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読書日記、ときどき食日記

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米中もし戦わば  〜戦争の地政学/ ピーター・ナヴァロ 

ジョコビッチが全豪2回戦敗退したのには私も驚いた。ジョコさんの一番得意な全豪ですのに。前より細くなっていたし、調整に失敗したのかも…
しかし、それよりも驚きなのは、あと数時間でトランプ大統領が誕生することである。
就任式ではISによる暗殺予告もされているというが、ISにとってはトランプに大統領でいてもらったほうが都合がいい気もするけれども。

それはさておき、本書の著者のピーター・ナヴァロ氏は、そのトランプ氏の政策顧問であり、国家通商会議代表に指名もされた人物。対中強硬派として知られる氏の重用に対し、中国側は警戒を強めているという。
本書は、日々脅威となる中国との戦争を避けるためにはどうすべきかについて書かれた本である。

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著者によれば、米中間戦争が起こる可能性は歴史を鑑みてもかなり高い。既存の大国は常に、新興勢力と衝突してきたのだから。

新興勢力である中国の台頭は、クリントン政権時代に中国との経済的な関わりを促すためWTO加盟を支援したことが大きいのだという。クリントン政権は経済成長で中国の民主化が進むと考えてのことだったが、皮肉にも中国は独裁国家のまま経済発展を遂げ、一方で米国は国内の生産拠点を中国に奪われ、深刻なダメージを被ることになった。
トランプの対中貿易赤字への言及はこの説明が抜けているし、どこまで真面目に考えているのかもわからないが、経済力が中国の軍備増強を推し進めてきたことを鑑みれば、防衛の観点からも看過できることではないのは確か。

perter navarro 
ご存知のように、中国は尖閣諸島を巡って日本と、南沙諸島を巡ってフィリピン、ベトナム、インドネシア、ブルネイ等々と、インド国境に面したアクサイチンを巡ってインドと揉めている。
阿倍総理も新年早々、フィリピンにはじまり、オーストラリア、インドネシア、ベトナムを訪問したが、その背景には中国をめぐる問題があるのは明らかだ。
中国のこの行動は、第一次アヘン戦争から日中戦争終結までの列強支配による「屈辱の100年間」に由来すると著者はいう。この間に、中国は軍事支配、海上封鎖、領土の割譲、主権の侵害、莫大な戦争賠償金に大量虐殺などを経験したのだから。

今、アパホテル社長の著者が話題になっているが、中国人にとって南京大虐殺は、今もなお、広大な領土を失うはめになった「列強による屈辱の100年」の残虐な事実として深く心に残っているし、そういう教育にも力を入れている。やったほうは忘れてしまうが、やられたほうの怨嗟はそう簡単には消えない。同じ轍は二度と踏むまいと、軍事増強に力を入れるのは当然の帰結だという。
アパホテルに当分中国人は宿泊しないというだけなら、なんの問題もない。逆に騒々しくて行儀の悪い中国人がいないのは、日本人客にとっては願ったりかなったりかもしれない。
だが、この問題がエスカレートし戦争の火種にならないことを願いたいものだ。

 First island chain 

話はそれたが、中国の軍事増強は国防のためばかりではないという。
中国は大昔の地図を引き合いに出し、先に挙げた諸国に対してその領土を主張している。そこにはアメリカ海軍の対中国の要である「第一列島線」と「第二列島線」が深く関わっている。日本から台湾、南シナ海に伸びる「第一列島線」に、事実上中国海軍は拘束されているため、「シーパワー」戦略の妨げとなっている。
地政学における「シーパワー」の詳しい説明については「大国の掟」をおすすめする。中国にとって軍事面においても経済面においてもこの「第一列強線」突破は不可欠なのだ。

挑発的な行為や軍備増強ばかりでない。今や、ハリウッドの映画産業や米国の大学の研究機関、各種メディアは、チャイナマネーに席巻されているという。映画産業は中国の大市場を無視することはできないし、チャイナマネーで成り立つ研究機関も、メディアも中国の顔色を伺っている。ノン・キネティックな手段をフルに用いて、中国はその領土的野望を果たそうとしている。

一方で、中国の軍事力も決して侮ることはできない。
スクラップを改造した空母の「遼寧」は西側のメディアに散々バカにされてはいるが、実は米国と中国の技術力の差は縮まりつつあるという。
何しろ、中国は開発にお金をかける必要がない。国をあげてのハッキングでその技術を盗むのだから、米国よりも遥かに低コストで調達できる。おまけに人権やモラルといったものに縛られることもない。まさに「量も質のうち」なのである。
その反面、米国は長引く経済不況で疲弊している。遠いアジアの国々を守ってやる必要はないと考える米国人も多く、超大国としての「世界の警察官」としての役回りにうんざりしているという。まもなく大統領となるトランプ本人も、その発言からみるにアジア地域への米軍のプレゼンスを軽視している。

とはいえ、米軍が即、アジアから撤退するということはなさそうではあるが、仮にそうなったらどうなるのだろう。
日中間は尖閣諸島をめぐり問題を抱えており、火種になる可能性も高い。
しかし、中国は話が通じるような相手ではないし、日本は憲法9条があるために抑止力になるような兵器を持つことができない。かくして、日本には是が非でも米軍の傘が必要なのだ。
米国からみても、アジアの平和維持はめぐりめぐって自国の繁栄に不可欠でもあるのだが、さて、トランプはどういう判断を下すのだろう。
憲法9条を維持するにしても、アジアの平和の維持は同盟国を守ることに辟易しつつある米軍頼みであり、仮に9条を破棄するならば、その事実自体が中国を刺激し、まかり間違えば核戦争にも発展しかねない。かといって対話で解決出来るような相手でもなし。

いずれにせよ、「平和な世界」というのは難しいことなのだなぁ・・・


  

category: ノンフィクション・新書

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2017/01/20 Fri. 23:09 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福/ ユヴァル・ノア・ハラリ 

最近読んだなかでのベストオブベスト。

各国でベストセラーになっているし、新年早々、NHKの「クローズアップ現代プラス」にも取り上げられていたので、ご存知の方も多いだろう。
単行本で上下巻。少し躊躇してしまう価格でもあるが、一度読み始めるとそんなことは吹っ飛んでしまう。どっぷり引き込まれてしまい長さは全く感じなかった。その読書価値からすれば、高いとも思わないのではないだろうか。(内容もさることながら、Kindleで買ったら、780ポイントももらえることだし!)



読書の醍醐味のひとつは、「目から鱗」体験ができることだと訳者はいうが、本書はまさにそれだ。
人間(ホモ・サピエンス)の歴史をこれまでにない角度から綴りつつ、人間の「幸福」について考えさせる。
人間(以下サピエンスという)の歴史は、万人の知る通りだ。だが、著者の手にかかると、それが見たこともないような新鮮なものにと変わる。
人間は、これまで様々な困難の乗り越え、言葉によるコミュニケーションによって動物と一線を画し、農業によって飢えから逃れ、近年には産業革命や資本主義によって現代の我々に至っている。
だが、自然界において取るに足らない弱い存在だった我々サピエンスを他の動物と大きく隔てたのは、その言葉の獲得みならず、フィクションを信じる力だと著者は主張する。すなわち、サピエンスのみが、現実にそこにある客観的な事実だけでなく、想像上の事物フィクションを生み出し、それについて語り、他の多くのサピエンスと共有することができるのだ。
今日の神、宗教、イデオロギー、貨幣、法律、人権、会社、全てが現実の客観的事実ではなく、我々が産み出したフィクションなのである。このフィクションを信じる力のおかげで、我々はたんに物事を想像するだけでなく、集団でそうできるようになったというのだ。
例えば、絶滅したとされる他の人類ネアンデールタール人と、我々の祖先ホモ・サピエンスを個人個人で比べるなら、サピエンスはネアンデルタール人には到底及ばなかっただろう。だが、サピエンスは、フクションを共有することで、集団になることができた。

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目から鱗なのは、このフィクションという考え方だけではない。
著者は、農業革命などの文明の進化は、サピエンスにとって幸福をもたらさなかったというのだ。
農業以前の狩猟民族時代のほうが、サピエンスは栄養的にも幸福という観点からも満たされていたのではないかともいう。

私たちは常識として、農業はサピエンスにとっての福音以外に何者でもないと信じてきたが、それをいともたやすく否定する。
化石化した骨格を調べてみても、農業革命以前の狩猟民族は背が高く健康だったという。それは、多様性に富んだ食物を摂取していたからだ。それに比べて近代以前の農民は、得てしてバランスの悪い食事をしていた。主な農民が摂取するカロリーの大半は、ジャガイモや小麦、稲といった単一の穀物だったという。現代の栄養士や医者にいわせれば、著しく糖質に偏った食事といわざるを得ないだろう。
加えて、農業は労働時間を長くした。旱魃や火災によって収穫は大きく影響され、家畜が原因の感染症にも苦しめられることにもなった。
だが、最も大きな計算違いは、農業によって得られる食料の総量が多くなった反面、養わなければならない人数が爆発的に多くなってしまったことだ。平均的な狩猟民より長く働かなければならないのに、見返りに得られる食料は減ってしまったのだった。
著者は、農業革命は、逆に小麦や稲、ジャガイモといった穀類によるサピエンスの家畜化だったとまでいう。

他にも、多神教から一神教の成り立ち、貨幣、帝国の成り立ち、科学と帝国の結びつき等々、興味深い史実と考察は続く。

そして、最終的に文明は我々を幸福にしたのか?ということにたどり着く。
私たちサピエンスは、時代を下るにつれ、進化し繁栄してきた。少なくとも1500年代のサピエンスに比べるなら、私たちの生活は便利で良いものになっているはずだ。だが、農業革命に見られたように、新たな行動様式や技術が人を「幸福」にするとは限らない。
集団としての能力が増大した現代では、サピエンスは繁栄を謳歌しているにもかかわらず、多くの人が空しさや疎外感に苛まれている。自殺者の多さはその表れだろう。

yuval noah harari 

未来へと目を向けるならば、科学の力で全ての人を「幸福」にできるかもしれない。生化学的に「幸福」な状態を感じられるように、ハクスリーの「素晴らしい新世界」で誰もが服用していた「ソーマ」のような薬すら開発されるかもしれない。
だが、「幸福」とは脳の生化学的な状態だけを指すのだろうか?なぜ、「素晴らしい新世界」は嫌悪を感じさせるのだろうか?
映画「マトリックス」のネオは目覚めないほうがよかったのだろうか?

サピエンスはその頃には死すら克服しているかもしれない。遺伝子工学やナノ技術によって、サピエンスという種の従来持っていた生物的限界を打ち破っているかもしれない。
どんなに反論する人がいようとも、科学の歩みは止まらない。だとすれば、唯一我々にできるのは、科学が進もうとしている方向に影響を与えることだけだと著者はいう。つまり、我々が「何を望みたいのか」が重要になってくるという。
私たちはどういう選択をするのだろうか…?

後半、最後の最後のあたりは、まさにSFも顔負け。だが、その不穏さはどう打ち消そうが、純然たる事実なのだろうなぁ…
サピエンスという種としての幸福もそうだが、自分にとって「幸福」とは何なのだろうかと深く考えさせられる本だ。


  







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2017/01/10 Tue. 19:55 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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文庫X 

盛岡の書店が、あえてカバーをかけて売り出したのがこの本。
7月下旬に売り出してから、誰が書いた本なのか、どういう内容なのかがあかされないことが反響をよび、ニュースサイトでも取り上げられていた。

それを、暮れも押し迫って、遅ればせながら読んだわけだ。
まだ、レンジフードの掃除もやってないというのに…

既にこの正体は明かされてしまっているので、わたしもちょっとネタバレで感想を書こうと思う。
いや、あくまで「文庫X」として読みたい!という方は、ここまで。

以下、ネタばれあります。










まず、「文庫X」は推理小説でも、文学作品でもない。一人の熱意あるジャーナリストが書いた ノンフィクションだ。
事実は小説よりも奇なりとはよく言うが、これがそこらのフィクションなど比べものにならないくらい面白い。普段、フィクションしか読まない人であっても引き込まれるはずだ。
と思う…世の中色々な人がいるので、悲しいかな、絶対とは言えないけど(笑)

なにせ、一介の記者が一旦解決されたとされる連続殺人事件の事件の真相に迫っていくのだ。
「それ、フィクションにはありがち〜〜〜」という冷たいエンタメファンの声が聞こえてきそうだが、これは正真正銘、実話なのである。
実話であるだけに、無実なのに逮捕された方、被害者遺族たち、そして著者自身の怒りと悲しみが肌で感じられる。

2007年、著者は新企画のため、未解決事件を調査していた。そこで、狭い地域で17年の間に5人もの幼女が連れ去られているという事実に突き当たる。そのうち、1件を除いては皆、遺体で発見されている。
そして、その5件のうちの1件で、無実の男性が逮捕され死刑判決を受けた。それでこの事件は「決着」とされていた。
この1件については、犯人が刑務所にいるのだから、当然のこととして警察は連続事件として扱わない。
だが、著者は、その手口や地域性、被害者の共通性から、一連の事件はすべて同じ犯人によるものなのではないかという疑念を抱いた。加えて、「決着」したとされる後にも、また同様の手口で幼女連れ去り事件が起きているのだ。
あの逮捕は誤りであり、本当の犯人は今も野放しなのではないか。

彼が調べてみれば、逮捕された男性を有罪にした証拠はかなり曖昧だった。彼は「証拠として怪しい証拠」をタテに、死刑判決を受けたのだ。
とにかく、彼を事件から「排除」し、再審で無実を確定させないことには、連続殺人ということを立証できないし、真犯人にたどり着くことはできない。

そのあやふやな証拠が、科学捜査の代名詞ともなっているDNA鑑定であったことは衝撃的だ。
当時の鑑定精度はあやふやであり、かなり曖昧なものだったが、驚くべきなのは、その「あやふやさ」を検察も、科警研も、裁判所さえも重要視しなかったということだった。

「それは、あの事件のことでしょう?そんなことくらい知っているよ」、とおっしゃるアナタ。
でも、この本には、短い新聞記事には決して収まらないドラマがあるのだ。それもとても残酷な・・・ここには悲しみ、絶望、希望等々の生の感情がある。
そして、自分がいかに一方的な報道を鵜呑みにしていたのかということに驚かされる。

今は時代も違う、警察だってもっと慎重なはず・・・と思いたいが、実際問題として、警察が一旦クロと断定すれば、覆すことはかなり困難だろう。有罪率99パーセントは、悪い意味においても伊達ではないのだ。

何度も繰り返された無実の男性の再審の過程で、警察関係者は彼を「犯人ではない」とどこかの時点でわかったはず。しかし、面子を押し通そうとする。警察のみならず、検察、科警研もそうだった。人一人の命がかかっていたのにである。
しかも、その事件を担当した検事も、証拠をでっちあげた科警研の担当者も、その後出世までしているときた。
この科警研の担当者の著書は本書内で引用されており、出典を明らかにするために書名が記されているのだが、案の定、その本のアマゾンレビューは荒れている(苦笑)
しかし、それも致し方なしかな、と思えるほどに彼女の罪は大きい。それに比べれば、あのオボちゃんなど可愛いものだと思えるくらいだ。(といってもオボちゃんの件でも、人は亡くなっているが)
科警研の女は沢口靖子のようには正義の味方でもなければ、科学的でもなかったらしい。

人にあんな仕打ちをしておいて、よく毎晩眠れるものだなぁと思うが、やった方というのは忘れてしまうものなのだろう。人間は都合の悪いことを忘れるようにできているから。
ただ、やられた方は覚えているが…

件の男性は、様々な人々の尽力と、何よりご自身の強い精神力によって無実を勝ち取ることができた。
そして、著者自身も、気の遠くなるような地道な調査で真犯人をほぼ特定に至る。
だが、犯人は今も野放しのまま。「犯人はそこにいる」のだ。
それもこれも、ひとえに警察の面子を保つため。自分たちは無実の人を死刑にしようとした挙句、一介の記者のおかげで真犯人を逮捕できたとなれば、面子は丸潰れ。失態が改めてクローズアップされる。ならば、これらの事件にはフタをし、時が過ぎ人々が忘れてくれるのを待とうということなのだろう。

人のエゴというものは、醜くやっかいなものだ。相手が個人ならば、もうその人とは関わらなければいい。しかし、それが絶大な権力を持った組織となるとそうはいかない。
しかも、マスコミが報じたのは、警察に都合のよいように作為的に作られた人物像だ。男性の部屋にあったアダルトビデオは、ロリコンものに変更されていた。そのイメージはマスコミによって浸透し、「ああ、ロリコンなら、犯人に間違いない」ということになる。一般の人までが敵にまわり、四面楚歌になってしまう。
日本は確かに法治国家ではあるけれど、必ずしもその「法」の使われ方は正しいわけではないのかも。
かもというか、そういうことが現実に事実として起こっている。

本当に他人事じゃないわ・・・と思った年の瀬なのだった。




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2016/12/28 Wed. 21:11 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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バブル:日本迷走の原点 / 永野 健二 

ちょっとご無沙汰!
ここ数日、バタバタでして・・・

プーさんが、アベちゃんに河豚をご馳走になっているとき、、、
わたしは小田原で蕎麦をすすっておりました(゚∀゚)
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ここのお蕎麦も美味しいんだけど、

いいなぁ!
豪華河豚会席!!!

いいなぁ!
大谷山荘!!!

河豚で北方領土が帰してくれるわけはないけど、とにかく阿倍さんの地元の長門の知名度は上がったし、総理自身の存在感も増した感がある。
「大国の掟」にもあったが、特にロシアは、敵国との緩衝地帯を重んじる傾向にあるそうなので、ちょっとやそっとのことでは解決はしないだろう。(日本はロシアからみれば、敵国の属国)
プーチンは法を変えて大統領の任期を伸ばし、阿倍さんは自民党の党則を変えて総裁の任期を伸ばした。二人とも、超長期政権を踏まえての席。そりゃ、4年持つかどうかわからないトランプ大統領より、プーさんとの関係をよくしておいたほうが賢いかも(笑)


ところで、阿部政権の目玉は、いうまでもなく円安、株高のアベノミクス。
本書、「バブル:日本迷走の原点」は、かつてのバブル時代に起きたことを振り返り、その円安株高を良しとするアベノミクスに警鐘を鳴らす本である。

   

かつて、円高危機論が持ち上がった際、昭和天皇は経済の専門家にこう問われたという。
「円高というのは、日本の価値があがること。良いことではないのですか?」
言われてみれば、陛下のいう通り。日本の価値が下がるのに、どうして景気がよくなるのだろう?
著者は、この素朴な陛下の疑問は、「どんなに円高になっても、生き残れる国になるために、日本の経済の仕組みや制度を変えなければならないのではないか」という陛下なりの問題提起ではなかったのか、と言う。

阿倍政権が推進してきたアベノミクスはまさに、円安&株高。一時低迷したものの、謎のトランプ相場でまた円安が進み、株も2万円を伺う勢い。(就任まではの期間限定かもしれないけど)
円安になって日本の景気がよくなるのは喜ばしいことなのだろうが、実際に潤うのは上位だけ。庶民にはその恩恵はなかなか巡ってこない。格差も広がりつつある。

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話は変わるが、旧ソ連の時代を知るロシアの老人たちは、今、ソ連時代を懐かしんでいるという。
それは、ソ連時代が今よりも良かったということではなく、自分たちが若く、一番輝いていた時代がソ連時代だからだなのだそうだ。
かくいうわたしも、最近とみにバブル時代が懐かしい。
正確にいえば、わたしが大学に入学したときは、すでに土地バブルははじけていたのだが、それでも華やかさや派手さの余波のようなものがあった。受験勉強から解放されたこともあり、毎日が目新しいことの連続だった。
良い時代だったと思ってしまうのは、きっとソ連時代を懐かしむロシアの老人と同じ理由なのだろう。
つまりは、トシをとったということよね・・・(笑)
だからこそ、「明日は今日より必ず良くなる」と信じられたあの時代が懐かしい・・・


本書に登場するバブル紳士や、それにまつわる事件は、新聞やテレビニュースで見聞きしたことばかり。そのどれもが印象深いドラマだ。
成り上がりを体現するかのようなバブル紳士たちは、熱病のような時代を生き、短く、そして無残に散っていった。
それを振り返って馬鹿にし笑うものも多いだろうが、実のところ、今だって構造自体はそう変わらない。

当時、日経の証券部の記者だった著者は、当時のバブル紳士にやや厳しい。けれども、わたしは彼らの生き様も、それなりにあっぱれではないかと思ってしまう。
どれほどもて囃されようとも、彼らは絶対にヒエラルキーの頂点には立てないし、少し派手にやりすぎると、途端に上から叩かれる。
彼らは時代の徒花だったといわれるが、ある意味、庶民の不満のはけ口にされた感すらある。
誰かにターゲットを絞ってガス抜きをやるというやり方をわたしは好まないし、ちょっと同情してしまう部分すらあったりするのだ。

「ああ、なるほどそうだったのか!」と思ったのは、小糸製作所の買い占め事件である。
小糸製作所は、トヨタ系の部品メーカーだったが、それが米国のグリーンメイラーのピケンズに買い占められたのだ。ただ、そのピケンズは実は名義人にすぎず、背後には渡辺喜一郎という人物がいた。当時名を馳せた”麻布建物グループ”を率いていたバブル紳士の一人だ。若い方はご存知ないかもしれないが、ニュースでも派手に取り上げられた事件なので、記憶にある方も多いだろう。
彼は、阿倍晋三の父で、当時自民党の重鎮だった安倍晋太郎を介し、トヨタグループに買い占めた小糸製作所株を買い取るよう求める。当時よく見られた買い占め事件の決着の仕方だった。
しかし、トヨタの奥田英二会長はそれにノーを突きつけたのだという。
そして、後にこう語ったそうだ。「阿倍さんのような将来のある政治家は、あんなのに肩入れしちゃいけない」
安倍晋太郎は、その将来を期待されつつも、ついぞ、総理にはなれなかった。
あの事件で、トヨタの会長の機嫌を損ねたことで、阿倍晋太郎は総理の椅子に座れなかったと著者は言っている。
意識してなかっただけで、もしかして、日本は欧米以上に階級社会なのかも…?

総理になれなかった男の息子は、史上最長の総理になりつつあるが、トヨタは日本というか、世界に君臨し続けている。
まだまだトヨタのご機嫌を伺う時代は続くだろう。



銀行も政治家も何かにつかれたかのように、浮かされ、踊らされたバブル時代。
シニカルにみるならば、まさにヒエロニムス・ボスの阿呆船そのものだ。
Hieronymus Bosch 3 

ルーブルにあるこの絵は、小さな船の上で乱痴気騒ぎを繰り広げる人々を風刺したもの。
飲んで騒ぐ愚者たちは、その船の行く先を誰一人として知らないのだ。
踊る阿呆にみる阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ、損、損、というわけである。

しかし、だからといって、不況時代が何か特別に充実しているわけでなし・・・。
誰かが確実に未来を予想できるわけでもなし・・・。

そんなものに負けない地に足のついた強い経済を!という著者の主張もよくわかるのだが、では、具体的にどうすれば良いのだろう?
方法論や打開策がなければ、どこかの民進党と一緒じゃないか。

好況、不況を繰り返すのが経済の必然ならば、踊る阿呆でも仕方ない気もする。
いや、大多数が見るだけの阿呆なのだから、踊れる分だけ立派じゃないか。

こんなことばっかり思ってしまうのは、疲れているからかな・・・?
まぁ、ちょっと嫌なこともあったばかりなので・・・


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2016/12/21 Wed. 21:35 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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トランプ / ワシントン・ポスト取材班 

先日の明け方の地震に引き続き、降雪の予報にびっくり。
まだ11月なのに・・・(゚д゚)

びっくりの連続だが、最近一番驚いたのは、やはりトランプが次期大統領に選ばれたことかな。

マスコミや識者は皆、「なんだかんだいってもやはりヒラリーだろう」と言っていたし、わたしも全くそれを疑いもしなかった。しかし蓋を開けてみたらトランプ大勝利…

阿倍首相は、そのコミュ力を駆使して、他国に先駆けトランプ氏と会談を行い、「信頼できる指導者だ」と評したが、どうなんだろうか…?
経済は今までのところ、強気一辺倒でダウ最高値を記録したが、日本経済への影響はどうなんだろうか…?
日経株もつられたおかげで、低迷していたメガバンクが上がったのはうれしい誤算だったが(でも、まだまだ・・・)

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ということで、今一番ホットなトランプ本を読んでみた。

本書は、共和党大会でトランプが大統領候補に選ばれた直後に、まずアメリカで発売され、話題になった。
ワシントン・ポストの記者20名からなるチームが、総力をあげて調査し、トランプ氏本人、またはその周囲の人間にインタビューを行って、まとめあげたものだ。様々なエピソードを交えることで、多面的にトランプ氏の人物像に迫っている。
トランプ大統領になると、どうなるのかを解説してくれる本ではなく、自分で考えるための本。
全部で400ページを超えるが、ボリュームは感じさせない。ちょっとした小説より面白いかも。


つい今日も、アンチ・トランプの急先鋒と言われたニューヨーク・タイムズにトランプ本人が訪れ関係修復を図ろうとしているということがニュースになっていたが、ワシントン・ポストもまた、終始アンチトランプの姿勢をとってきた新聞社。(というか、トランプにとっては、全マスコミが敵だったのだが)
トランプ自身は、本書に即座に反応をしめし、「奴らの不正確な記事を混ぜ込んだ退屈な本だ。買うな!」と言ったそうだが、ソースは全て明らかにされている。

不動産王として知られるトランプは、確かに不動産を売って名をあげたが、彼が売りたいと思っていたのは、「ドナルド・トランプ」そのものだったという。しかも彼はそれを売る才能を持ち合わせていた。トランプは、常にどうすれば注目を集められるかに執心し、またマスコミが興味を示すのは、富、セックス、喧嘩であり、それは自分の得意分野だと自覚してもいた。
周知のとおり金持ちの生まれなのに、タクシーの運転手のような喋り方をし、大衆の気持ちを読むことに長けてもいる。
とりわけこだわっていたのは、「素晴らしい成功を収めた経営者」という作り上げられたイメージだ。一方で、自分で宣伝するほど大金持ちではなく、一時期は借金漬けで、金ピカ生活を送っていたくせに、40歳を過ぎても、父親から金を融通してもらっていたりもしたのだ。
金融機関から「殺すより生かしておいたほうが金になるから」という理由で危機を乗り切ってきたのだ。

好人物か否かは別として、これほどキャラが立ち、話題になる人もそういない。彼は、「アプレンティス」というビジネス・リアリティ番組に出演し、人気を博したことをきっかけに窮地を脱する。
この番組は一時期Wowowでも放映されていたのだが、トランプをホストに据え、参加者が与えられた課題を勝ち抜き方式で闘っていくという内容だった。
決めセリフは、「君はクビだ!」で、それを参加者に言い渡すボードルームには、イヴァンカ・トランプや、ドナルド・ジュニアなどのお馴染みの顔が並んだ。

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トランプ当選後、日本の、識者と名乗る人々が口々に「よい大統領になるのではないか」「日本にとってもよかったのではないか」と持ち上げ始めたが、私にはどうも信じられない。
毒気が抜けたら抜けたで、大きな変化を望むトランプの支持層は受け入れるのだろうか?

ビジネスの初期、ニューヨークのホテルプロジェクトの時に、彼のビジネスは窮地に陥る。トランプ自身は尊大で自信満々だったが、その指示は素人くさく、見当違いなものだったという。それでも経験豊かな設計者や下請け業者は異を唱える勇気がなかった。
その結果、全てを仕切る人物が攻撃的で絶大な権力を握っていて、しかも経験不足という救いようのない状況が生まれたのだという。

結局、このプロジェクトでトランプは、莫大な負債を負う。そして、失敗は全て他人のせいにした。
・・・これを米国大統領という職で繰り返されなければいいけど。

また、トランプは、三度結婚しているが、現在のメラニア夫人は、"大人しく従順"なところが気にいられたのだという。
彼の年長の子供たちは、彼女のことを「肖像画」ポートレートと呼ぶという。なぜなら、ほとんどしゃべらないからだそうだ。
トランプの妻たちは皆一様に、一流ではないモデル、女優出身であり、一人として特権階級の女性はいないという点も興味深い。
しかし、、、、次期ファーストレディはポートレートなのか…
これもまた、印象的なエピソードだった。








category: ノンフィクション・新書

thread: 最近読んだ本 - janre: 本・雑誌

2016/11/23 Wed. 20:15 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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