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読書日記、ときどき食日記

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死を忘れるな / ミュルエル・スパーク 

「死を忘れるな」 ってこれまたすごい題名だけど、
私は今にも死にそうなんですが…!!!

マイナス金利導入の効果なんて打ち消されたどころか、これ、、、かなりヤバい雰囲気なのでは…?
日経下げすぎでしょ・・・
年末から空売りしている人は笑いが止まらないだろうけど、いいときにジャンピング・キャッチしてる私なんて、もうね、嵐が過ぎ去るのを身を縮めて待つしかないわ…(iДi)


さて、さて、なんだか不穏な題名のこの本なのだが、意外にもシニカルな笑いにあふれている。
しかも、登場人物は「死」が間近に迫った老人ばかりなのだ。
以前、江戸川乱歩賞受賞作のある小説を読んだとき、「わがままで自分勝手な老人が主人公なせいか、全然面白くないわ」と思ったことがあるのだが、本書は逆にそこが面白いのだ。
書き手の技量でここまで違うのかとしみじみ。コスパ的にも精神的満足のためにも、つくづくも本は良いものを読むべきだと思う。と思いつつも、取るに足らないB級ミステリばかり読んでしまう私なのだった…
Muriel Spark in 1960

79歳のデイム・レティ(デイムは勲功章をうけた女性の称号)のもとに、ある日「死を忘れるな」という謎の電話がかかってくるところから物語は始まる。
次第にその電話は、ゴードフリーを始めとするレティの周囲の老人たちにも広がっていく…
各々にかかってくる電話の声は若者だったり、老人だったり人によって様々で、老人たちの反応もまた様々だ。
レティは疑心暗鬼にかられて遺言状を何度も書き直し、レティの兄のゴドフリーは昔の不倫を妻に知られるのを恐れつつも、新しい家政婦に下心を抱く。その妻のかつての有名作家のチャーミアンは若干認知症の症状を呈しつつも悠然と受け流す。
そして、業をにやしたレティは犯人探しを、引退した元主任警部のモーティマーに依頼するのだが…



本書に登場するのは少し変わったところのある老人ばかりだが、「ああ、そうそう、そういうことってあるよね」などと共感できることも多く、著者の観察眼に敬服させられる。
人間はレティのように昔のことであっても恋の恨みはなかなか忘れないものだし、ゴドフリーのように自分の反省すべき欠点は「人間みんな」に該当すると思いたがる。そして、人は恐れているものを嫌う傾向にある。
アイロニカルな笑いもそうだが、英国らしい洒脱な雰囲気もスパークの魅力だと思う。

「70を超すというのは戦争にいくことですわ。仲間はみんなもう死んだか死にかけているか、あらしたちはその死んだ人びと、死んでいく人びとのなかで生き残っていて。…」
これは謎の電話に悩むレティが、義姉の元メイドから言われた言葉なのだが、この言葉のなんと重いことだろうか。
ここに描かれている老人たちの様子は、まさに愛憎愛乱れるものだが、側からみるとかなりコミカル。人生とはそういうものなのかもしれないなぁと、少しぞっとしてしまう。
memento_mori_3.jpg

原題の「Memento Mori」は、ラテン語で「自分が(いつか)必ず死ぬことを忘れるな」という意味の警句だという。
Wikiによると、古代においては、 carpe diem(今を楽しめ)ということで、「食べ、飲め、そして陽気になろうという趣旨だったようだが、その後のキリスト教世界で違った意味を持つようになる。天国、地獄、魂の救済が重要視され、死が意識の前面に出てきたからだ。そのため、特にキリスト教徒にとっては、「死への思い」とは現世での楽しみ、贅沢、手柄が空虚でむなしいものであることを強調するものとなったという。
そこから転じて、この音葉には「冷水を浴びせる」という意味もあるそうだ。

物語の登場人物たちも「冷水をあびせられた」が、
私も頭上からバケツで冷水をバシャっとかけられた気分・・・




死を忘れるな (白水Uブックス)

ミュリエル スパーク (著), 永川 玲二 (翻訳)
出版社: 白水社 (2015/9/3)






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category: 文芸

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 英国  文庫    白水社 
2016/02/10 Wed. 15:27 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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