Reading For Pleasure

読書日記、ときどき食日記

05« 2017 / 06 »07
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.

パードレはそこにいる / サンドローネ・ダツィエーリ 

週末の読書会の課題本「熊と踊れ」のほうを先にレビューしようと思ったのだが、こちらは後に…
その「熊と踊れ」の直後に、読んだのがこの「パードレはそこにいる」
本邦初の作家によるイタリアン・ミステリーである。
あちらは、「制裁」「死刑囚」「三秒間の死角」でその実力を知っていたので、驚きはあったものの想定の範囲内だったがこちらは想像以上。

主人公は、事情があって休職中の女性警官(機動隊副隊長)コロンバと、これまたワケアリのコンサルタント、ダンテ・トッレの二人。ダンテは幼い頃に誘拐され、11年間農場のサイロに閉じ込められていた。そして、奇跡的に逃げ出すことに成功したのだ。筆舌に耐え難いその経験から得たことを活かし、今は誘拐や自発的失踪人の捜索のコンサルタントをしている

ここで、すぐさま思い出すのが「カルニヴェア」のダニエーレと、カテリーナ。
「カルニヴィア」のダニエーレも幼い頃に誘拐され、両耳を失い、トラウマを負っているが、ダンテも同様に片手に障害がある。そして、女性警官(イタリアでは憲兵隊や機動隊)が、もう一人の主人公として据えられているのも同じ。
ただし、本書「パードレはそこにいる」のコロンバは、カルニヴェア三部作のカテリーナに比べれば、かなり人好きするし、感情移入もしやすい。特に女性読者にはビッチなカテリーナのファンは少ないだろうし(笑)
違いは、「カルニヴィア」はヴェネツィア、本書はローマと、方や英国人、方やイタリア人作家によるものくらいだといっていい。それと「カルニヴィア」にはもう一人主人公がいる。
訳者によれば、本書の著者、ダツィエーリは、"よそ者からみたローマの様子”と、”心に闇を抱えた人間”を描こうとしたのだという。
本書は、イタリアンミステリとしては「6番目の少女」の系譜に連なるものだと言われるが、私が思うに、より近いのはジョナサン・ホルトの「カルニヴィア」だ。
キャラのみならず、予想外に大きな拡がりをみせる展開の仕方も似ている。


     


本書は確かに面白いのだけど、、、
でも、これはやっぱり「カルニヴェア」の二番煎じなのじゃないかなぁ…?
そう思うと、どうしても評価は下がってしまうんだよなぁ…
下巻に入るくらいまではそう思っていたが、考えが変わった。

これは、これでアリ!
アリどころか、今年読んだ中でもかなりエキサイティングな秀作といえるのじゃないだろうか。「似ている」のは確かだが、出来の良さがそれを打ち消すのだ。イタリアのおっさんさすがだわ〜!!!某「96時間」のパクリとは訳がちがうわ〜


Sandrone Dazieri 

「カルニヴィア」は終わり方こそ残念無念だったが、お気に入りの小説でもあったので、ついつい熱が入ってしまった。読まれてない方にとってはなんのこっちゃ、ですよね…?
話を本題に戻すと、、、、

物語は、ローマ郊外で首を切断された女性の遺体が発見されるところからはじまる。女性は夫と息子とともにピクニックにきており、その夫は疲れ果てた様子で妻と息子を探していたところを発見された。6歳の息子は行方不明。
夫が容疑者として逮捕されたが、捜査のやり方を案じたコロンバの上司で警察幹部のローヴェレは、休職中のコロンバに内々の調査を依頼する。
ローヴェレは出世争いの最中にあり、この件でライバルを出し抜けないかと目論んでいたのだ。ローヴェレの考えでは、ライバルは次期トップにはふさわしくないし、強引に間違った方向へ捜査を導こうとしていた。それに、うまくいけば6歳の男の子の命を助けることもできる。
ひとりではできないというコロンバに、ローヴェレが相棒として推薦したのがダンテだった。
ダンテは、自分を誘拐監禁した犯人、"パードレ"は未だ捕まっておらず、この事件の裏にも彼がいると確信していた。ダンテの直感は当たっているのか?コロンバは半信半疑のまま、彼とともに事件を追う。忍び寄るパードレの魔の手。しかし、そんな二人は孤立無縁の状態になってしまうのだった…

IMG_8061.jpg 

後半は、この冒頭からは想像もできないくらいの劇的な展開をみせる。
全てに理由が付けられており、それは、あなたがあらすじを読んで「???」と思われた箇所にもちゃんと用意されているのでご安心を。
その合間を縫うように、コロンバが心的外傷を負い休職している理由や、ダンテのさらに隠された過去もが明らかにされる。事件の真相のみならず、ここにもまたサプライズが隠されているというわけだ。

ちなみに、「パードレ padre」というのはイタリア語で「父」という意味。パパよりも改まった言い方らしい。

エンタメ性も高く、登場人物も親しみやすいし、読みやすい文体なのもいい。プロットも精密に練られており評価できる。
この後、三部作くらいにまでなりそうなのも「カルニヴィア」的なのだが(笑)、これはこれでお釣りがくるくらい、”アリ”なのだ。

決して読んで損はしない一冊(上下巻だけど)だと思う。
余程のひねくれものか、はたまた精神状態が良くない場合はその限りではないが。


晩秋の夜長にいかが?

     



こちらも暗いけど、読んで損はない傑作。
しかし、「制裁」は一時期よりもおさまったとはいえ、高騰してるなぁ!
去年なんて1万円超えとかしてたのよ…
版元のランダムハウスは潰れちゃったし、発行部数自体も少なかったんだろうな。
少しすると落ち着くのだろうけど、ルースルンドが新作を出すタイミングでまた高騰しそうだわ。

       


    
関連記事

category: クライム・警察・探偵・リーガル

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  早川書房  文庫  イタリア 
2016/10/30 Sun. 20:58 [edit]   TB: 0 | CM: 0

go page top

この記事に対するコメント

go page top

コメントの投稿

Secret

go page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://spenth.blog111.fc2.com/tb.php/689-945ffbcf
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

go page top