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読書日記、ときどき食日記

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旋舞の千年都市 / イアン・マクドナルド 

トルコに行きたい!!!イスタンブールのブルーモスク、グランドバザール、ドルマバフチェ宮殿に地下宮殿、トプカピ宮殿、ガラタ橋、そしてボスフォラス海峡・・・

かの地を私はまだ一度も訪れたことがないのだ。行った人に聞くと、皆口を揃えて、素晴らしいところだったという。
次は絶対行こうと思っていた矢先にあのテロ騒ぎ…。安全なはずの国際空港はテロの標的になり、挙句クーデターなんぞが起きてしまった。
もう安心という人もいるけれど、何があっても全て自己責任の世界なのである。

行きたいのは山々だけど、諸事情で行けないんだよね…(特に先立つモノがないのよね)
という私のような人にぴったりなのが、本書「旋舞の千年都市」なのである。
解説の方は「イスタンブールを読む」と評しているが、確かにそう思わせる小説だ。
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舞台は至近未来2027年のイスタンブール。
物語は、主だった登場人物6名の群像劇の形をとって始まる。

青年ネジュテッドは、トラムの中で自爆テロに居合わせる。自爆テロとはいえ、犠牲者はテロを起こした本人だけだった。しかし、ネジュテッドはそれ以降見えるはずのない"ジン”が見えるようになる。
(本文中には説明はないが、ジンとはアラブ世界における精霊や魔人などの超自然的存在の総称らしい。)

ネジュテッドが住んでいるエスキキョイの元僧院に暮らす9歳の少年ジャンは、珍しい心臓疾患のため、耳栓を常用し静寂の世界に生きている。QT延長症候群ーほんのひとつの叫びや突然の騒音が彼の心臓を止めかねないからだ。
彼は少年探偵に強い憧れを抱き、常に”ボット”(形態を変えられるドローンのようなもの)を使って探偵ごっこをしている。そして、ネジュテッドが遭遇したテロの現場を、不穏なボットが複数旋回しているのに気づく。何者かがネジュテッドを観察しているのだ。ジャンはそれを隣人の老ギリシャ人で元経済学者のゲオルギオスに話すが、危険なものに首を突っ込まないようにと言い含められる。

少年探偵ジャンの隣人のゲルギオスは、かつてイスタンブールを去った恋人が帰郷すると聞いて動揺する。47年も前の恋人アリアーナ…また政府のシンクタンクに招かれたことで、自分を葬り去った仇敵に一矢報いる機会に恵まれる。

トラムのテロのせいで、仕事の面接に遅れたレイラは、親族のツテで、マーケティング担当としての一歩を踏み出すこととなる。彼女が売り込むのは、「生物的ナノテクノロジー」。すなわち、人間のジャンクDNAをメモリのスペースとして使用するというものだ。これによって、今までに書かれた人間の音楽は全て虫垂に収まり、世界の全ての図書館の本は小腸のうちの数ミリに収まる。そして、それを取り出すのは思いのまま…

オゼル物産ガス社のトレーダー、アドナンは、AIが飛び交い、ナノ秒単位の超光速取引を繰り広げる世界に生きている。そんな彼は仲間とともに、放射線を帯びている危険性があるため打ち捨てられているイランのタダ同然のガスを、高価なカスピ海産のガスにすり替えるー「ターコイズ計画」を進めていた。

一方、エスキキョイの件の元僧院の一階で、宗教美術を専門にした画廊を経営しているアドナンの妻、アイシェは、さる男から莫大な報酬と引き換えに「蜜人」を探して欲しいという依頼を受ける。
「蜜人」、イスタンブールの、世界の大いなる伝説のミイラ。それはアヤ・ソフィアの失われた宝石に比肩する宝物だ。かつてのアレクサンドレッタ、イスケルゲン出身の男は、蜂蜜しか受け付けない身体となり、甘味に至る道筋をひたすら探求する。挙句、蜜は身体の管という管に行き渡り、臓器は蜜にくるまれ、脳を満たし、呼気は失われてしまう。そうして出来上がったのが「蜜人」なのだ。
一旦は依頼を断ったアイシェだが、抗いがたい魅力に負け「蜜人」探しを始め…

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雑多でバラバラな6人の物語が繰り広げられるのは、これまた雑多でキッチュなものがあふれかえっているイスランブールだ。

SFらしい新しいもの、ガジェットと、古いものの対比と組み合わせが面白い。
人々が来ているナノ素材の服は、気温の変化に応じ繊維の束が大きくなったり小さくなったりし、その模様もめまぐるしく変わる。少年探偵のジャンのように、おもちゃとして”ボット”を所有しているが、その"ボット”は自在に姿を変えることさえできる。スマホは"ジェプテップ”にとって代わられている。
その縦糸に、「ジン」や「蜜人」などが見事に織り込まれているのだ。とりわけ「蜜人」のエピソードは興味深い。一人称で書かれたそれを読んでいると、その時代に自分がタイムスリップしたかのような錯覚に陥る。

ガジェットの楽しさはいうまでもないが、テクノロジー礼賛というだけでもない。
物語後半のレイラとアソの"思考実験"の会話などは非常に興味深い。本当にこの50年のうちに、私たちは何を見るようになるのだろうか?

今年2016年、英国がEU脱退か残存かを問う国民投票の末、脱退することが決まったが、作中では2022年にトルコがEUに加盟し、これによって少なからぬ不協和音が生じているという設定。
2022年まであとわずか6年…。
EU加盟は難しいような気がするが、それまでにトルコは平和を取り戻して、安心して旅行できるようになっているのかしら?

キャンベル記念賞、英国SF協会賞ダブル受賞作だそうです。



     


  
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category: SF ファンタジー

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 東京創元社  文庫  SF  トルコ 
2016/07/22 Fri. 19:26 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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