自体も魅力なのだが、それを皆で力をあわせて解いていくというその地道な過程がいいのだ。
マルティン・ベックは良い刑事ではあるが、決してスーパースターではないし、そうは描かれていない。
事件解決には、良き相棒であるコルベリをはじめ、チームのメンバーや、また地方警官の足で稼いだ努力が大いに寄与している。
『アベンジャーズ』ははっきりいってアイアンマンが一人いれば何とかなった感じでもあるが、マルティン・ベックは、ベック一人ではどうにもならないのだ。
チームのメンバーはいずれも個性的だが、彼らとてどこにでもいるような普通の人間で、捜査手法も地道極まりない。今時の何でもサクサク進んでいくのを好む若い読者からすれば、展開がもたついていると感じるかも。

実際、殆ど進展がないシーンは続くし、解決の糸口を掴むのも殆ど最後の最後になってからなのだ。だが、その「もたつき」こそがマルティン・ベックシリーズの魅力なのだとも思う。
展開が止まっているなかで、私たちが実際に誰か他人のことを理解するのと似た感覚で、刑事たちを、また人間というものを知ることができるのだから。

この警官たちの人知れない地道な努力を引き立てるのは、やはり時代背景だろう。
舞台となっている1960年代後半は、スウェーデンでも大々的な反ベトナム戦争、反米のデモが吹き荒れている。デモの構図的には「警官VSデモ隊」で、その様子は本書の冒頭のとおりだ。アメリカ大使館を守るため、市民からなるデモ隊の人々の血を流したということで、警官は信頼を失っていた最中だ。
まだ胸のふくらみもないような13歳の少女が屈強な警官に乱暴にねじふせられるシーンが印象的である。ちなみに、このシーンで少女が持っていたプラカードは、旧訳では「お○んこをやりつづけて、どんどん警官を増やせばいい!」で、新訳では「警官たちをやっちまえ!(ファック)」である。かなり印象が異なる。本書が最初に訳されたのは60年代である。まだ当時の日本人には、Fワードのニュアンスはわからなかったのかもしれない。概して旧訳のほうがいわゆる「美しく懐かしい日本語」なのであるが、ところどころ、こういうドぎつい表現もあったりして、そこも面白いなぁと思う。

また北欧ミステリといえば、「暗くて陰惨、そして絶望」と相場が決まっている。だが、訳者の柳沢さんも指摘している通り、『笑う警官』にはアイロニカルな笑いがある
どこまでが狙ったものなのかはわからないが、例えばベックのチームメンバー評はこんな具合だ。「コルベリ。傲慢な態度に肚の突き出た肥満体だ。ストイックなメランダーは、その外見から無愛想で退屈そうな男でも優勝な警官になれると人に思わせるのは無理だろう。鼻の赤い、どこからみても平凡な男ルン。グンヴァルト・ラーソンは圧倒的な体躯で人に恐怖感を与え、冷たい青い目で人を睨みつけ得意がっている。」
…ちょっと笑っちゃわない?

それから忘れてはいけないのが、女性の描き方だろう。時代的なものもあるのだろうが、割と散々な扱いでちょっと気になった。
まだチーム内には女性捜査官はいないし(『ロゼアンナ』では囮捜査に婦警が起用されるが)、ベック自身、専業主婦の妻を毛嫌いしてもいる。
何より『ロゼアンナ』のロゼアンナも、『笑う警官』のテレサも確かに病的な色情狂で、それがために被害者となっているのだが、結果として、そのことで罰されているかのような印象さえ受けてしまった。







刑事マルティン・ベック 笑う警官 (角川文庫)


マイ・シューヴァル (著), ペール・ヴァールー (著), 柳沢 由実子 (翻訳)
出版社: 角川書店 (2013/9/25)

Knindle版はこちら→ 笑う警官 刑事マルティン・ベック







刑事マルティン・ベックロセアンナ (角川文庫)

マイ・シューヴァル (著), ペール・ヴァールー (著), 柳沢 由実子 (翻訳)
出版社: KADOKAWA/角川書店 (2014/9/25)


Kindle版はこちら→ ロセアンナ 刑事マルティン・ベック





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category: クライム・警察・探偵・リーガル

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  角川  文庫  読書会  警察 
2015/08/11 Tue. 20:06 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

Re: タイトルなし

naoさん、こんにちは。

> 連日の人民元切り下げ(変動相場制?)、持ち株はその反動を喰らってはおられませんか?

影響大有りですよ!
でも、これまでが低迷しすぎていた株だったので、これくらいですんでよかったかな。
金融株は、大部分処分しているので…
しかし、中国もいい加減にしてほしいですね。アベちゃんは政権もやばそうだし、何か打ち出してくれるといいのですが。

『わたしは英国王に給仕した』いいですね!
私も読みたいけど、もう少し涼しくなってからですかね。
今はボケた夏でも楽しめるB級もののほうが気分かも。
『笑う警官』も悪くはないけど、どうも夏向きじゃないんだよなぁ…

Spenth@ #- | URL | 2015/08/13 Thu. 11:45 * edit *

連日の人民元切り下げ(変動相場制?)、持ち株はその反動を喰らってはおられませんか?
自分は喰らいました・・ふう。
まぁ・・あの国はいろいろやらかしてくれます。

<英ガーディアン紙が選ぶ「死ぬまでに読むべき」必読小説1000冊>を、
参考に読書中ですが、
本作『笑う警官』もリストに入っておりますよ。

現在そのリストから『わたしは英国王に給仕した』フラバルを遅く読んでおりますが(ブームの去ったあと)、いいですな・・なかなかです。
『異邦人』のうすい一冊もいまさらながら再読しましたが、このトシで読んでもやはり名作でありました。

・・以上短く。
読書会のレポート期待しております!

株も読書もリスク回避・・ではまた!

nao #6gL8X1vM | URL | 2015/08/13 Thu. 11:33 * edit *

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