Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

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過ぎ去りし世界 / デニス・ルヘイン 

GWですね〜〜〜!
でも、私は平常運転なのだ〜〜〜!
さて、宿題も済ませたので、晴れやかな気分でジムに行ったのだが、これが激混み。
顔ぶれもいつもと違うし落ち着かないので、早々に退散して帰ってきた。
連休は家で読書でもするに限るわ。読もうと思ってKindleにDLしておいた本が結構あるのだ。

なかでも楽しみにしていたのは、ルヘインのコングリン三部作『過ぎ去りし世界』 だ。
コングリン三部作とは、『運命の日』 に始まり、『夜に生きる』 、そして本書「過ぎ去りし世界」の20世紀初頭を生きるアイルランド系アメリカ人のコングリン一家を描いた物語だ。

しかも、この三作はそれぞれの趣向が違うのだ。一作目はコングリン家の長男ダニーを主人公に据えて、ボストン市警のストライキを描いた歴史大河小説風な仕上がり。
コングリン家の長男、ダニーのほかに、黒人のルーサー・ローレンス、かのベーブ・ルースの視点からそれぞれの物語が語られており、群像劇的な描かれ方をしている。ルヘインの間口の広さとその時代感に圧倒される一冊でもある。
続く、『夜に生きる』 では、コングリン家の末の息子ジョーが主人公となる。『運命の日』 で幼く可愛らしかったジョー少年は、成長して”無法者”となり、裏社会でのし上がっていく。禁酒法時代を舞台にしたギャング小説といってもいいだろう。
横浜読書会で読書会をした時の評価は、意に反し低かったのだが、私は個人的には、ただでさえ駄作がないルヘイン作品のなかでもベスト・オブ・ベストだと思う。ルヘインの魅力たっぷり詰まったこの小説は、彼にエドガー賞ももたらした。
Lehane-500x333.jpg 
そして満を持しての三作目、である。
次こそはコングリン三兄弟の次男の物語なのかな、と思いきや、またもジョーの物語だというではないか!
あのジョーのその後とあって、一気読みしてしまった。

『夜に生きる』 で、裏社会の階段を上りつめたジョーは、その代償として最も大切なものを失う。
その後、ジョーはボスの座を親友のディオンに譲り、自らは相談役に退いて息子トマスとともに平穏に暮らしていた。ところが、そのジョーの命が何者かに狙われているという情報がもたらされる。
ジョーはすでに一線を退いた人間で、身内にもそうでないものにも富をもたらしてきた。敵もいなければ、誰かに恨まれる筋合いはない。誰が何のために命を狙おうとしているのか?
ジョーの暗殺は灰色の水曜日だという。
残された時間はあと一週間。誰が黒幕かを探るジョーだったが、それと前後するように、ジョーにはブロンドの少年の幻影が見えるようになっていた…

Havana, Cuba 33 
もう、もう、さすがはルヘイン〜〜〜〜!
なぜ、ジョーの命が狙われるのか?を中心に物語は展開し、ギャング界の非情が描かれている。と同時に、ジョーが自分の人生を振り返る内省的なものにもなっているのだが、この無常感はどうだろう・・・

暗いので嫌いという人も多いが、私は一番好きな作家かもしれない。
ミック・ヘロンのCWA受賞作『死んだライオン』もすごく良かったし、本書の後には、ウィンズロウの『ザ・カルテル』 や、S.キングの「ミスター・メルセデス」といったお気に入りの作家の本も読もうと思っているが、たぶんこれを超えることはないと思う。
かなり早いけど、今年のベスト1決定!

訳者あとがきによると、ルヘインはインタビューでこう言っているという。
「ぼくは本物の悪人をあまり知らない。聖人もあまり知らない。ほとんどの人はそのあいだだろう。書くのはそこだ。」と。
非の打ち所のない聖人君子はほとんどいないし、その逆も然りだろう。誰しも聖人でもあり同時に悪人でもある。そんな「矛盾撞着」を体現したキャラクターこそが、ジョー・コングリンだ。『夜に生きる』 では、ジョーはある一線を超えるまでは、自分のことをギャングではなく”無法者”だと思っていた。法は犯してはいるが、自分なりにある一線は守っていたのだ。
そして、一線を退いてなお、「自分と野蛮人を隔ているもの」について頭を悩ませている。曰く、自分は野蛮人ではないと信じたがっていたのだ。
ただ、ジョーに限らず、その境界線はシチュエーションによって揺れ動く。犯罪を犯した人々の多くは、気がついたときは、飲み込まれてしまっていたということのほうが多いのだろう。

想像はつくだろうが、ルヘインという作家は決してギャングをヒーローにはしない。あくまで現実に即し、罪深く愚かしく、そして悲しく、永遠に平穏がないものとして描いており、そのやるせなさに酔わされる。

訳者の方は、「続編の可能性もなくはない・・・」とお茶を濁していたが、私は絶対にあると思う!
だって、そういう伏線はちゃんと仕込まれているのだ。
ないと困るわ!

ということで、せっかくの休日だし焼き鳥屋にでもいってくるか…



       
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category: クライム・警察・探偵・リーガル

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tag: 海外ミステリ  早川書房  ルヘイン   
2016/04/30 Sat. 18:00 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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