Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

06« 2017 / 07 »08
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.

背信の都 / ジェームズ・エルロイ 

都知事選は小池百合子さんの圧勝に終わったが、問題は都議のブラックボックスらしい。
都議連にも”ドン”と言われる人物がいて、これがまたやっかいな存在なのだそうだ。
彼女の初登庁は、自民党所属の都議にスルーされたそうで、今後もなかなか大変そう…
幼稚なイジワルをすればするほど、自分たちの立場は悪くなると思うんだけど…
もう、都政停滞を招くようなら、いっそ都議会解散しちゃえYO!などと思ってしまう他人事な神奈川県民なのだった(笑)


さて、さて、エルロイの「背信の都」をようやく、ようやく読み終わったのである。
ふぅ〜〜〜
ちかれた・・・
James-Ellroy.jpg 

物語の舞台は1941年12月のLA。"真珠湾攻撃”の前日に始まる。
LA市警の優秀な鑑識アシダは、度々強盗の被害にあうドラッグストアのため、手製の監視カメラを設置していた。日系人のアシダは22歳でスタンフォードの博士になった秀才で、血清学、指紋、弾道学に通じているのだ。
同じころ、ダドリー・スミスはLAの女性を恐怖に陥れていた強姦魔を殺害する。
その夜、農園を経営する日本人のワタナベ一家の遺体が発見される。一家4人は仰向けで、内臓が引き抜かれていた。ジャップ伝統のハラキリか?
駆けつけたのはダドリー・スミスとリー・ブランチャード(ブラック・ダリア)だった。寝室に残された書き置きには、遺書らしき文言が。それには「いま来る災厄は、われらの招きたるものにあらず。われらは善き市民であり、かかる事態を知る身にあらざるは」とあった。
しかし、アシダは、一家の自殺いぶかしむ。死体の位置は不自然だし、日本人の集団自殺の遺書はもっと具体的だし、心中であるならば、家の中はもっと乱雑になっているはずだ。調べたところ、凶器の刀からは指紋は検出されなかったばかりか、一家の背後に残されていた繊維は、例の強姦事件でアシダが入手していた繊維と同じものだった。
その日の午後、日本が真珠湾攻撃を開始する。ジャップ、ジャップ、ジャップ・・・吹き荒れる反日の嵐のなか、LA市警上層部はそれでも日本人一家殺害事件に正当に取り組むふりをしようと目論む。それを利用して、LA市警の公正さをアピールするのだ。なにも真犯人を捕らえる必要はない。死刑になって当然という都合のいいジャップを身代わりにしさえすればいいだけの話だ。

一方、アルコール依存に苦しむビル・パーカーは、ケイ・レイクに近づき、「アカの女王」ことクレア・デヘイヴンらのスパイとして送り込もうとするのだが…
DPL0855894.jpg 
『ブラックダリア』『ビッグ・ノーウェア』『LAコンフィデンシャル』『ホワイト・ジャズ』の主だったキャストは勢揃い。それら暗黒のLA4部作の前日譚なので、まだ誰も死んではいない(笑)
そればかりか、その後のアンダーワールドUSA三部作に登場する人物まで登場している。
ほぼ網羅!エルロイの熱烈なファンにはたまらないんだろうなぁ…
(※LA4部作とそれに続くアンダーワールドUSA3部作の年表は、「ホワイト・ジャズ」の巻末に収められている。ご参考までに)

年代的には本書が一番最初であるので、「エルロイは読んだことがなくて」という方はここから読んでも大丈夫だと思う。ただ、根気は必要です(苦笑)

悪徳警官ダドリー・スミスのほか、『ブラックダリア』のケイ(キャサリン)・レイク、日本人の鑑識アシダ、アル中で次期本部長を目指しているビル(ウィスキー)・パークスの4人の視点で、語られていく。日系人のアシダ、時にパーカーの力を借り、またダドスターにすり寄ることで自分と家族を守りつつも、ワタナベ一家殺害の捜査を進める。
その悪徳警官ぶりを披露しつつも、ベティ・デイヴィスと恋に落ち、自分の婚外子への愛情を示す。アイルランド生まれ、LA育ちのダドスターことダドリー・リーアム・スミスも、本書の主人公の一人だ。
「にいちゃん」というフレーズからも伺えるように、粗野な言葉使いと振る舞いが特徴で、エルロイのいうところの、「権威の名のもとに悪事を働く白人警官」の具現的存在だ。

暗黒のLA4部作は、詰まるところ”ダドスターの物語”とも言えなくはないが、これまでの彼は常に背後で糸を引くドンだった。しかし本書では正真正銘、主役である。
「良心なんて厄介なものは、後悔する価値のある人間にとっておいたほうがいいぞ」とうそぶき、警察官であるにもかかわらず、バンバン人を殺したり、チャイナマフィアの手先となって強奪を企てたりする悪徳なダドちんだが、強姦魔の被害者に花を贈ったりする優しい面もある。
文春編集部による解説では、「肌の色が何色だろうと、性別宗教がどうであろうと、悪いやつは悪いことをする。悪いやつがいいことをすることもある」というがエルロイの考え方だと言っているが、まさしくダドスターはそういう人間として描かれている。

ま、エルロイにとって最もお気に入りのキャラであるのは確かなのだろうなぁ。
私も結構好きかも〜
一筋縄ではいかないLA市警内部事情なども、読みどころのひとつ。エルロイを読むと、事件を解決するだけが警察小説ではないんだなぁといつも思う。

bette-davis.jpg 

また構成は、アシダ、ダドスター、パーカーの物語の合間に、ケイの手記が挟まれる形をとっている。これはエルロイお得意のやり口。
複数視点からそれぞれの物語を描いていき、メモが必要なほどの複雑極まりない様相を見せておいて、最後に読者があっという真相を犯人の自白という形で披露する。それで、ここがね、また読ませるのだ。

ただ、先の暗黒のLA4部作、とりわけ『ビッグ・ノーウェア』『LAコンフィデンシャル』に比べると、少し雑だしインパクトに欠ける気もしたんだよなぁ…
ま、本書は新たなLA4部作の1作目だというから、今後に期待かな。


あとですね、文藝春秋社さん、この本、お値段高すぎじゃないですかね?
上下巻で4000円超えなのよ。
せめて電子版はもうちょっと安くしてくださらないかしらん。

  



     

    


関連記事

category: クライム・警察・探偵・リーガル

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  警察小説  LA 
2016/08/03 Wed. 17:36 [edit]   TB: 0 | CM: 0

go page top

この記事に対するコメント

go page top

コメントの投稿

Secret

go page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://spenth.blog111.fc2.com/tb.php/655-e1c203b8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

go page top

RSSリンクの表示

リンク