Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

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人類暗号 / フレドリック・T・オルソン 

暑さも多少和らいで、冷房なしでも過ごせるようになった。
友人が「夏も第四楽章ね」と詩的なことを言っていたが、朝晩は虫の音が耳に心地いい。
今年は秋の訪れが早いのかな?

さて、『笑う警官』のあとは、同じスウェーデンの小説家フレドリック・T・オルソンのSFスリラーを。
北欧といえば、だいたいが暗くて陰惨な警察小説というのが定番で「も〜、それいい加減飽きたから」状態だったが、ついにこういうのが出るようになったんだなぁ。
主人公はスウェーデン人ではあるが、言われなければ北欧作家によるものだとわからないのではないだろうか。逆にいえば、お国色が薄れたということでもあり、善し悪しか。
『人類暗号』というタイトルと、この表紙からだいたいどういう内容かはおわかりかと思うが、それは多分お察しの通り(笑)。
しかし、デビュー作とは思わないほどの出来で、すでに世界十数カ国で翻訳されているという。
主人公は、元スウェーデン軍の暗号解読者、ウィリアム・サンドベリ。生きる気力を失い自殺を図ったウィリアムは、元妻クリスティーナの通報によって一命を取りとめるが、病院から何者かに拉致されてしまう。
ウィリアムが連れてこられたのは、山の中の城だった。目が覚めたときに現れたのは、コナーズ将軍と名乗る男だった。自分たちは全世界の安全保障を追究している国際協力機関で、ウィリアムに彼らが傍受したある数列を解読してほしいという。
コナーズ将軍の話を聞いたウィリアムは、正直好奇心の高まりを感じずにはいられなかった。なんといっても暗号解読は専門分野なのだ。だが、組織は謎だらけ。暗号の全体像も出所も、解読の目的すらも明らかにしようとはしないのだ。
作業に行き詰まり城内をうろついていた時、ウィリアムは偶然ジャニーンに出会う。アムステルダム大学で古代言語学を研究していた彼女も、ウィリアム同様に拉致されここに連れてこられたのだ。ウィリアムが連れてこられる数ヶ月前のことだ。ジャニーンがいうには、ウィリアムが連れてこられたのは"前任者だった女の人がいなくなったからだ”という。
確かに、ウィリアムが取り組んでいる膨大な量の数列には、彼以前にこれと格闘していた人物を思わせる痕跡が残されている。だが、その人物はなぜ途中でやめてしまったのか?今、どこにいるのか?
同じ頃、ウィリアムの前妻クリスティーナは、病院から忽然と姿を消したウィリアムを案じていた。ウィリアムの身の回りのものは、それこそ衣服からキッチン用品までなくなっており、警察は意図的な失踪だと判断した。だが、クリスティーナはウィリアムは何者かに連れ去られたのだと確信していた。ウィリアムの自発的な失踪なら、置いていくはずのないものが残されていたからだ。
新聞社に勤務するクリスティーナは、インターンのレオの助けを借り、ウィリアム同様の失踪を遂げたジャニーンのパートナーに会うためアムステムダムに赴くのだが、そこには思いも寄らない悲劇が待ち構えており…
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今のところ、映画化権云々という話は聞かないが、戦闘機が病院を爆破したり、レオのカーアクションがあったりと映像映えしそう。
冒頭、マイケル・クライトンとダン・ブラウンの名前を出したが、まさしく『インフェルノ』から神曲と中世的オドロオドロしさを抜いて、かわりにマイケル・クライトンをプラスしたような感じ。しかし、ストーリーは『インフェルノ』よりも捻りがあって読ませるし、結末も哲学的でさえある。
アメリカ的ハッピーエンドとは言えないラストが気にいらない人もいるかもしれないが、私はこれ以上のものはないと思うな。だって他にどうしようもないではないか。
fredrik t olsson

邦題は『人類暗号』だが、スウェーデン版の直訳は『鎖の終わり』で、英題も『Chain of Events』
ちょっとネタばらしをしてしまうと、人間のジャンクDNAとして知られる非コード配列が地球外生物の遺伝子コードだと判明したということから着想を得たのではないだろうか。これは、2003年に完了したヒトゲノムプロジェクトによって明らかにされたことだ。研究に携わったある教授は、人間のジャンクDNAは地球外生物のプログラマーがつくりだしたものなのではないかと言ってもいる。
このとき思ったものだ。うわぁ〜もしかしてシュメールの粘土板の解読って事実なのじゃないの?ちなみにその粘度板には、異星人アヌンナキが自分と猿の遺伝子を持いて地球人を創造したと書かれているのだとか。
幸か不幸か、本書には宇宙人もシュメール人も登場しない。もっとリアリティあるマジメで切迫したエンタメに仕上がっている。

登場人物の造形もまた巧みで、私のお気に入りはウィリアムの元妻クリステーナの部下レオである。新聞社でインターンとして働くレオは、当初、今時の若者という印象なのだが、危機を乗り越えるごとにその芯の強さと能力をみせる。そして物語の佳境にウィリアムや皆が絶望にのまれる中、「未来は自分で切り開くものだ」と言って皆を鼓舞する。
ある意味主役よりも活躍したりする脇役だったりして。
しかし、若いっていいなぁ…





人類暗号〔上〕 (ハヤカワ文庫NV)
人類暗号〔下〕 (ハヤカワ文庫NV)
フレドリック・T・オルソン (著), 熊谷 千寿 (翻訳)
出版社: 早川書房 (2015/6/24)

Kindle版はこちら
人類暗号(上) (ハヤカワ文庫NV)
人類暗号(下) (ハヤカワ文庫NV)







インフェルノ (上) (海外文学)
インフェルノ (下) (海外文学)

ダン・ブラウン (著), 越前 敏弥 (翻訳)
出版社: 角川書店 (2013/11/28)


Kindle版はこちら
インフェルノ(上下合本版) (角川書店単行本)







シュメル神話の世界―粘土板に刻まれた最古のロマン (中公新書)

岡田 明子 (著), 小林 登志子 (著)
出版社: 中央公論新社 (2008/12)


Kindle版はこちら
シュメル神話の世界―粘土板に刻まれた最古のロマン (中公新書)



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category: サイエンス系ジャンルミックス

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  早川書房  文庫 
2015/08/19 Wed. 22:06 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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