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読書日記、ときどき食日記

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英国のスパイ/ ダニエル・シルヴァ 

三笠宮様が葬去された。昭和天皇の弟君で御年100歳。幅広い分野での功績を残された方だが、スポーツやレクリエーションの発展にも寄与されたそうだ。私が小学生のときにフォークダンスがあったのは、三笠宮さまの影響なのかな?(今はしないのだそうだ)
謹んで哀悼の意を表します…

もう完全に時代は変わってしまったんだなぁと思う。
「ザ・昭和」な人間にとっては、寂しいかぎり。

さて、本書「英国のスパイ」は、あのダイアナ妃を彷彿とさせる元皇太子妃の死で幕をあけるのだ。
モロッコに行く直前に読んだのだが、宮様の薨去でこれを思い出し、また想像以上に良かったので遅ればせながらこうして感想を書いているというわけ


Westminster_Bridge,_River_Thames,_London,_England 

本書は、「亡者のゲーム」に続く、イスラエルのスパイ、ガブリエル・アロン・シリーズの最新作。
「亡者のゲーム」はアマゾンの評価をみるとイマイチなのだが、個人的には大好きな作品で、これも楽しみにしていた。
ただ、本書はガブリエル・アロン・シリーズの15作目に当たる作品なので、ある程度は前の作品の知識がないと堪能できないのかもしれない。(ただし、日本では刊行されていないものも多くあるし、刊行されていても高価な単行本なので、図書館でどうぞ
昨年、シルヴァの版権を持つハーパー・コリンズ社が日本進出し、シルヴァ作品がきちんと、しかも文庫で(!)読めるようになったのは、ガブリエルのファンにとっては嬉しいかぎり。


  

カブリエル・アロンはイスラエルの諜報機関のスパイであると同時に、世界有数の美術修復家でもある。イタリアに住むユダヤ人美術修復家というのは、敏腕スパイとしてのこれ以上ない隠れ蓑でもあるのだ。
美術世界と、国際政治という二つの要素を同時期に楽しめるのも、本シリーズの特徴だろう。
本書「英国のスパイ」は、全米初登場1位を獲得したというが、さもありなんのエンタメ性である。
何しろ、物語は英国の元皇太子妃の乗ったヨットがカリブ海で爆発炎上するシーンで幕をあけるのだ。
これは誰がどう読んでも、ダイアナ妃のあの事故を思い出させる。
ただ、作中ではダイアナ妃ご本人として登場しているのではなく、あくまで架空の人物だ。しかも、ヨットの爆破炎上は、エジンバラ公の事件をモデルにしたそうである。

なにはともあれ、作中でも皆に愛されたプリンセスの死に、世界中に衝撃と悲しみが広がる。爆発は事故ではなかった。プリンセスは何者かによって意図的に殺害されたのだ。
爆破の犯人として浮上したのは、アイルランド人の悪名高き爆弾魔、エイモン・クイン。
ガブリエルは英国のMI6の長官シーモアから、クイン暗殺を懇願される。実はクインはガブリエルの宿敵ともいえる存在だった。
顔を変え、逃げ続けるクインとそれを追うガブリエルと元SASで英国人の殺し屋クリストファー・ケラー。ガブリエルの盟友もまた、クインに深い恨みを持っていた。
しかし、クインは新たな標的に狙いを定め…


ira.jpg 

ネガティブなアマゾンレビューの人に反論をさせてもらえば、、、
私はガブリエル・シリーズは、決してマーク・グリーニーやトム・クランシーに劣るとは思わない。

私だって、なんだかんだ言いつつも実は「グレイマン」は全シリーズ読んでいる。接近戦こそが少ないが、そのスリルは圧倒していると思う。なんだかんだいってもグレイマンはフリーランス、ガブリエルは国家が後ろについているのだから。

それに、「グレイマン」みたいに、毎回毎回お人好しが原因で大怪我をし続けていたなら、繊細さが命の美術の修復などできないではないか(笑)
グレイマンをご存知ない方のために付け加えておくと、だいたいこんな感じだ。→地獄のグレイマン
「グレイマン」が悪いとは言わないし、最新作は出来もよかったが、そもそものジャンルが異なる。本書はル・カレなどともまた種類は異なるものの、いうなれば「プロのスパイ」の物語だ。
その「プロのスパイ」の人生を、作中ガブリエルは、「旅行と死ぬほど退屈な時間の連続で、その合間に恐怖の時間が訪れる」と評している。


イスラエルという国が抱えるやっかいで根深い問題に、毎回焦点が当てられるのも魅力のひとつ。
それはイスラエルだけの問題にとどまらない。中東地域やロシアと西側諸国といった大きなものに波及し、複雑な様相を呈している。
私がこのシリーズが好きなのは、シルヴァが元ジャーナリストであり、それがゆえに、小説もまた膨大な資料や生の声にあたって分析を行い、精密に物語を構築しているところだ。何事にも手抜きがない。
もちろん、著者が断っているように、「あくまでエンターテインメント」であることは理解しているが、登場人物こそ架空であるが、おそらく背景は事実とそう変わらないところも多いのではないか。

今回は、遠いがゆえに私などには特に知識が薄いアイルランドと英国の争いがメインになっている。
そういう意味では、ガブリエルよりも、かつてIRAに潜伏経験があり大切なものを失ったケラーの再生の物語というほうがぴったりくる。まさしく本書は「英国のスパイ」の物語なのである。



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category: スパイ・冒険・ハードボイルド

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  文庫  英国  スパイ 
2016/10/29 Sat. 11:41 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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