Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

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悲しみのイレーヌ読書会 

11月の読書会の課題本は、ピエール・ルメートルの『悲しみのイレーヌ』。
昨年の『その女、アレックス』に続いて、ルメートル人気は衰え知らず。
横浜の大型書店でも平積みになっていたし、Amazonでも売れているようだ。

休みの日の読書会とあって、男女比はいつにない良いバランス!
中には一年ぶりの参加の方も。(次回も是非是非きてくださいね)
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場所は横浜駅近くのいつものお店。お料理も代わり映えしない…
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ということで、今年の話題作『悲しみのイレーヌ』読書会のスタート!
※ 以下、ねたバレがあります。未読の方はご注意ください。




さて、恒例の採点だが、今回の平均点は6.9点。
思ったよりは高得点だったが、癖のある作品ということもあり評価は割れたかな?

分布は以下の通りだった(参加者12名)
3点・・・1人 
4点・・・1人
5点・・・1人
6点・・・1人
7点・・・1人
8点・・・5人
9点・・・2人


ボリュームゾーンは8点。
ちなみに3点の方は、おまけをして3点とのことだった(笑)


マイナス要素としては、
グロテスクで、救いがない
*(特に女性には)すすめられない
*人が殺されすぎ

*デビュー作だからか、いささか気負いすぎ(知っている情報を全部吐き出した感がある)
*「さあ、ここで驚け!」とばかりのあからさまな作為を感じる (`^´) ドヤッ!

*犯人の人となりや犯行動機などが殆ど描かれておらず、物足りない

*単なるミステリの傑作のいいとこどり(オリジナリティがない?)
*多くの先人のミステリを引用してはいるのだが、もっと何か料理できたのではないか

*ルメートルは今年3作品読んでしまったので食傷ぎみ(←それは個人の事情では?)





逆に良かった点としては、
*キャラクター造形が上手くバランスがいい
*感情移入して読めた

*構成が上手い
*ストーリーテラーで一気に読ませる
*安易な心理描写に頼らず、動作で人物を書き込んでいくのが上手い(映像的)

*ミステリの歴史のようなものが結実した作品(多くのミステリが多く登場している)

*作品ごとに趣向を変えられる力量を評価




この作品の評価で大きく分かれたのは、小説の実に80パーセントを占めている"作中作"をどう感じたのか、ではないかな。
後半も後半まで読んできた物語が、犯人の草稿だとわかった時、読者は戸惑う。それこそがルメートルの狙いなのだろうが、それが現実なのか、フィクションなのかの区別は曖昧にされたまま据え置かれているのだ。
得点が低かったのは、これに対して、「はしごを外された」とか、「読者に対してフェアではない」と感じたりした人だった。

私も含めて高得点だった人は、逆に素直にこの驚きを楽しんだのじゃないか。
実際、良かった点として、多くの人が「構成の巧さ」を挙げてもいる。

この作中作は、著者ルメートルが犯人の視点と想像力を借りて読者に届けているものだ。現実のイレーヌは可愛らしい妻ではなかったかもしれないし、現実のカミーユはそれほどいい人ではないのかもしれない。
事実、現実のシーンになってからは、作中作で金に困っていたマレヴェルに小切手を切ってやるカミーユとは打って変わり、「情が深くて優しい上司なんてものは、小説にしか出てこないんだ。おれはお前を殴り倒してやりたいね。(中略)…涙の最後の一滴まで搾り取ってやる。」といった辛辣な言葉をマレヴェルに浴びせてもいる。
しかし、ルメートルが『アレックス』で読者に体験させたように、他人からどう見えるかは状況次第でガラリと変わるものでもあり、その時々では、その見え方は正しくて同時に真実でもあるということもできるのではないか。
著者はカミーユに「自分たちは文学という歪んだ鏡の前に立っている。そしてそれがどんな真実を映し出すのかが気になっている」と言わせているが、その歪んだ鏡に映る歪んだ自分の姿もまた、真実であることに変わりはない。

『アレックス』との比較では、『アレックス』より好きだという人も意外に多かった。
また、『アレックス』のほうを先に読んだ人も「ネタバレ」についてはそれほど気にならなかったようだ。

『アレックス』より好きだというのは、おそらくより感情移入して読むことができたからだろう。同じカミーユ警部のシリーズではあるが、『アレックス』の主体は飽くまでアレックスという女性だ。本作『イレーヌ』のほうが、よりカミーユやルイ、アルマンのことが書き込まれている。(犯人の草稿を通してではあるが)そして、犯人が刑事たちを「好意的に」描いているため、より好ましく感じることで感情移入させていると言っていい。なかには、カミーユ萌えしたという人も…
ちなみに、一番人気はやはりカミーユで、続いてお金持ちで性格も良いルイ、どケチのアルマンの順だった。


「作中作」のほかにマイナス要因としてあげた人が多かったのが、「犯人のことがほとんど描かれてない」ということだった。
動機については一応、エピローグで短く語られてはいるものの、例えば数あるミステリの名作の中から、なぜ『ブラック・ダリア』や『アメリカン・サイコ』を選んだのかや、なぜそんな手間のかかることをやったのかについても心理分析的なものは全く書かれていない。
ただ女性が残酷に殺されるだけだといえば、その通りなのだ。
ちなみに、『悲しみのイレーヌ』の原題は「Travail soigné」で「手の込んだ仕事」という意味だそうだ。

他方で、逆に得体が知れないからこそ怖いということもできる。『アメリカン・サイコ』のフィリップなども、ただ単に人殺しをしたい衝動があるということだけだからこそ、センセーショナルだったし人々に恐怖を感じさせたのだ。
いわゆるサイコパスで、何を考えているのかわからないし、分かりたくもないという点では、今年『絶歌』を出版して物議を醸した元少年Aも同様かな…

エピローグで、逮捕された犯人が「わたしは正真正銘のプラグマティストです。(中略)しかしスキャンダルや、恐怖を呼び起こす暴力犯罪といったものの助けを借りれば、わたしの本だって何百万部も売れるわけです。(中略)だから障害を迂回して進んだ、それだけのことです。それでも、自分で勝ち得た名声だということに変わりはありません。」と言っているのだが、これも『絶歌』の状況と同じだったり…


変わったところでは、こんな感想も。
*ディーヴァーや、金田一少年の事件簿に似ている
確かにディーヴァーもルメートルも驚きの要素はあるが、
…に、似てるかな???


そうそう、ルメートル氏はミステリの趣味もよいが、さすがに絵画にも造詣が深い。
画家でもあるカミーユの母が好きだったのはカラヴァッジョだったが、国立西洋美術館にて来年3月からカラヴァジョ展が催される予定だそうだ。


ということで、読書会レポはおしまい。

来年1月の課題本は、ジョー・R・ランズデールの『ボトムズ 』です!





悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)
ピエール・ルメートル (編集), 橘 明美 (翻訳)
出版社: 文藝春秋 (2015/10/9)


Kindle版はこちら
悲しみのイレーヌ (文春文庫)







ボトムズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ジョー・R・ランズデール (著), 北野 寿美枝 (翻訳)
出版社: 早川書房 (2005/3/24)






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category: 読書会

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tag: 海外ミステリ  文春文庫  読書会  フランス 
2015/11/23 Mon. 21:55 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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