Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

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悲しみのイレーヌ / ピエール・ルメートル 

コメダ珈琲にはじめて入った。
KIMG0030.jpg
コメダといえば、シロノワール!
客層は割と高めで、私のジム友くらい。
たぶん、スタバとかでくつろげない層のためのお店なんだろうなぁ…。
わかるわ〜。私もスタバよりルノワールとかのほうが好きです。

今日の本は、おフランスのミステリ「悲しみのイレーヌ」。フレンチミステリなのに、おしゃれなカフェよりもコメダのほうがなんとなく似合うんだな。フラチーペより珈琲!


さて、『悲しみのイレーヌ』は、ピエール・ルメートルのデビュー作だ。そればかりか、『その女アレックス』 で活躍したカミーユ警部シリーズの第一弾でもある。
『その女アレックス 』では、身長145cmの小柄なカミーユ警部が主役というわけではなく、主体はあくまでアレックスだったが、本書では主役といっていい。そしてタイトルのイレーヌは、彼の妻なのだ。

物語は、パリ北西部の郊外、クルブヴォアで残酷で凄惨な事件が起こるところから始まる。現場は人気のない廃墟を改装したロフトで、最悪の光景がひろがっていた。切り落とされた指や、大量の血が目に入り、汚物と血の臭いが鼻をつく。被害者は二人の女性だと思われる。壁には女の頭部が打ち付けられており、血文字で「わたしは戻った」と書かれていた。そして血文字には、指紋のスタンプが押されていたのだ。それは文字通り、指紋ではなく指紋のスタンプだった。
そして、フランス北東部トランブレの未解決事件に、これと同様のスタンプがあったのだ。トランブレの事件もまた、クルブヴォアの事件に引けをとらないくらい残酷で凄惨なものだった。
カミーユは、トランブレの未解決事件についてのある重要な特徴に気づくのだが…
Caravaggio.jpg



後半も後半、読者は「あっ!」と言わせられる。さすがにこれに最初から気づく人はいないだろう。
小説ならではの騙しというか、なんというか。かといって、叙述といったありきたりなものでもない。
「アレックス」もガランガランと音を立てて、章立てごとに見える世界が変わったが、本書も負けてはいない。

最近、横浜市大の谷崎潤一郎の講座を受講しているのだが、谷崎は何を書くかというよりも、いかに書くかにこだわった小説家だった。なんだかその谷崎を思い出した。

こんな作品をひっさげてデビューしておいて、その上『その女アレックス』 のようなものを書いたりしたら、この先どうするのだろかと心配になってしまうほどだが、結局のところ、小説とは、その主体がどうなのかよりも、私たちにどう読ませるのか次第なのかもしれない。そして、ルメートルはそれが非常にうまいのだ。

そして、特筆すべきなのは、本書が文学やミステリのようなジャンル小説が人に求められる理由に触れていることだ。
「作家は死を夢見る人々のために死を描き、悲劇を求める人のために悲劇を書いています。しかし人は常に多くを求めます」という言葉のインパクトはどうだろう。
あまりに的を得ており、皮肉られている気分にさえなってしまった。アメリカンサイコが出た当時それは衝撃を受けたものだったが、いまやそれは刺激でさえなくなっている。ルメートル作品は恐ろしく残虐なのは、そのせいなのだろうか。
作家はいかに書くかにこだわるが、読者もいかに読むかということが重要なのだろう。"文学というゆがんだ鏡"に映し出されるのは、自分の真実なのだ。

「その女、アレックス」に登場した癖の強いカミーユの部下、ルイとアルマンも健在。健在というか、本当はこれがスタートなのだけど。
貴族のぼんぼんのルイと、しみったれもここに極まれりのアルマンだが、第一弾だけあって、特にアルマンの吝嗇ぶりは丁寧に描写してある。
作中、カミーユの妻のイレーヌはアルマンがお気に入りだとカミーユは言っているのだが、なんだかそれ、とてもよくわかる!彼のセコセコした吝嗇ぶりが、このシリーズのやるせなさを救ってもいる。
彼は意外に女性票が稼げるキャラだと思うな。




悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)

ピエール・ルメートル (編集), 橘 明美 (翻訳)
出版社: 文藝春秋 (2015/10/9)



Kindle版はこちら
悲しみのイレーヌ (文春文庫)


Kindle版には、杉江松恋さんの解説がついていません…
でも、Kindleがでてれば、Kindleのほうを買っちゃうんのよね。
「アレックス」「イレーヌ」とくれば、やはり「死のドレスを花婿に」と「天国でまた会おう」も読みたいなぁ…





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category: ミステリ/エンタメ(海外)

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  このミス    フランス  文春  文庫 
2015/10/23 Fri. 00:02 [edit]   TB: 0 | CM: 4

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この記事に対するコメント

Re: タイトルなし

私もお金とは仲良しになりたいと日々願っておりますです!

欧州緩和にも安倍政権にも期待しています。
誰か、助けて〜〜〜〜〜!!!(笑)

Spenth@ #- | URL | 2015/10/24 Sat. 14:49 * edit *

あっ・・コメントに名前が消えておりましたか。
気がつきませんでした・・陳謝。
内容からしてヘンな筆致なので、
ごぞんじの、と記しても大丈夫かも。
マジメな文章は書けないのでした。

今回読書会でやや孤立されたご様子?
みんな🐱かぶっておられるのでしょう。
それはともかく拝金までいかなくても、
たくさんのお金と仲良くなりたいです
(なれそうにもないですが)。

ふと思い出しましたが、映画『ザ・ファーム』での
トム・クルーズの走り方(硬直姿勢)はちょっとおかしかったような。

欧州他緩和の傾向がもっとすすめば、
日経の再度20000越えも年内にあるかも。
年末はだいたいひょこひょこ上がる感じ(傾向?)なので、
そのうちSpenthさんの持ち株も生き吹き返しますって。

今日は全国的に秋日和!
お出かけ(撮影)日和!
では!

nao #6gL8X1vM | URL | 2015/10/24 Sat. 11:05 * edit *

Re: タイトルなし

おはようございます!
ところで、なんでコメからnaoさんのお名前が消えたの???
とよく考えたら、ここのとこずっとここはnaoさんと私の通信欄みたいなものになってますよね(笑)
こんな過疎ブログに付き合ってくださって、いつもありがとうございます。

「哀しみのイレーヌ」は・・・たぶん、これ今年のミステリランキングの大本命じゃないかな?
それに、どの本にもそれぞれ旬があるものですが、ルメートルは絶対に今年読むべきですよね。 11月には来日されるそうですし。
なので、次回読書会の課題本に決定しました。

図書館予約、はやく順番がくるといいですね。
「天国でまた会おう」、私も読みたいです。


>Spenthさんのジム通いはしかし痩せるためではなく。
>美味しいもの(スイーツ)を食べてるための現状維持を図るものなのですなぁ・・。

いえ、現状維持っていうのが一番難しいのですよ(笑)
ジム通いといっても、私のいく時間帯はほぼ「老人クラブ」ですからねぇ…
しかも話題はいつも「株価」ですし。
華麗にジャンピング・キャッチした分は、もう助かりそうにないんですが…

そして、実はあの写真はスマホなのです・・・
いいカメラとスマホ、ほとんど大差ないのは腕の問題???
というか、使い方を覚えないと!


>ユニクロを持ってるとのカミングアウトは正直ショック・・(ユニクロにおこられる)。

いえ、いえ、私、いつもデニムですよ?(笑)
あのブルーワンピは、イシグロさま用です!!!


>自分が提案したお題(グリシャム=法律事務所)の読書を
>その直前まで遅く先延ばしにするところ、親近感を覚えます

実は、面倒臭くて・・・(笑)
ただ、読み始めると90年代はじめのあの時代のギラギラ感が蘇ってきて、面白く読めました。
ほら、私は「拝金主義」の権化のようなものですから、ミッチの気持ちもよくわかるのですよ(笑)
昨日、ミッチに大いに共感できたといっていたのは、私だけだったような(笑)
どんだけ毒されて汚れとるのじゃ!!!と自分で自分に突っ込みを入れちゃいましたよ。

古典と新刊はよく取り上げていますが、こういう中途ハンパな時代のものって読み返すきっかけがないので、
それはそれで面白いですよね。

Spenth@ #- | URL | 2015/10/24 Sat. 08:56 * edit *

カミーユ警部シリーズ第一作・・読みたい。
図書館予約中であります。
このシリーズは三部作で区切りがつけれらるのでしょうか?
シリーズとしてはまだ継続中の様子でありますが。
「天国でまた会おう」(ゴングール賞・・昔からよく耳にしますが特に興味ナシ)も読む予定でおります。

Spenthさんのジム通いはしかし痩せるためではなく。
美味しいもの(スイーツ)を食べてるための現状維持を図るものなのですなぁ・・。
写真のスイーツはたいへん美味しそう。
甘い香りも伝わってくる感じで・・と言っても、
オッサンの自分が立ち寄ることのできる店ではなさそうですが。
「痩せるため」と「美味しいものを食べるため」とでは正反対。
こういうところspenthさんが凛々しく思えるところであります。
なのでユニクロを持ってるとのカミングアウトは正直ショック・・(ユニクロにおこられる)。
あのブルードレスのイメージが・・ベニスの貴婦人のイメージが危うく崩壊。

谷崎潤一郎の講座(アカデミックだ!)で受けた見識も、
読み方に反映されている様子・・スゴイ。
自分はその時、その場では感心してもすぐ忘れてしまうのでした。

読書会での活躍(レポート報告)期待しております。
自分が提案したお題(グリシャム=法律事務所)の読書を
その直前まで遅く先延ばしにするところ、親近感を覚えます
(そういうところ自分と似ているから)。
ではまた!

#6gL8X1vM | URL | 2015/10/24 Sat. 08:25 * edit *

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