Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

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紙の動物園 / ケン・リュウ 

ようやく重い腰をあげて『紙の動物園』 を読んだ。
金曜はもう読書会だというのに、今朝までテニスをチラ見しつつのダニエル・シルヴァ祭りだったのだ。
明日は終日外出しなければならず、もう時間がなくてあせったのなんの。

で〜も、間に合ったZooooo!!!
(でもタイトルは、Zooじゃなくてmenagerieのほうなのだ。)

アマゾンによると、なんでもあの又吉直樹氏がTVで推薦した話題作であり、ヒューゴー賞、ネビュラ賞、世界幻想文学大賞受賞の三冠に輝いたともいう。(表題作が)
そういえば、春のコンベンションでも北上次郎氏が熱く推薦していたっけ。
北上さんはたいてい盛ってあるので、話半分に聞いていたのだが、それは大きな間違いでした。ごめんなさい。

Ken-Liu.jpg


ただし、15篇もの物語があるので、読書会をやるのはちょっと難しそう。
好みも割れるし、あまり好きではない物語は覚えてない人もいるだろう。(←私です!!!)
短編集は、過去一回だけ『招かれざる客たちのビュッフェ』 でやった記憶があるが、人気投票で終わってしまったような…
さて、さて、どうなることでしょうか。

ちなみに、本書に収録されているのは下記の15篇の物語
・紙の動物園
・もののあはれ
・月へ
・結縄
・太平洋横断トンネル小史
・潮汐
・宇宙選抜種族の本づくり習性
・心智五行
・どこかまったく別な場所でトナカイの大群が
・円弧
・波
・1ビットのエラー
・愛のアルゴリズム
・文字占い師
・良い狩りを


最先端科学を突き詰めていけばいくほどに、哲学的の問題になるが、それを顕示しているかのような短編集だと思う。
作風はウエットで、この湿り気具合はアジア人ならではかも。同じ中国系アメリカ人のSF作家テッド・チャンの作風にも似ているが、チャンほど重くもない。
ちょっと思い立って、チャンの『あなたの人生の物語』 もパラパラと読んでみたりもしたが、私はケン・リュウのほうがポップな分、読みやすいと思った。
「1ビットのエラー」の著者付記で着想を得たといっているチャンの短編「地獄とは神の不在なり」もこれに収められている。

また、古澤氏のあとがきにもあるのだが、アメリカで生まれ育ったテッド・チャンに比べて、物心ついてから移住したケン・リュウの作品は、より中国的でもある。見た目も中国っぽいというかチベットっぽいというか。
中国各地の古い物語を編んだ説話集に「聊斎志異」というのがあるのだが、それらに少し雰囲気が似ているかもしれない。一番最後に収めてある「良い狩りを」などはその最たるものである。そういわれてみれば、「聊斎志異」はかなりSF的だったりする。


origamianimal13.jpg


ちなみに、この表題作「紙の動物園」は、Kindleのサンプル版だけで読むことができる。これを読んで気に入れば、DLすればいいし、お気にめさなければやめればいいのだが、ここでやめられる人っているのだろうか?!
私は自分自身のこともあって、これにガツーンとやられたんだけど…。

母親の息子への愛情にホロリとさせられる作品なのだが、これが当時の中国の背景とあいまってどうにも切ない。
今や、中国人のイメージも変わって、"銀座にバスで大挙してやってきて爆買い三昧"だが、この物語にでてくる主人公"ぼく"の母親は、ひと世代前の世代だろうか。なにしろ、"ぼく”の母親は、アメリカ人の父親にカタログで選ばれたのだ。
日本でも同様にひと頃、嫁のなり手がない地方の農村で中国人花嫁を受け入れていたことがあったのではなかろうか。
そんな母を短絡的に軽蔑し、距離をつくる"ぼく”と、それでもずっと息子を想い続ける母親…。
私自身も母と仲が悪いわけでないのだが、あまり相性がいいとは言えないので、なんだか身につまされてしまった。自分自身に、そういう無償の愛を注ぐはずの子供がいないことも、残念に思う。
無償の愛というのが存在するとしたら、それは母親の愛情なのかもしれないし、母親というものは、確かに魔法が使えるのかもしれない。

「もののあはれ」も好きだし、「結縄」も面白いと思ったが、ほかに印象に残ったのは、「円弧 アーク」である。
SFで非常に好まれる"不老不死"をテーマにしているのだが、オチがこの手のものにお決まりの空虚さではないところがよい。具体的にどういうところがいいのかは、読んでのお楽しみということで。

私自身は、もしかして現実にも人類は死を克服してしまうのではないかと思っている。ジョナサン・ワイナーのようなキテレツ科学者のいう『寿命1000年』も絵空事というわけでもないだろう。
しかし、そういう選択肢ができたとき、自分はどうするのだろうか。私ももう人生もとっくに折り返し地点を過ぎ、老いをいうものを日々意識するようになったせいか、その手のことをよく考える。
肉体のリペアはできても、精神のリペアはできないとうが、どうなのだろうか?
どこからどこまでが、自分で、どこからどこまでが自分ではなくなるのか。そもそも自我とは何なのだろうか。これは「愛のアルゴリズム」にも通ずる問題か。

インタビューでは、ケン・リュウは、生きているうちに目にしたいSF的イノベーションの第1位に"不死"を挙げ、「生はあまりにも貴重な贈り物で、それが終わらねばならないのはただ残念でしかない」と言っているのだが、面白いことに、物語ではそうは言ってはいないのだな、これが。




紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

ケン・リュウ (著), 古沢嘉通 (編集, 翻訳),
出版社: 早川書房 (2015/4/22)


Kindle版はこちら
紙の動物園






あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

テッド・チャン (著), 浅倉 久志・他 (翻訳)
出版社: 早川書房 (2003/9/30)


Kindle版はこちら
あなたの人生の物語


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category: SF ファンタジー

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag:   読書会  SF 
2015/09/03 Thu. 00:32 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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