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読書日記、ときどき食日記

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ハリー・オーガスト、15回目の人生 / クレア・ノース 

今の記憶や知識を完全に持ったまま、もう一度子供時代から人生をやり直せるとしたら・・・
誰しも一度は空想し、望んだことだろう。
本書「ハリー・オーガスト、15回目の人生」は、そうした願望そのものの人生を生きる男の物語なのである。

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本書の主人公、ハリー・オーガストは、1919年の冬、エジンバラ郊外の駅の公衆トイレで産み落とされる。その後は養父母に引き取られ、自分の実の父親の屋敷の使用人の息子として育つ。ある人生では幼くして投身自殺をとげ、またある人生ではほぼ天寿を全うした。
彼は、死んでも前の人生の記憶を全て持ったまま、また同じ年の同じ日に、同じ状況で生まれてくるという特別な能力の持ち主、"カーラチャクラ"だったのだ。
ハリーの他にもカーラチャクラは存在していた。彼らはクロノス・クラブという組織を結成し、「事の複雑さを口実に、傍観すべし」をモットーとていた。彼らは、同じ仲間を助けるとともに、時に残酷なやり方で、歴史や時間の流れを乱そうとするものを戒めてきた。
ハリーは、自らの「あり方」を解き明かそうとし、宗教、医学、生物学を次々と頼みとしてきたが、物理学を極めようとしていた人生で、同じカーラチャクラのヴィンセントと出会う。
しかし、ヴィンセントは、世界の終わりの元凶となろうとしていた。その手始めは、歴史の流れを守ろうとするクロノス・クラブを崩壊させることだった。そして、彼によって、まだ発明されるべきでないものが発明され、科学は加速的な進歩を遂げていた。その結果、世界は滅びようとしていた。
その終わりの日は、ヴィンセントが人生を繰り返す度に早まっている。
11回目の人生を終えようとしていたハリーは、クロノス・クラブからの伝言で、自分が彼を止めなくてはならないことを知る。
そこからハリーと、ヴィンセントの、世界の終わりを賭けた戦いが始めるのだが・・・

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この小説のいいところは、単なるリプレイものではなく、スパイ小説的な展開へと大きく拡がっていくところにある。ハリーの個の問題だけでなく、ちんまりとしていないのだ。
こうしたことができるのも、死んでも前の記憶を一切合切持ったまま、同じ人生をスタートできるという発想ゆえ。生まれ変わりというと、即、仏教的な輪廻転生を思い浮かべてしまう私には、少々新鮮だった。

死んでもまた同じ人生がスタートする、全く同じであれば、それほど退屈なことはないが、上書きされ増えていく知識がある分、自分の対応も異なるし、他人の反応も違ってくる。全く同じということはない。ハリーの人生は、死や、何もできない幼少期を挟むことで一旦中断するものの、ある意味、延々と続いていく長い長い人生と捉えることもできる。

この本の後に、佐藤優氏の「大国の掟」を読んだのだが、彼は、その本のなかで、「現在起きていることは、過去に起きたことの反復現象だ」と言っていた。ただし、全く同じ形で反復されることはないそうだ。ここに歴史やインテリジェンスの面白さがある。
世界情勢の解き方とハリーの人生。全く異なるものなれど、ちょっと似ているかも…

と、話は逸れたが、ハリーの人生はそれぞれ異なるパワレル・ワールドなのだろうか、とか、じゃあ、1回目という起点はなぜ起こるのかなど、悶々としてしまうきらいもあるが、難しいことは考えずに単純に楽しむべし。


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category: SF ファンタジー

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 文庫  角川  SF  英国 
2016/11/19 Sat. 12:45 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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