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読書日記、ときどき食日記

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地中の記憶 / ローリー・ロイ 

先日の「翻訳ミステリー大賞コンベンション」にて、書評家の川出さんが昨年のベスト1にあげていたのがローリー・ロイ「彼女が家に帰るまで」

この小説もエドガー賞にノミネートされていたらしいが、この時はウィリアム・K・クルーガー「ありふれた祈り」が受賞した。その翌年はS・キングの「ミスター・メルセデス 」

そして、ようやくローリー・ロイの番がやってきた。本書「地中の記憶」である。

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物語は20世紀半ばのアメリカ南部ケンタッキー州のヘイデン郡。
1952年のアニー・ホールラン、1936年のサラ・の視点から、章ごとに交互に語られていく。

アニーは15歳と半年のハーフバースデーを迎えようとしている。アニーの住む地域ではそれは「成女の日」と言われており、その日の真夜中に井戸を覗き込めば、将来の伴侶の顔が見えるといわれている。この10年、ほとんどの娘は成女の日に幼馴染のライス・ファルカーソンの家の井戸にいった。しかしアニーは、幼馴染への照れと反発心から、自分の家族が長年避けてきたベイン家の土地に忍び込む。
ベイン家との長年にわたる反目はジュナ叔母さんに端を発している。彼女は去ったが、両家の間の憎しみは消えることはない。
だが、アニーは、一緒にきた妹のキャロラインに自分の将来の夫を盗まれてしまう。キャロラインが見たのはアニーの将来の夫んい違いない。アニーには誰も見えなかったのだ。
アニーとキャロラインの間柄は常にすべからくこうだ。可愛らしいキャロラインがいつも上に立つ。ただ、アニーにはキャロラインにはない”霊感”がある。
そして、ベインの地所から帰る道すがら、アニーは偶然コーラ・ベインの死体を発見してしまうのだった。コーラ老夫人はこの土地に暮らす最後のベイン家の人間だった。
これで、ジュナ叔母さんは家に帰ってくるにちがいない。アニーはジュナ叔母さんの”帰郷”を感じるようになる。

一方、サラには母親がいない。妹のジュナが生まれたとき、母は霊感のある女性メアリーから「この子に気をつけなさい」と言われ、父は自分がジュナに呪われていると信じ込んだ。
ジュナのような金髪なら、薄い青いか榛色の瞳なのが普通だ。しかし、ジュナの目はほとんど真っ黒だ。父はそこに魔物がいると信じたのだ。
実際、ジュナは全ての災いのもととなった。弟のデイルの出産で母は命を落とし、不作や凶作が何年も続いた。
そんなジュナは異性にも奔放だった。成女の日、ジュナはエイブラハムを見たと公言し、その気になった彼の気を弄んでいた。
そんなある日、弟のデイルが姿を消してしまう…

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アニーが発見した死体と、かつてヘイデン郡で起こった悲劇…"ベイン家とサラの家族を襲った悲劇”の真相"が物語のコア。予想通りでもあり、予想外でもある。

解説は、これまた「翻訳ミステリー大賞コンベンション」などでおなじみの杉江松恋さん
彼は、本書をして「心に棘が突き刺さる」と評する。そして、その棘は決して大きいわけでもないと。
そうなのだ。この物語にはいわゆる"大いなる悪"は存在しない。
誰しもが自分の立場を守るためについてしまいがちな小さな言い訳が、少しづつ重なり生まれた大いなる悲劇というのが適当だろう。聖人君子でもない限り、そういう「魔」は、誰にでも経験があるのではないか。そのため余計心地悪く感じさせるのだ。

アニーがサラの娘だというのは作中すぐにわかる。ただし、そこには公然の秘密があるのだが。
さらに、そのサラ、アニー共に、姉妹の確執に悩まされてもいる。男性には分かりにくいかもしれないが、微妙な姉妹関係を自分に当てはめ、共感する方も多いのではないだろうか。

地味で淡々とした物語であり、しかもだいたい予想はついてしまうので、好みは分かれるかも。
しかし特筆すべきは、この「地中の記憶 Let Me Die in His Footsteps」というタイトルだと思う。
読み終わってみると、これ以上ないタイトルのつけ方だなぁと思うはず…

 

 

 
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category: ミステリ/エンタメ(海外)

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

tag: 海外ミステリ  早川書房  エドガー賞 
2017/04/27 Thu. 12:58 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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