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読書日記、ときどき食日記

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ブラックランズ / ベリンダ・バウアー 

獄中にある連続猟奇殺人犯人と12歳の少年との息をつかせぬ心理戦が見所のサイコサスペンス
2010年のゴールドダガー賞受賞作品だ。この英国推理作家協会が選ぶ賞に、新人作家の作品が選ばれるのは異例の快挙なのだという。

サイコパスとの心理戦といえば「羊たちの沈黙」がまず思い浮かぶが、本書の魅力は異常性や猟奇性にあるのではない。
そちらを期待していると確実に裏切られるかも。ここで描かれているのは、それとは真逆の家族愛なのだ。
こういうのは、万人受けするだろうし、映像化のオファーもくるのではないか。

さて、主人公は12歳のスティーヴン。シングルマザーの母レティと祖母、弟の4人で暮らしている。19年前に、レティの弟ビリーが子供ばかり狙う連続殺人犯によって連れ去られ行方不明になってから、祖母は今でもビリーを待ち続けている。祖母は未だ、ビリーの死を受け入れることができないのだ。それによって、家族は未だ事件から立ち直ることができない。
ビリーの遺体さえ見つかれば、祖母もそれを受け入れ事件は終わるのではないか、我が家は普通の家族になれるのではないか。そう思ってスティーブンは、今日もエクスムーアの広大な大地を掘る。
だが、3年たっても何の成果もみられない捜索に、ステーブンはうんざりしてしまう。そして、もっと直接的な方法を思いついた。犯人のエイヴリーに手紙を書き、ビリーの遺体の埋まっている場所を聞き出すのだ。
こうして、連続猟奇殺人犯とビリー少年の往復書簡ははじまる。
エイヴリーにとって自らの小児性愛を満たすための殺人は至極正当なものだった。身勝手で、良心も反省もない。服役当初から彼の関心はいかに刑期を縮小するかにあった。英国には死刑はないから、何人殺そうが終身刑。終身といえど絶対的ではないから、事と次第によっては出所の可能性もある。(絶対的終身刑のある国は少ない)
次第に、エイヴリーは、短いメッセージのやり取りの中で、差出人を支配することに興味を覚えていく。塀の中にいながらにして支配することで、子供を犯し殺害する興奮を再び呼び起こしていくのだが...

ここからは急展開。臨場感たっぷりにサスペンスを味わえると思う。

犯罪によってもたらされた遺族の悲しみは、他人の想像を超えて何十年はおろかときに世代を超えて遺族を蝕む。ビリーがいなくなってから祖母はレティへの愛情にも興味を失い、嫌みをいうだけの扱いにくい人間になり、レティはその祖母から捨て置かれたまま大人になったため、子供にうまく接することができない。特にスティーブンとレティの気持ちは完全にすれ違っている。
事件によって家族は壊れてしまったのだ。
自分が頑張りさえすれば、家族を蝕む不幸な空気も、貧困さえも変えられるかもしれない。その一心で、傷つきながらも恐ろしい相手に一人で立ち向かっていくスティーブンに思わず涙腺がゆるむ人もいるだろう。
少年の描き方が、ちょっとずるいと言ってしまうほど上手い。

スティーブンとエイヴリーの結末はどうなるのか?これは読んでのお楽しみだが、最後の最後、思いもよらないことが起きる。
ラストはいささか出来過ぎな感じもしなくもないが、この心憎いばかり演出こそが、ゴールドタガー賞受賞に寄与したのではないだろうか。


ブラックランズ (小学館文庫)ブラックランズ (小学館文庫)
(2010/10/06)
ベリンダ・バウアー

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category: クライム・警察・探偵・リーガル

thread: 推理小説・ミステリー - janre: 本・雑誌

tag: ダガー賞  サイコサスペンス  海外ミステリ  英国 
2011/02/24 Thu. 12:26 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

Re: Spenth@さんこんばんは。

コメントありがとうございます。
> 難解だとありましたが、『オリクスとクレイク』が気になっていたりします。(侍女の物語が面白かったようなおぼろげな記憶があるので。。。)

不親切なところも若干あるかもしれませんが、難解ではないと思います。
読み手によって受け取り方が異なる類いの小説だと思いますが。

ご興味もたれたのなら、是非是非。

Spenth@ #- | URL | 2011/02/25 Fri. 15:48 * edit *

Spenth@さんこんばんは。

やっぱり読むのが速いですね! すごいです。『ブラックランズ』著書は女性なんですね。感動作のようですね。あらすじが詳しく書いてあって、参考になります。難解だとありましたが、『オリクスとクレイク』が気になっていたりします。(侍女の物語が面白かったようなおぼろげな記憶があるので。。。)

NZ地震、かなり大規模だったようですね。一刻も早く不明者を見つけてあげてほしいですね。。。

ayah #- | URL | 2011/02/24 Thu. 18:33 * edit *

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